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“労働ビッグバン”が狙う真の標的

「改革は大半の労働者に利益」と経済財政諮問会議の八代尚宏氏

  • 水野 博泰

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2007年2月6日(火)

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労働法制の改革は誰のためにあり、誰の利益となるのか──。経済財政諮問会議民間議員として“労働ビッグバン”を推進する八代尚宏・国際基督教大学教授は、大多数の労働者にとっての利益を最大化するものであると主張。大企業やその労働者、労働組合といった“既得権者”を守ることが目的ではないと断言する。その真意を聞いた。(聞き手は、日経ビジネス オンライン副編集長=水野 博泰)

八代尚宏氏

“労働ビッグバン”を語る八代尚宏氏

NBO 今回の労働法制の改革では、“残業代ゼロ法案”と呼ばれるホワイトカラー・エグゼンプションが論争の的になっていますが、これは全体の一部に過ぎないのであって、改革の全体像については多くの人にうまく伝わっていませんね?

八代 残念ながら、全く伝わっていないですね。

 かつての金融法制は、銀行法、信託法、証券法といった業法がばらばらに規制をかけていて、全体としての整合性が取れていなかった。それを根本的に見直して金融市場の共通ルールを作り直したのが“金融ビッグバン”でした。

 労働市場も同じなんです。現在の労働法制は、労働基準法は主に企業の正社員、“パート法”はパート労働者、“派遣法”は派遣労働者というように縦割り、継ぎはぎだらけです。しかも、請負については「労働者とは位置づけられない」という教条主義があって法体系から全く抜け落ちていたりする。全体を見渡して労働者保護の観点から働き方の新しい「共通ルール」を作ろうというのが労働ビッグバンなのです。

 もちろん、法律で働き方のすべてを細かく規定するようなことはすべきではありませんし、そんなことはできません。これだけはきちんと守らなければいけないという最低基準を決めたうえで、多様な働き方が可能になるような新しいルールを作ろうというのが基本的な考え方です。

高度経済成長を前提とした法制度が生み出す歪み

 なぜ今なのかと言えば、経済と社会の環境が大きく変わっているからです。戦後にできた労働法制は、主として高度成長期における終身雇用・年功賃金などの慣行を対象にしたもので、暗黙の内に専業主婦の妻がいる正社員の雇用を「良い働き方」として守るということが基本で、それ以外の人はあまり想定していません。ところが、そういう状況は劇的に変わりました。夫が働き、妻が家を守るというのは減ってきて、サラリーマンと自営業者を合わせれば夫婦共働きの方が過半数です。そうした労働市場の変化に法制度の方が全く追いついていないために、いろいろな問題が起こっているのです。

NBO 規制緩和、改革の結果として格差が広がったという声がありますが?

八代 それは全くの誤りです。盛んに言われている格差や貧困の多くは長期経済停滞の影響から生じているものであって、規制緩和をしたからではありません。あえて言うなら、こっちは緩めて、あっちは手つかずのまま放置するというような、ちぐはぐな対応を繰り返してきたことによって歪みを生み出した面はあるかもしれません。労働市場全体を見渡した整合性の取れた施策が必要なのであって、こんなところで改革を止めてはいけません。

 おっしゃる通り、今回の労働法制改革の中でホワイトカラー・エグゼンプションは、そのごく一部です。労働基準法の一部を改正する法案(要綱)には、残業代割増率の“引き上げ”も盛り込まれています。

NBO 一方で残業代をなくし、一方では残業代を増やすというのは、一貫性に欠けているようにも見えますが?

ブルーカラーは残業代、ホワイトカラーは“自由度”をアップ

八代 ホワイトカラー・エグゼンプションと残業代割増率の引き上げは、全く矛盾していません。これは想定している労働者が全く違うからです。

 今の労働基準法は、昔の“工場法”を継承した法体系で、いわゆるブルーカラーの人たちを暗に想定しているのです。流れ作業の工場では、労働者が1時間働けば1時間分の製品を確実に生み出すことができ、労働時間に応じて仕事の成果が決まってくる。賃金を時間当たりで支払うこと、残業すれば残業代を割り増しで支払うことは理にかなっているわけです。

 また、ホワイトカラーの中でも上司から指示を受けてその通りに仕事をこなしていくタイプの人たちも時間と成果の結びつきが強い。決められた時間を働いて給料をもらうのが基本で、残業したり深夜・休日に働けば割増がある。日本の割増率は国際的に見ると低かったので、これは引き上げた方がいいということになったのです。

 ただし、すべてのホワイトカラーについて、一律に残業代の割増率を上げると不都合が起こってくる。自分で考えることが仕事の人たちです。深夜まで働くこともあるし、休日に出勤することもある。一定の成果を出すまでは一気に働き、終わったら休みを取る。管理職手当のように、残業手当に相当するものはあらかじめ一括してもらって、固定的な勤務時間に縛られずに自分の判断で働く。例えば大学教師やマスコミの人の大部分は、現にそういう働き方なのではないでしょうか。

 しかし、そういう働き方に対して、時間に応じた残業代を支払っていなかったとしたら完全な労基法違反です。摘発されたら言い逃れができません。

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