「ソフトバンクの発表があまりにもいい加減だから、正式な数字を発表することにした」。KDDI担当者は語気を荒げてまくし立てた。「2年もかけて準備してきた番号ポータビリティー制度を台無しにしてくれた」。
10月30日、KDDIは番号ポータビリティー(継続)制度の加入者数を公表した。同社によれば、約8万の契約純増があった。
携帯電話会社を移行しても番号を引き継げる番号継続制度が10月24日に始まった。制度開始からわずか6日間しか経っていないにもかかわらず、KDDIがあえて契約状況を公表したのは、冒頭の担当者が怒りの矛先を向けた、ソフトバンク(9984)にある。
ソフトバンクが、28~29日の連日にかけて起こしたシステム障害によって、ソフトバンクからの転入・転出作業が一時的にストップ。KDDIにとっては、大きなビジネスチャンスを逃すことになった。さらに、KDDI担当者を激怒させたのが、ソフトバンクの対応だった。ソフトバンクの販売代理店の一部では、システムトラブルを「NTTドコモ(9437)とKDDIの責任」と告知していたこともあり、KDDIの堪忍袋の緒が切れた。
番号継続制度を機に、大攻勢をかけようとしていたKDDIにとっては、不運が重なった格好。だが、こうしたソフトバンクの予測不能な行動こそが、KDDIの携帯電話事業にとって、今後の大きなリスクになるとも言える。実際、ソフトバンクが23日に新料金体系を発表した翌日、KDDIの株価は78万4000円から72万8000円まで値を下げた。
足元の業績は堅調
番号継続制度に向け、KDDIは万全の体制を整えてきた。制度開始の2カ月前から新機種を発表。「新機種も潤沢に代理店に供給されており、店内の販促グッズなどの準備もぬかりなく用意できた。接客マニュアルなども充実しており、余裕を持って顧客に対応できた」とある大手販売代理店幹部も感心する。
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