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残業代11.6兆円が消失する?!

国民的議論にならないまま着々と進む労働法制の大改革

  • 西岡 隆彦

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2006年12月1日(金)

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 「ホワイトカラー・エグゼンプション」という言葉をご存じだろうか。

 日本語では「自律的労働時間制度」と呼ばれるもので、今後の日本人の働き方を大きく左右するような新しい労働法制である。元々は米国で生まれた。

 エグゼンプションとは“免除”という意味で、労働基準法で定められている1日8時間、週40時間の労働時間規制を適用しないということ。いつ、どのように働くかという自由度が高まり、働いた時間ではなく仕事の成果によって賃金を決められるというのが賛成派である財界の主張だ。労働組合側は、労働強化と実質的な賃下げにつながるとして反対の立場。両者は導入の是非を巡り激しい議論の真っ最中にある。

重要な問題なのに大きなニュースにならない不思議

 しかし、そんな重大な議論が行われていることが、不思議なことに、さほど大きなニュースとして報じられていないのである。

 ホワイトカラー・エグゼンプションを巡る議論は、来年の通常国会への法案提出を念頭に、厚生労働省の労働政策審議会(厚労相の諮問機関)の労働条件分科会で、労働組合、使用者(経営側)、公益委員(学者)の3者を交えて、議論が重ねられている。

 議論が始まった当初は、「製造業の労働者は対象にしない」「年収要件は1000万円以上の管理職層」という条件付きだったが、審議会が開かれるごとに素案における適用基準は緩く、曖昧になっている。直近の11月28日の会合では、製造関係の労働者を外すとした文面はなくなり、年収要件は「400万円以上」にまで緩和すべきだという意見まで出た。

 この制度が適用されると、働く者にとってはどうなるのか。一面的ではあるけれども最も分かりやすいのは、「残業」という概念がなくなり、「残業代」も支払われなくなるということである。

 この制度の導入に反対の立場を取る労働運動総合研究所の試算によると、ホワイトカラー・エグゼンプションを年収400万円以上の労働者に適用すると、総額11兆6000億円、ホワイトカラー労働者1人当たり年114万円もの残業代が消え失せてしまうのだという。さらに、適用対象の労働者は、自分で労働時間を管理しなければいけないため、仮に、働き過ぎで過労死をしても会社に使用者責任を問うことはできなくなる。

思惑が交錯した末に“悪魔の取引”

 働く者からすれば「無謀」とも言えるこの制度が、法制化に向けて議論されている背景には、総人件費の一段の圧縮を図りたい財界の強い要望があった。財界は、「新商品やソフトウエア開発者、アナリストなど、従来の労働時間に縛られず自由で自律的な働き方をする人材を育てるために必要な制度だ」と主張するが、これは建前に過ぎない。アジア勢の台頭で日本のモノ作りの優位性が揺らいでいるうえ、株主重視の経営で利益を極大化するために人件費をギリギリまで切り詰めたいというのが本音だろう。

 不甲斐ないのは、厚労省と労働法学者である。本来なら、こうした労働時間規制の撤廃要求は全力で阻止するはずだ。「企業はこんなにひどい制度を導入しようとしている」とマスコミにリークして、世論の力を借りて粉砕してしまうのが常套手段である。

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