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ソフトバンクは“モンゴル帝国軍”だ

“乱暴狼藉”の非はもちろんあるが、それでも時代は変わる

  • 佐々木 俊尚

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2006年11月1日(水)

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 ソフトバンクモバイルのシステムにトラブルが発生し、ナンバーポータビリティー(MNP)の受付業務が28、29日と連続停止したことで、ソフトバンクが集中砲火を浴びている。「顧客の反応に対する見通しが甘く、準備不足を露呈」「業務態勢の抜本的な見直しを迫られそうだ」「準備不足などで最初の週末という重要な商戦でつまずいた」と、各メディアからはかなり厳しい指弾の声が出ている。

 批判は当然だ。ソフトバンクは、携帯電話というインフラがどのような社会的意味を持っているのかを理解していないように見えるし、ただひたすら人を驚かせ、人目を引くことで消費者を惹きつけようというのは、通信企業としての“品格”に欠けているようにも見える。「ソフトバンクは制度開始直前の大幅値下げで話題を集めたが、自ら仕掛けた策に対応できず、通信企業の信頼性に傷をつけた格好」(産経新聞)というわけだ。

「予想外」だからこそのソフトバンクの存在意義

 しかし、ソフトバンクがこうした無謀な策に出るのは、今に始まったことではない。1990年代から同社をウォッチしてきた私としては「ああ、またか」という印象でもある。

 1981年に設立されたソフトバンクは、当初はパソコンソフトの流通とパソコン雑誌出版という堅実なビジネスを中核にして成長を遂げた。今はもう会社を離れてしまったアスキーの西和彦氏と並んで「新人類起業家」などともてはやされたのもこの時期だ。ところが94年、株式を店頭公開して時価総額が2000億円近くにまで達すると、孫社長は何かに憑かれたように投資ビジネスへとのめり込んでいくことになる。当時は野村證券法人営業部にいた北尾吉孝氏(現ソフトバンク・インベストメント社長)という片腕を得たことも、大きな原動力となった。

 この当時の孫社長は、「時価総額極大化経営」を前面に打ち出した。記者発表会をひんぱんにひらいてはマスコミを驚かせるような発表を行い、新事業のプランをぶちあげることによって株価を高騰させ、その高い株価をバックに資金を調達して企業買収を進めていくという経営手法である。その手法はあまりにも“バブリー”であり、口の悪い人は「発表会経営」と揶揄したりもした。

 たしかに、投資の一部は成功した。たとえば設立間もなかった米ヤフーに対しては100億円という巨額の出資を行い、この100億円の株は後のネットバブル最高潮時には3兆円にまで膨れ上がったほどだった。だがこれはかなりの例外で、米出版社のジフ・デービスやパソコン向けメモリー大手のキングストン・テクノロジーなど、大風呂敷を広げて買収したわりには、ろくに利益も出さないまま手放してしまった企業は少なくない。

国策さえも利用するしたたかさ

 おまけに2000年、孫社長のフォロワーだった重田康光氏率いる光通信が粉飾決算で株価を暴落させると、これを引き金にしてネットバブルが崩壊し、あっという間に孫社長の投資ビジネスは崩壊してしまう。株価は暴落し、2000年初頭には5兆円に達していたソフトバンクの保有株含み益は同年秋、4000億円にまで目減りする。時価総額もピーク時の21兆7000億円から、5000億円にまで下落した。出資先のネット企業も大半が低迷に陥り、そして2002年3月期の決算で、ソフトバンクはついに上場以来初めての赤字転落の憂き目に遭うのである。おまけに2000億円以上の社債の償還を行わなければならなくなり、ソフトバンクは倒産一歩手前にまで追い詰められた。

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中村 克己 元ルノー副社長、前カルソニックカンセイ会長