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安倍成長戦略の誤謬

「下村治・都留重人論争」を持ち出す認識不足と時代錯誤

  • 水木 楊

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2007年2月19日(月)

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 安倍晋三首相は一体誰から経済政策の指南を受けているのだろうか。

 2月13日の衆議院予算委員会で、「格差問題」を民主党の菅直人氏と議論した際、「成長こそが格差を是正する決め手」であるとして、1960年代初頭に繰り広げられた「高度成長論議」を持ち出した。

 いわく、「1960年代初頭にも成長か、格差是正かという議論があった。成長することで、その果実を広めていく政策が正しかったことが証明されている」(日本経済新聞より)というのだが、これは当時の論争を自分に都合の良いように曲解している。というよりも、とんでもない勉強不足と言っていいだろう。こんなお粗末な認識で、経済政策を展開されては、たまらない。

果実乏しき時代の論争に倣う愚

 首相の言うように、当時、池田勇人首相の経済指南役で、「所得倍増計画」の立案者であった下村治氏(大蔵省を経て日本開発銀行理事などを歴任したエコノミスト)と、経済学界の大御所である都留重人氏(一橋大学経済研究所所長、一橋大学学長などを歴任、2006年2月5日死去)との間で、「高度成長の是非」を巡り激烈な議論があったことは事実である。だが、それは「より高い成長率か、それともより低い成長率か」を巡る議論であって、「成長か、具体的な格差是正策か」の議論ではなかった。

 例えて言うなら、下村氏が日本経済という車には潜在力があり、時速80キロの速度を出すことが可能だと主張したのに対し、都留重人氏、大来佐武郎氏、吉野俊彦氏といった「安定派」と呼ばれるエコノミストたちは、そんな速度を出したら、車のエンジンが壊れてしまう、安全運転ができないと主張したのである。実際のところ、下村氏は雑誌「エコノミスト」に「安全運転につき、お静かに」という論文を書いて、安定派に反論している。

 格差の是正、つまり果実をできるだけ広く公平に分配するには、果実そのものがなくてはならない。だが、当時はその果実が乏しかった。政府は毎年米の作付けを一喜一憂して注目しており、しばしば米不足が生じたし、外貨は政府の一手管理下にあり、自由に物を輸入することすらできなかった。外貨準備は20億ドルから30億ドルの間を往来し、ちょっと設備投資が盛り上がると、たちまち底をついた。つまり果実そのものが不足する貧しい経済だった。

 だからこそ、「まず果実を増やそう。日本経済にはそれだけの潜在力がある」という下村氏の政策が時の首相・池田勇人を動かし、最終的に勝利を収め、先進国に追いつき追い越す路線を敷くのに大いに貢献したのである。

コメント34件コメント/レビュー

統計数字に見られる格差問題を分配政策のまずさにもって行くのは反対です。現在生じている格差は、小生は生き方の選択の結果と思う。現代は自分が働きたい道をえらぷことに幸福の道があると考えている人に溢れている。自分がどんな働き方をしたいのか分からないのにその思いだけ強い。世の中には、自分がやりたい山登りや、ヨットによる世界一周にチャレンジするためにアルバイトやフリ-タ-の道を選んで目的を達した人もいる。ただ、普通の人よりも長時間働いたり、夜中に働いたり、目的達成のための苦労はあったと思う。自分の能力、投入する労働時間を考えないで、給与の低さだけ言っていて良いのか。最低賃金を上げていけば、外国人労働者の導入も避けられなくなるだろう。分配政策も必要かもしれないが、働き方について教育する必要のほうが大きいのでは。K.M.`07.2.22(2007/02/22)

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いただいたコメント

統計数字に見られる格差問題を分配政策のまずさにもって行くのは反対です。現在生じている格差は、小生は生き方の選択の結果と思う。現代は自分が働きたい道をえらぷことに幸福の道があると考えている人に溢れている。自分がどんな働き方をしたいのか分からないのにその思いだけ強い。世の中には、自分がやりたい山登りや、ヨットによる世界一周にチャレンジするためにアルバイトやフリ-タ-の道を選んで目的を達した人もいる。ただ、普通の人よりも長時間働いたり、夜中に働いたり、目的達成のための苦労はあったと思う。自分の能力、投入する労働時間を考えないで、給与の低さだけ言っていて良いのか。最低賃金を上げていけば、外国人労働者の導入も避けられなくなるだろう。分配政策も必要かもしれないが、働き方について教育する必要のほうが大きいのでは。K.M.`07.2.22(2007/02/22)

まず政権批判ありきの典型例な記事ですね。記者の宿命かもしれませんけど。誤謬というなら何らかの対案を出して欲しい。今後は批判して飯を食うスタイルの記者は読者からは支持を受けない。(2007/02/22)

いつも思うがこの種のコメントを読んでも希望の光が見えない。斬りっ放しで済まされる職能にも釈然としないものを感じる。まず自説ありきで、自己アピールの場としてコラムを活用する評論家が多いのも一因か。 知名度の高い人物をターゲットにすれば、露出度も高められるのであろうが。 あるコラムで「情報責任」という言葉を目にしたが、著者が、「自分はどのような情報を出さなければならないか」ということに使命感を持ち、心血を注いで書いた論評か否か、我々も見分ける眼を持たなければならない。(2007/02/21)

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