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「企業と先生」一体の悲劇

みすず監査法人を解体させた「引き抜き」

  • 中原 敬太

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2007年3月14日(水)

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 「我々には人しか財産がない。人が抜けると仕事ができなくなる」。2月20日の記者会見で、みすず監査法人(旧中央青山監査法人)の片山英木理事長は事実上の解体を決断した理由についてこう説明した。カネボウの粉飾決算で金融庁から2カ月の業務停止を受けた傷は深く、昨年末に日興コーディアルグループの利益水増しが発覚したことが追い打ちをかけたと映った。だが、みすずを「解体」の道に追い込んだそもそもの引き金は「会計士ムラ」で繰り広げられた仁義なき勢力争いにあった。

あずさの揺さぶりに怒り

 「あいつらだけは絶対に許せない」。記者会見の数日前、みすずのある幹部は目に涙を浮かべていた。

 業務停止期間中、新日本製鉄、セブン&アイ・ホールディングスといったみすずの主要顧客から共同監査人に選ばれたのは、あずさ監査法人だった。内部統制監査や四半期決算を控え、監査法人はどこも人手不足。大企業グループの監査には100人が必要なケースもあり、これまでのあずさの陣容で対応するのは難しい。このためある大企業を担当するみすずの監査チームに「そのままそっくり移籍していただきたい」という露骨な打診があったという。こうした揺さぶりが、みすずの内部分裂の動きを加速させた。

 2月15日、日本公認会計士協会にみすず、あずさ、新日本、トーマツの4大監査法人の幹部が集まった。もはや内部分裂に手をつけられなくなったみすずの片山理事長は「3月期決算の監査が終わる6月末までは引き抜きを自粛していただきたい」と頭を下げ、7月以降の監査の引き受けも要請した。「あきらめるのは早い」との声も出たが、流れは変わらなかった。

 みすずの解体について業界では「あずさの人材獲得戦略がきっかけになった」とささやかれている。積極果敢なあずさの行動は昨秋、新人会計士の採用でも話題を集めていた。監査法人の採用活動は例年、11月の公認会計士試験の合格発表後に始まる。監査法人間で解禁日を決めており、昨年は11月24日だった。

 この日、あずさは他法人より1時間早い朝8時から面接の受け付けを始めた。約20分の面接で内定を出し手続きを終えると、近くのレストランで食事やワインを振る舞った。他法人も訪問しようと考えていた受験生は「赤い顔でほかの法人を訪問することができなくなった」(あずさの内定をもらった学生)。ある大手監査法人では「面接に来る人数が予定よりも大幅に少ないので、公共交通機関の遅延を調べたほど」。結果、あずさは全科目合格者だけで493人を採用。新日本(312人)やトーマツ(282人)は出し抜かれた形だ。

 あずさにも人材の確保が厳しい時期があった。今からちょうど5年前の2002年3月。あずさ監査法人の前身、朝日監査法人は海外提携先の米アーサーアンダーセンがエンロン事件を機に存続が危ぶまれる事態となったのだ。

 「とにかく理解を求めるしかなかった」。当時、朝日の理事長だった岩本繁氏は連日、顧客企業に足を運んだ。提携先の不祥事とはいえ、海外上場企業はもちろん、海外子会社を抱える多くの日本企業にとって、監査法人の変更につながりかねない。岩本氏は3月中に別の国際会計事務所KPMGとの仮契約にこぎ着け、顧客離れは回避したが、朝日のイメージダウンは採用活動に響いた。あずさの幹部からは「昔は学生をニューヨークまで連れていくところもあった。この程度の競争はお互い様だ」との反論も聞かれる。

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