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「日本の資本市場が笑われる」

日興コーディアル前会長が語る皮肉

2007年3月19日(月)

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 上場維持か廃止かで揺れた日興コーディアルグループ。引責辞任した金子昌資・前会長が退任後初めて胸中を語った。自らの経営責任は語らず、制度上の不備を声高に叫んだ。

 不正会計が組織的、意図的とまでは言えないとして、東京証券取引所が日興コーディアルグループ(8603)の上場維持を決定した3月12日。前会長の金子昌資氏は、友人が横浜・中華街で催した食事会に出席していた。午後7時すぎ、テレビのニュースで上場維持を知った夫人からの電話で久しぶりに声が弾んだ。

 まさかの上場維持――。金子氏にとっても東証の決定は予想外のものだった。その前週、金子氏は本誌の取材にこう答えていた。

 「僕としては、まな板の上に載ったコイだから。皆さんの前できれいに料理されて、なくなってしまうようなもんですよ。だって、そうでしょう。皆が寄ってたかって、日興をガチャガチャガチャガチャやった。今の僕は、そういう心境なんですよ」

「僕は経営者失格」

 不正な会計処理の責任を取って、金子氏が前社長の有村純一氏らと引責辞任を発表したのは2006年12月25日。それ以降、金子氏はマスコミの取材に一切応じてこなかった。

 東証が上場廃止を決める――。そんな報道が相次ぐ中、金子氏は自らを「まな板の上のコイ」に例える諦めの心境にあった。

 「まあ、僕は経営者失格だからさ、アンコウのようにはらわたまで全部料理されてしまう」

 金子氏の言葉には被害者意識さえ垣間見える。会長としてグループ全体の経営を監督すべき立場にあった自らの責務は何だったのか。その詳細については、語らなかった。金子氏が被害者意識を持つのは日興が真相解明のため外部の弁護士を集めた特別調査委員会のまとめた報告とも無縁でない。

 その報告書では、今回の不正会計処理に金子氏が関与していた「具体的な証拠はない」とされた。そのため、日興は損害賠償請求の対象から金子氏を外した。金子氏は道義的責任を感じ、自ら3億円の私財を会社に返還する。

 「3億円で罪が償えるとは思っていません。それでも、少しでも損害の足しになればと思って決断したのです」

 前社長の有村氏について特別調査委は「重大な経営上の責任がある」と断じたが、金子氏の見方は違った。

 「有村君が不正にかかわるはずがない。彼は愛妻家だし、公私を混同するような人でもない。誰かの考えで、有村君が不正を指示したように書かれているだけだ」

 問題となった会計処理は、実質支配していた特別目的会社の利益を連結内に取り込み、損失は連結外としたもの。証券取引等監視委員会の勧告を受けた金融庁は過去最大の課徴金を科した。金子氏は当時の経営陣の不正を否定したうえで、制度面の不備に日興迷走の原因があったと主張する。

 「我々は会計処理が適法かどうかを監査法人に尋ね、『大丈夫だよ』という文章をもらっている。それを後から『いかん』と言われてしまったら、企業は手の打ちようがない」

 そして、金融庁による中央青山監査法人への厳しい処分が資本市場を混乱させるきっかけだったと訴えた。カネボウの粉飾決算に所属会計士が加担していたことが判明し、2006年5月に金融庁は中央青山に監査業務の停止を命令した。この結果、中央青山の顧客企業は一時監査人を選ばなければならないなど、資本市場に大混乱が生じた。

 「カネボウは悪いけど、そのほかの中央青山のお客さんは何も悪いことをしていない。こんなことをしていたら、日本の資本市場がおかしいと世界から笑われる」

 こうした見解は一理あるにせよ、自らの責任を棚上げしたうえでの発言は説得力に欠ける。

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「「日本の資本市場が笑われる」」の著者

坂田 亮太郎

坂田 亮太郎(さかた・りょうたろう)

日経ビジネス副編集長

東京工業大学大学院修了後、98年日経BP入社。「日経バイオテク」「日経ビジネス」を経て2009年から中国赴任。北京支局長、上海支局長を経て2014年4月から日経ビジネスに復帰

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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