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「0円でも売れない」

携帯電話の番号継続制度、“宴の後”に在庫の山

2007年1月22日(月)

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各社とも春商戦に向け気合いが入るが…(新商品を発表したKDDIの小野寺正社長)(写真:松谷 祐増)
各社とも春商戦に向け気合いが入るが…(新商品を発表したKDDIの小野寺正社長) (写真:松谷 祐増)

 携帯電話市場は早くも春商戦に向けた機運が高まってきた。1月16日、加入者争いでしのぎを削るNTTドコモ(9437)とKDDI(9433)は揃って新商品を発表。2006年、過去最多の機種を投入した両社は、今年もそれに並ぶペースで投入することを明らかにした。追うソフトバンクモバイルも孫正義社長が米アップルの「iPhone」発表会場に姿を見せ、話題を振りまいた。1年で最大の売り時である春商戦に向け、各社とも準備にぬかりないように見える。


新機種はあくまでも“見せ玉”

 ところが、一見華やかな舞台も一皮めくると全く違った景色が見えてくる。春商戦での顧客の目当ては、これらの新機種ではないのだ。

 顧客の多くは、新機種の登場によって安くなった旧機種を手に取る。「カメラ付きか」「カラー液晶付きか」といった、新旧の機種の違いが一目瞭然だった数年前に比べ、最近の携帯電話は機能に大差はない。「それなら少し古くても安い機種を選ぶ」のが、多くの顧客の買い物スタイルなのである。

 つまり、結果的に新機種は旧機種の購入を促進させる“見せ玉”に過ぎなくなっているわけだ。

 自動車や家電製品など通常の商売なら、最新機種こそが目玉商品であり、利幅の大きいそれらを最優先して売るのが常識。ところが、今の携帯電話の世界では、その常識が通じない。「新機種の投入によって旧機種の値段が下がり、売れ行きがよくなる」といった不思議な説明を、携帯電話会社の販売担当者は平然と口にする。

 なぜこのような常識が通用するのか。秘密は、携帯電話会社のビジネスモデルの根幹を成す「販売奨励金」という仕組みにある。

 携帯電話会社が代理店に支払う販売奨励金は本来、高価な携帯電話機を顧客が購入しやすくするための手段だった。1台当たり5万円以上する携帯電話に3万円程度の支援金を出し、後日通信料金で回収する。元手がない人でも簡単に携帯電話を所有できる仕組みが当たり、利用者は急増した。

 だが、今や国民の4人に3人が所有するまでになり、市場はほぼ成熟した。販売奨励金の本来の意義は薄れ、代理店へのカンフル剤の意味合いが強まっている。

 こうなると、新機種が発表されることで在庫になった旧機種を安値で売りさばく方が販売店にとっては楽。「今売れなくても次に新商品が発表された時に取り返す」といった安易な考えが、いつしか染みついていった。

 だが、そんな先送りは加入者が右肩上がりに増えていくことが前提の下でこそ許される。市場が飽和してくれば、いくら型落ちして安くなった機種でも売れ行きは鈍化し、最後は「0円」で店頭に並びホコリをかぶる。

 そして皮肉なことに、各社が最大の勝負どころとして力を入れた、2006年10月に始まった番号ポータビリティー(継続)制度が、これまでの“ビジネスモデル”の限界を露呈させた。在庫が一気に積み上がったのだ。

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「「0円でも売れない」」の著者

蛯谷敏

蛯谷敏(えびたに・さとし)

日経ビジネス記者

日経コミュニケーション編集を経て、2006年から日経ビジネス記者。2012年9月から2014年3月まで日経ビジネスDigital編集長。2014年4月よりロンドン支局長。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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