津波経済――。互いに複雑に絡み合うため、どこかで生じた変動が増幅しながら伝播し、世界的に壊滅的な打撃を与える経済を日経ビジネスは2005年10月17日号の特集でこう命名した。
モンゴルでのマンション投資熱、半年で2倍に高騰したドバイの株価指数、中国人画家の作品に億円単位の高値がつく香港のオークション…。過剰流動性という名のマネーがリスクを疑うことを忘れたかのように世界を漂流する時代への警鐘だった。
それから1年半、2007年2月末に世界の株式市場を津波が襲った。きっかけは、世界的に見れば、ほんのさざ波と言ってもいいほどの変調だった。
旧正月明けの2月26日。中国の上海市場の代表的な指標「上海総合指数」が3000ポイントを上回り史上最高値を更新した。翌27日、1日で9%弱の下落を記録することになる。下落したのは外国人は基本的に投資できない上海A株。世界的なマネーの流れとは本来は無縁の閉じた世界の出来事だった。
ところが、隔絶された存在であるはずの上海市場での株安が世界に伝播する。欧米、日本の株価指数は軒並み値を下げ、世界同時株安となった。その日こそ「明日になれば値を戻す」という楽観論も聞こえたが、下落が続いた。
野村資本市場研究所の大崎貞和研究主幹はこう語る。
「冷静に考えた方がいい。発端となった上海A株に外国人は投資できないはず。なのに、米国のダウ工業株30種平均が即座に急落したという事実に我々はもっと驚くべきではないか」
まさかの出来事に直面したマネーは理屈ではなく心理的なショックで動いた、と言えばいいのだろうか。各国の当局者は株安を受けて「実体経済はしっかりしている」と異口同音に唱えた。事実、世界経済の綻びが表面化したわけではない。にもかかわらず、経済の津波は実体と無関係に起きた。不安心理で眺めれば危うさを感じる動きがないわけではなかった。
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