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2007年を斬る: それでもシステムは止まる!

情報インフラの“パンク年”に再考したい「情報責任」の大切さ

  • 谷島 宣之

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2007年1月23日(火)

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 昨年、本コラムで、「ソフトバンク、“パンク”の深層」という記事を書いた。テーマは番号ポータビリティー開始早々にソフトバンクモバイルが情報システム障害を起こした一件である。

 「同様の問題はソフトバンク(9984)だけでなく、ほかの多くの企業にも内在している。情報システムの構築・運用の現場は限界的な状況にあり、それを理解してほしい」というのが趣旨だったが、「問題を起こしたソフトバンクを擁護するとは何事か!」というお叱りのコメントを多くの読者から頂戴した。

 筆者の書き方に問題があったのかもしれない。しかし、情報システムは今や、企業内だけでなく、広く金融、流通、交通をはじめとする社会の基盤的インフラになっているのに、その現場は危機的な状況にあることは年が明けても全く変わっていない。いよいよ2007年こそ、情報システムの大規模なトラブルが続発することになる可能性が高いのである。

「情報システムは動いて当たり前」の非常識

 前出の記事の副題は「企業体質で片付けるのは安直、ドコモ(9437)やKDDI(9433)にもある障害リスク」だった。ソフトバンクモバイルは1月21日に再び情報システムの障害を起こしたが、ライバルのau(KDDI)も昨年12月17日にシステム障害のために番号ポータビリティーの受付業務を一時停止した。

 「情報システム構築・運用の現場は危機的な状況にあり、システムがいつ止まってもおかしくない」──。誰が何と言おうとも、そのことを筆者は言い続けなければならないと思っている。情報システムは「動くのが当たり前、専門家が動くように作るのが当たり前」という常識は、残念ながら通じなくなっている。

 そのことを象徴するような出来事が起こった。コンピューター産業の雄、米IBMが最大手の座から転落したのである。1月18日に同社が発表した2006年度決算によると2006年1~12月の売上高は914億ドル。それに対してライバルの米ヒューレット・パッカード(HP)の2006年度(2005年11月~2006年10月)の売上高は917億ドルと、HPがIBMを僅差で破り首位の座を奪い取ったのである。

 IBMの首位転落は、この業界に長く関わった人にとっては歴史的な事件である。少なくとも筆者はそう受け止めた。抗うことのできない時代の流れというものがある。時代の節目に立った時のある種の郷愁のような感覚さえあるのだが、それとは裏腹にマスメディアや世間ではこの件はほとんど話題になっていない。

 首位交代劇が象徴しているのは、「情報システムの構築・運営においてお手本となる圧倒的なリーダーがいない」ということだ。IBMの後を引き継いで情報システムの流れを作っていくような強力なリーダーは今のところ現れていない。“Web2.0”という言葉が流行し、2007年はWeb2.0が企業の情報システムに積極的に取り込まれることになると言われているが、そもそも10人いれば10通りの定義ができるような曖昧な概念である。かつてのIBMのように、「こうやれば大丈夫」と太鼓判を押したような代物ではない。

 世界的なベストセラー機「システム/360」を発表した1964年からざっと20年の間、IBMは企業情報システムの盟主であり、教師でもあった。IBMが大型コンピューターの新機種を発表する時期に合わせて、一般の企業は導入計画を立てた。企業のコンピューター担当者はIBMが開設した研修施設に通いつめ、IBM製コンピューターを使いこなすための教育を受けた。IBM製の大型コンピューターを設置した部屋は「電算室」とか「計算機ルーム」ではなく「IBM室」と呼ばれたりした。

 今となってはなんとも奇妙な時代ではあったが、情報システムを構築する企業や官庁にとってはありがたい時代だったとも言える。ユーザー側はIBMの言う通りにやっていればよかったし、そうするしかなかった。システムの不良は言ってみればIBM製品の不良だったし、システムの限界はIBM製品の限界だった。「IBMに頼んで失敗したら仕方がない」といったことが公言された時代でもあった。

盟主IBMの首位転落が話題にもならない“過信”と“無関心”の弊害

 しかし、情報システムの潮流はマルチベンダー(複数のメーカー製品を組み合わせること)やオープン化(特定メーカーの特殊仕様ではなく標準的仕様を採用すること)に向かった。特定メーカーに依存することの弊害が目立ってきたからである。その代わり、ユーザー企業の経営者がしっかりと情報システムの方針を打ち出さないといけない。このように筆者自身は繰り返し訴えてきた。こうした潮流を思い起こせば、IBMの首位転落は今さら大騒ぎすることではない。

 本当の問題は、このニュースが大した話題にならないことである。社会インフラとしての情報システムに対する社会の関心が薄くなっていることを示しているのではないか。裏返せば、情報システムには何でもできるし、正しく動いて当たり前だという期待感と過信が現場の実態を超えて膨張し続けているのではないか。そうした“空気”について、情報システムを専門とする一記者として危機感を抱いている。

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