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おむつを換える男たちが世界を変える

2006年12月26日(火)

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 いじめ問題や少子化で、子供の教育や育児のあり方にあらためて関心が集まっている。父親の育児参加が進んでいる米国では、仕事を辞めて専業主夫になり、家事や育児に専念する人たちも増えている。専業主夫たちが集まった「At-home Dads Convention(専業主夫の会議)」が米ミズーリ州・カンザス・シティーで開かれた。彼らの言葉の中に、日本の父親たちが子育てを考えるきっかけがあるかもしれない。

初対面同士のお父さんたちも子供の写真を見せ合ったりしてすぐにうち解けていた。

初対面同士のお父さんたちも子供の写真を見せ合ったりしてすぐにうち解けていた。

 11月11日、全米各地、カナダから約100人の専業主夫が集まった。会議は今年で11回目を迎える。参加者に共通するのは平均年齢3.5歳の小さな子供を持っていること。また、妻が専門職や管理職に就いている「中の上」階層であることだ。

 会議の目的は主夫たちの情報交換と交流。専用ウェブサイト、書籍や地元の専業主夫をネットワークする方法を教え合ったり、参加者が抱えている悩みを話し合う20のセッションが開かれた。
 
 参加者の3分の1にあたる約20人に話を聞き、専業主夫になった理由を尋ねてみたところ、3つの理由が浮かんできた。

【1】 育児を自分でやりたい

 イリノイ州・シカゴに住むブライアン・チャルマーズさんは2児の父親。「認可託児所の中には設備のよくない個人宅もある。その一方で、質の良い保育園は高額で、自分の給与が全て保育料に消えてしまう。僕自身が子育てをすれば、最大限の手間と愛情をかけることができる」と話す。

 ブライアンさんは妻と相談して“赤ちゃん言葉”を使わないと決めた。生後3週間目から大人と同じ言葉で話しかけ、小さな時から「ありがとう」を言う時はきちんと相手の目を見るようにとしつけてきた。そのおかげで子供たちの言語能力がよく発達していると言う。

 オハイオ州から来た男性は「結婚する時から『子供が産まれたらどちらかが仕事を辞めて育児に専念する』と決めていた」という。ミシガン州在住の男性は「保育所やベビーシッターは信用していない」と言い切る。どうやら、子供を他人に預けることに抵抗感を示す人が多いようだ。

女性の収入アップで、男性の選択肢が増えた

【2】 経済的な理由A:高学歴高収入の妻

 日本でも「小さな子供を他人に預けるべきでない」と言う人はいる。だが、妻が仕事を辞めることが前提になっている。夫の方が高収入であることが多いためだ。一方、米国の専業主夫が家事や育児に専念する最大の理由は「妻の方が収入が多いから」(主催者のアンディ・ファーガソンさん)だと言う。ファーガソンさんの妻も高収入。前出のオハイオ州の男性も夫婦そろって弁護士。妻は昇進をかさねいつしか自分より収入が多くなり、一家を支えられるようになったため専業主夫となった。

 参加者の妻は、総じて高学歴・高収入で、博士号やMBAを持っていたり、大企業の研究者、弁護士、医師などが多い。米国女性の社会・経済的地位の高さゆえに実現する形態といえそうだ。

 専業主夫に関するサイト「Rebel Dad」が国勢調査をもとに実施した推計によると、2004年には全米の専業主夫の数は14万7000人に上る。5年前の9万3000人に比べて1.5倍に増えた。世帯年収が10万ドル(約1200万円)以上の家庭は17%。64%は4万ドル(約480万円)以下。この会議の参加者は専業主夫の中でも経済的に恵まれた層だった。

【3】 経済的な理由B:夫が失業

「クレジットカードの賢い使い方」を指南するセッション。家計管理を担当することも多い彼らは「妻はどの銀行を使っているかすら知らない。僕が交通事故で突然死したらすごく困るよ」と笑っていた。

「クレジットカードの賢い使い方」を指南するセッション。家計管理を担当することも多い彼らは「妻はどの銀行を使っているかすら知らない。僕が交通事故で突然死したらすごく困るよ」と笑っていた。

 参加者は高学歴の元ホワイトカラーが多いが、そうした男性もリストラ対象になる。カリフォルニア州から来た男性は有名大学の工学部を卒業しシリコンバレーのIT企業に勤務していた。「ある日、突然、上司が箱を持って目の前に立って『これに荷物をまとめてくれ』と言われ解雇された」と言う。

 ミズーリ州の男性は元エネルギー業界勤務。エンロン事件の影響で勤め先は事業を縮小、退職者を募集していた折に妻の妊娠を知り、会社を辞めて育児を担うことにした。会議前日の夕食会やセッションの合間には、こうしたリストラ体験を聞かせてくれる人もいた。

 『Mother Shock』などの著書があるノンフィクション・ライターのアンディ・ブキャナンさんは「米国でStay-at-home Dadが増えたのは最近5年。理由はドットコムバブルの崩壊だ」と見る。

 「高い報酬や成功を求めて必死に働いてきた人がバブルがはじけてレイオフされ『こんな企業社会に身も心も捧げるのは嫌だ』と考えて、家族を優先するようになった」

 米国企業社会の動向が個人の働き方や価値観に与える影響が垣間見えた。

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「おむつを換える男たちが世界を変える」の著者

治部 れんげ

治部 れんげ(じぶ・れんげ)

経済ジャーナリスト

経済ジャーナリスト。昭和女子大学現代ビジネス研究所研究員。1997年一橋大学法学部卒業後、日経BP社で16年間、経済誌記者。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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中村 克己 元ルノー副社長、前カルソニックカンセイ会長