電線や光ファイバーなど成長市場の製品を抱える住友電気工業。2006年度上期の連結決算は、売上高が前年同期比20.2%増、営業利益は同10%増と増収増益だったが、通期の見通しは慎重だ。
2007年3月期の見通しは、売上高は2兆3000億円と期初見通しより2000億円増やしたが、経常利益、純利益は据え置いた。その理由は、営業利益の5割を稼ぎ出す自動車関連部門が踊り場を迎えているからだ。同部門の2006年上期の営業利益は前年同期比25.9%減と、同社の事業の中で唯一のマイナス成長だった。
原材料高騰で主力のワイヤーハーネス事業の収益性悪化
自動車関連部門の低迷は、部門売上の7割を占めるワイヤーハーネスの不振。ワイヤーハーネスは自動車内の電線や通信回路を束ねたもので、同社は世界市場で矢崎総業、米デルファイ・コーポレーションに次ぐ3位のシェアを握る。上期の販売は、日系自動車メーカー各社の増産を受けて好調だったが、原材料の銅が昨年の春頃に「期初想定の2倍近く高騰した」(住友電工の松本正義社長)ため、収益性が大幅に低下した。
ワイヤーハーネスの業界では、過去数カ月間の銅の価格をベースに製品価格を決めることが慣例となっている。このため、銅価格の上昇分をワイヤーハーネスの価格に転嫁するのが遅れたのだという。
ただし、同社が中間期で据え置いた通期の利益予想は「上ぶれする」という声が主流だ。「現在の同社のワイヤーハーネスの価格には、高騰時期の銅価格の上昇分が転嫁されているので、上期のマイナス分は十分補える」(証券アナリスト)と見ているからだ。この期待感から、昨年夏に1400円台まで下げた同社の株価も1月23日の時点で1876円まで回復した。
突破できない株価2000円の“壁”
ただそれでも、4期連続の増益が続く見込みの同社にしては、現在の株価は物足りない。2000年に越えた株価2000円の“壁”を突破できず、1800~1900円台でもみ合っている。連結予想PER(株価収益率)も約23倍と、東証1部上場企業で同社が属する「非鉄金属」の業種では平均値並みである。
ワイヤーハーネスのようなコモディティ商品で世界で戦うのは、戦略的に参考になります。矢崎総業のグローバル展開の早期対応は恐らくより優れていたものだと思います。住電さんはブレーキ面でも世界の最先端グループにいるわけだし、これからも成長の絵が描けるメーカーだと認識してます。(2007/02/04)