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誰のためのデジタル放送か?(前編)

コピーワンス議論空転が映す変われない業界の体質

  • 水野 博泰

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2007年4月23日(月)

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デジタル放送番組の録画回数制限の緩和に向けた議論が紛糾している。総務省の「デジタルコンテンツの流通の促進等に関する検討委員会」では、“制限派”の著作権者や放送局と、“緩和派”のDVDレコーダーメーカーや消費者団体の主張が平行線をたどったままで接点が見えてこない。著作権保護の徹底か、消費者利益の重視かという対立構図だけからは見えてこない核心を、NHK出身で放送業界に詳しい池田信夫氏に聞いた。(聞き手は、日経ビジネス オンライン副編集長=水野 博泰)

池田信夫氏

NBO DVDレコーダーなどの製品を売りたいメーカー側からの緩和要求に対して、著作権を盾にした著作権者や放送局の抵抗はかなり頑強のようです。正直言って、デジタル番組のコピー制限が「消費者利益を損なう」などと正論を振りかざして青筋を立てるほどのことでもないと思いますが、逆に、だからこそ、コピー回数ぐらいのことで一歩も前に進めなくなっている姿は、何だか滑稽に見えてしまいます。

池田 この問題の根っこにあるのは、放送業界が資本主義のルールで動いていないっていうことに尽きるんです。

 放送番組にコピーガードをかけるなんてことを始めたら、使い勝手が悪くなり、機器が売れなくなり、新たな問題を引き起こしたりするでしょう。常識的に考えればすぐに分かることなのに、放送業界というのは新しいものを拒絶し、一切封じ込めることに異様な熱意を燃やしてきたんです。

 例えば、インターネットを放送的サービスに使う「IPマルチキャスト」の議論ではやはり著作権を持ち出して最後まで抵抗しました。パソコンに録画したテレビ番組をインターネット経由で遠隔地から視聴できるサービスである「録画ネット」とか「まねきTV」に対しては訴訟を起こした。たかが数百人ぐらいしか利用者がいない弱小サービスに対して、NHKから民放キー局から全部集まって大弁護団を結成してですよ。世界に稀に見るおかしな裁判です。あの“情熱”が不思議なわけですよ。

 今回のコピーワンスにしても、自分たちの業界にインターネットの世界から新参者が入ってくるのを防ぎたいということ。そういう恐怖心が、外部からは理解不能で理不尽な状態を引き起こしているんです。全く非合理的なんですよ。だって、下手をすると地上デジタル放送そのものの普及にブレーキをかける可能性がある。コピーワンスが緩和されるまで地デジに乗り換えないで、「現行のアナログ放送のままでいいや」という人が出てくるでしょう。

放送業界に巣食う「新しいものを拒絶する体質」

NBO 放送はアナログからデジタルに移行する大転換点にあるというのに、あまり変わらないというか、むしろ逆行しているようにも見えてしまいます。

池田 この問題は、普通にビジネスの問題として理解しようとしても無駄でね、放送業者の心理学と言うか、精神病理学的な問題じゃないかと僕は思うね。

 僕の『電波利権』っていう本に細かいことを書きましたけど、元々は田中角栄氏が派閥の所属議員に利権を分配するためのシステムに組み込まれたというところから日本の放送局は出発しているわけです。在京キー局なんかはまだマシだと思うんですが、問題は地方局です。地方局っていうのはこれから先、立ち行かなくなることは目に見えている。今でもキー局からの“補助金”でなんとか成り立っていて、自分たちのビジネスに未来はないということにものすごく脅えている。そして、不幸なことに日本民間放送連盟(民放連)っていうのは、加盟200社のうち130社ぐらいが地上波テレビ局で、そのうち110社ほどは地方局なんですね。東名阪の大手局は合わせて20社ぐらいしかないわけですよ。

 キー局の人たちは、変わることをひたすら拒否するようなバカなことをやっててもしょうがないと思っていますよ。キー局は自分たちで制作したコンテンツを持ってますから、いろんな形でそれらを再利用するチャンスがある。インターネットで自分たちのコンテンツを出していくことにも関心があって、「第2日本テレビ」とか、「ワッチミー!TV」とか、いろいろとチャレンジはしている。

 しかし、そういうことにさえ、地方局からごたごた文句がついてくるわけです。「地方には地方局がある。その頭越しに映像番組を配信されちゃ困る!」ってね。そういう地方局が民放連では多数派だから、キー局が仕切ることができない。国連と同じですよ。大国も1票、小国も1票なんです。

 そもそも、この狭い日本に、各県ごとに、130社もの放送局が必要なのかということが本当の問題です。地方局っていうのはずっと政治家の“オモチャ”にされ続けてきたがために自立できない企業になってしまった。だから、過剰なほどの恐怖心を抱くんです。自分たちの存立を危うくする脅威に対して、自分たちが変わることによって対抗するのではなく、すべての新規参入を潰すことによって生き延びる道を選んできた。

NBO 衛星放送やケーブルテレビもずいぶんと苦労してきましたからね。

池田 衛星放送が始まる時にも地方局は大反対しました。いわゆる「地方局炭焼き小屋論」っていうのがあった。放送業界では有名な言葉です。放送衛星から日本全国にダイレクトに電波が降ってくるようになると、地方局は炭焼き小屋みたいに時代遅れで意味のないものになってしまうと。とにかく衛星放送を止めさせようと運動した。その結果、日本はこの分野で米国よりも10年は遅れてしまった。

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