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イラク撤退、ベトナムより傷深く

2007年、米国の衰退、ロシアと中国の勃興

  • ジョン・グレイ

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2007年1月16日(火)

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【特別寄稿】
ジョン・グレイ[ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)教授]

 2007年の世界情勢はどうなるのか。確実に言えるのは、イラク戦争以降続いてきた趨勢がこのまま続くということである。

 つまり、米国のさらなる国際的な威信低下は避けられない。対外経済不均衡の拡大、国際指導力の低下により弱体化するドルはその象徴だ。他方、世界を見渡せば、ロシアのエネルギー超大国としての存在感が増す。強権的なプーチン政権への西側からの不信の目が強まるとしても、その傾向は続く。

 中国の存在感も増大を続けるだろう。表面上は平和的な国際環境での国力増強という基本政策を続けるのは間違いないが、それは一方で、軍事力を増強しながらである。

 こうした状況を前提にして世界情勢を鳥瞰すると、2つの大きなトレンドに気づく。

 1つは独裁的な強権政権の伸長である。恐らく1930年代以後では初めて、世界の中で強権的な政治勢力が力を強める時期が始まろうとしている。もう1つはエネルギー問題の深刻化だ。これまで保たれてきた供給側と消費側の均衡が崩れ、力は生産者寄りにシフトしていくだろう。

 具体論に移ろう。まず最初に検討しなければならないのはもちろん、イラク問題である。

 結論から言えば、米ブッシュ政権が大失敗と言ってよいイラク戦争から手を引くのは、非常に困難な情勢だ。

 ジェームズ・ベーカー元国務長官らの「イラク研究グループ」がイラク問題からの「出口」を探る報告書をまとめて以降、ワシントンではイラクの“ベトナム化”が声高に論じられている。だが実を言えば、2つの戦争の間には共通点は少ない。

 ベトナム戦争の場合、米国が撤退できたのは、ベトナムが世界経済の中で極めて小さな存在だったからだ。それゆえ米国は手を引いてもそれ以降はあまり大きな負担を背負わずに済んだ。それに対してイラクは、石油産出国ゆえにグローバル経済の極めて重要な役割を果たしている。その分撤退に伴って米国が背負う負担、言葉を換えれば負の遺産は比べものにならない。

 もう1つ決定的な違いがある。ベトナムでは米国が撤退しても統治能力を持つ共産主義政権が北ベトナムにあった。しかしイラクにはないのである。

 現地の米軍が撤退すればイラクは確実に分裂し、周辺諸国の代理戦争の場になる可能性が高い。

 ベーカー報告書が提言したように、米国が周辺国との関係改善に前向きに取り組めばある程度、情勢の悪化は食い止められるかもしれない。

 しかしブッシュ大統領は、提言されたような、イランやシリアとの関係改善には納得しないだろう。中間選挙で敗北したにもかかわらず、イランの核開発を武力で食い止めようとする可能性さえある。そうなったら、中東一帯では今までなかった大混乱が起こりかねない。イランが石油の輸送を封鎖し、イラクの内戦は激化し、中東のシーア派の信者はますます急進的になる。

中東混乱はロシアの利

 ここでロシアの存在が一層クローズアップされる。ペルシャ湾での紛争拡大は、世界のエネルギー超大国としてのロシアの立場をますます強める方向に作用する。

 この数年間でプーチン政権は、ロシアを欧米の力に隷属する半崩壊状態の国から、自らの政策目標と行動に欧米の介入を排除できる国へと変えた。

 その力の源泉はもちろん、石油と天然ガスをはじめとする資源である。欧州はその天然ガス需要のうち二十数%をロシアに依存している。一方で中国もそのエネルギーに触手を伸ばしているため、結果として欧州に対するロシアの優位は揺るがない。世界的なエネルギー争奪戦のおかげでロシアは、民主主義、法治主義、企業活動の透明性といった欧米からの要求を聞かずに済んでいるわけだ。

 さらにロシアは彼らにとっての負の遺産、外資系企業によるロシア国内の資源の保有という状況を清算しようとしている。つまり、そうした企業の実質的な国有化である。それは一見、旧ソ連モデルのようではあるが、間違いなく旧ソ連モデルよりも効率的な「新計画経済体制」である。

 その意味で2007年は、ソ連崩壊後のロシアを欧米流の自由主義経済の原則の下に作り直せるという欧米の幻想に終止符が打たれる年になるだろう。

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