「時事深層」

「やめられない事情もある」

大手ゼネコン談合のキーマンが激白

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2007年2月5日(月)

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 名古屋市発注の地下鉄工事を巡る談合事件で、公正取引委員会は名古屋地検特捜部と連携し、大林組、鹿島、清水建設への強制調査に着手した。2006年1月から独占禁止法の罰則が強化されるのを機に、大手ゼネコンは「談合決別宣言」をした。決別宣言はポーズだったのか。独禁法違反容疑でゼネコンが初めて刑事告発される事態になれば、過去の談合事件とは比較にならない激震が襲う。

 「写真はあかん。まともな商売やないから。名前が挙がれば子供とか隣近所とか面倒だ。分かるやろ、それくらい」。大手ゼネコン首脳には口にできない決別宣言後の談合事情。なぜ談合が続いたのか、大手ゼネコンで“談合仕切り屋”として名を馳せたキーマンが本誌に語った。

 最近じゃ月水金の週3日しか出勤しない。社長から直々に言われたんや。「仕事はせんでくれ」って。

 じゃあ、どうして名古屋の地下鉄工事にまつわる談合は続いたのか。あれは2005年12月に、向こう1年分の仕事を割り振ってあったんやないか。よう知らんけど。柴田政宏(名古屋市の地下鉄工事で談合の仕切り役を務めたとされる大林組名古屋支店元顧問)が主体になって。

 それから少しして社長命令が下って(談合を)やめろとなった。大手ゼネコンによる「談合決別宣言」と言われるものだ。

 柴田にも責任はあると思う。談合をやめるよう仕切らんかったんやから。ただ、急にやめられない時もある。もう割り振っちゃったわけだ。だからマスコミで決別宣言後もまだやっているとか言うのは、それはちょっと違うと思うけど。

 我々は談合をする時、「やり取り」をするわけ。とりわけ土木の場合は、(計画から完成までの)時間が長い。例えばダムに絡む受注では3〜4年先、時には10年先までの「やり取り」をする。つまり、この案件を譲る代わりに10年先の案件は頂こう、とか。

 名古屋では2006年2月、6月にも談合をやったと聞く。決別宣言後やけど「柴田さんが割り振ったんだから2月の分はウチがもらうよ」となり、6月に番が来た会社に対してやっぱりあかんとは柴田も言えなかったんやろう。「取り逃げ」が起こるからね。先に仕事を取った会社はいいけど次の番を待ってた会社は文句を言う。(仕切り役は)難しい立場に立たされがちや。

「地位と給料は保証するから」

 男は、名古屋市の土木工事には特別な事情があったと言う。彼の名刺には大手ゼネコン顧問の肩書があり取材場所は社屋の一室。大阪地区で建築工事を取り仕切ってきた。名古屋と違い大阪で談合は絶滅したと訴える。

 俺は柴田とは違う。決別宣言後は、きっぱりやめる指示を出した。2005年の年末のことやった。全社員に通達が来た。会社は決別宣言をしたから、(談合を)やめろとの内容だ。俺を含め部長以上が誓約書を書いた。

 年明け、つまり2006年の1月に入ると社長から直々に念押しされたよ。「今までの地位と給料は保証する。だからもう仕事はしてくれるな。遊んでいてくれ」って。

 「あと3カ月くらいやらせてもらわな、今までの経緯もあるし格好つかんですよ」と反論もした。それでもやめてくれと。そこまで言われたら…。何もこっちだって好きこのんでやってるわけやない。違法行為だからね。肩身は狭いさ。ヒヤヒヤしながらやってきたんだ。

 社長に会った数日後の1月7日。同業者が集まる新年互礼会があった。そこで俺はきっぱりと言った。「今までの約束も一切ご破算や、悪いけど。そうさせてもらうよ」と。ほかの大手は欠席だった。だから俺が代表する形で大手5社は(談合から)抜けると挨拶をしたわけだ。それから、「あとは、あんたたち残りの人たちが(談合をどうするか)決めたらいい」と伝えた。

 陰でブツブツ文句を言ってるやつがいるのは耳にした。何で大阪だけそんなに厳しくするんやとか、社長に言われるがままなのか、とか。でも挨拶後に会食の場があったけど、直接文句を言いに来るのは誰もおらんかった。俺が決めれば大阪はそうなる。一糸乱れぬよう仕切ってきたんやから。

 あくまでも結果としての話だが、2006年2月頃までの案件については、他社の案件を無理やりに取りに行く行動を控えた。4月頃からはよそさんのものを取る動きがワーッと始まったがね。

 名古屋の柴田も、経営トップと話をしたはずなんやけど。それでもなぜ突っ込んだのか。具体的にどんな事情があったかは分からん。

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著者プロフィール

熊野 信一郎(くまの・しんいちろう)

日経ビジネス香港支局特派員。日経BP社入社後、日経ビジネス編集部に所属。製造業や流通業を担当後、2007年に香港支局に異動。現在は主に中国や東南アジアの経済や企業の動き、並びに各地の料理やアルコール類の評価、さらに広島東洋カープの戦力・試合分析などを担当する。



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日経ビジネス “ここさえ読めば毎週のニュースの本質がわかる”―ニュース連動の解説記事。日経ビジネス編集部が、景気、業界再編の動きから最新マーケティング動向やヒット商品まで幅広くウォッチ。

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