人口減少、少子高齢化は日本に限った話ではない。成長著しいアジア各国だが、2050年までに人口増加を原動力とした“ボーナス期間”は次々に終わりを迎える。2050年までを見通した長期世界経済予測を試みた日本経済研究センターの小峰隆夫・経済分析部主任研究員(法政大学教授)に、アジアの未来について聞いた。(聞き手は、日経ビジネス オンライン副編集長=水野 博泰)
NBO 人口減少、少子高齢化の時代に突入し、日本経済は転換期を迎えていますが、世界的に見ると、これは日本に限った話ではないようですね?
小峰 ええ、アジア各国の人口構成は今後50年間で激変していきます(グラフ1、グラフ2)。
日本は既に少子高齢化が進み、人口減少が始まっています。“人口先進国”として先頭に立っています。ただし、ほかのアジア各国も少し遅れて日本の後に続いてきます。第2グループは、韓国、シンガポール、中国などです。これらの国々では既に少子化が進んでいて、やがて労働力人口が減り、いずれ人口も減少に転じます。その次に第3グループがあります。タイ以外のASEAN(東南アジア諸国連合)の各国とインドです。我々はこれを「人口の雁行形態」と呼んでいます。
アジア──世界経済の成長センターが転機を迎える
人口構造の変化は、経済に相当大きな影響を及ぼします。労働力人口の減少は経済成長の厳しい制約になる。それから貯蓄率が下がります。高齢化が進むと貯蓄を取り崩す人が増えるからです。そうすると、投資活動が制約されます。これから2050年までの間に、そういう局面にアジア各国が次々に直面することになるでしょう。人口が経済を規定するという前提で計算してみると、2010年代ぐらいから第2グループの国々の経済成長が減速します。2020年代以降には第3グループの国々でも減速が始まります。
このような2050年までを見通した長期予測結果を、「世界経済長期予測 人口が変える世界とアジア」として今年1月にまとめました。
これまでアジアは世界経済の成長センターだと言われてきましたが、それは永遠に続くものではなく、我々の予測では意外と近い将来に転機が来るという結果が得られたのです。アジアの減速シナリオを示した予測は初めてなのではないでしょうか。アジア楽観論に一つの警鐘を鳴らすものだと考えています。
NBO 人口に関しては、中国とインドの伸びが著しいですね?
小峰 中国もインドも人口大国ですが、両国は様相がかなり違います。中国は第2グループにあって、2020年代以降成長が減速し、2040年代になると経済成長率は1%ぐらいになるという「中国減速シナリオ」を描いています。中国はやがて米国を抜いて世界一の経済大国になりますが、その後減速するので米国に抜き返されることになる(グラフ3)。
それに対してインドは第3グループにいて、まだ人口がそれほど経済を制約していないので、2040年代でも3%ぐらいの成長率を維持するでしょう。インドは間もなく日本を抜いてどんどん成長していきます。
2050年時点では、中国のGDP(国内総生産)は日本の7倍弱、インドは3.8倍と予測しています。経済規模で日本を大きく上回る国が、これからどんどん出てきます。世界第2位の経済大国だという意識を持っている日本人からすると、かなり衝撃的なのですが、人口が10倍以上も開きがあるのだから、当たり前だと考えるしかありません。
問題は、日本は中途半端な経済大国への道を歩み始めているのではないかということです。
“中大国ニッポン”は独自の道を切り開けるか
NBO それは政治、経済、軍事、あらゆる方面で?
小峰 通貨もそうです。米国やEU(欧州連合)は「超大国モデル」です。独自の支配的な通貨があって、巨大な経済圏がある。日本の場合にはそこまでは大きくはない。今でも突出して大きくないし、これからはどんどん相対的にも小さくなっていく。しかし、小さすぎて取るに足らないというわけではない。例えば北欧諸国のように規模が小さければ、付加価値の高い特定の産業に特化して、1人当たり所得が高くて国民全体が豊かという経済をつくり出すこともできる。いわば、「小国繁栄モデル」です。
日本は「超大国モデル」でも「小国繁栄モデル」でもない。「中大国モデル」という独自の道を開拓できるかどうかが、今後も日本が豊かであるための大きな課題になるはずです。
こうした分析のために、我々は「人口ボーナス」と「人口オーナス(重荷)」というとらえ方で整理しました。
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