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誰のためのデジタル放送か?(後編)

「著作権保護」は既得権益を守るための便利な口実

  • 水野 博泰

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2007年4月23日(月)

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言うまでもなく、著作権保護はデジタル放送時代の重要な課題だ。しかし、実際には既得権益を守り、新規参入を阻むための“便利な口実”になっているのではないか──。NHK出身で放送業界に詳しい池田信夫氏は、そこに甘えの体質があると指摘する。(聞き手は、日経ビジネス オンライン副編集長=水野 博泰)

池田信夫氏

(前編へ)

NBO ただ、放送映像の著作権を保護しなければならないという放送局や著作権者の主張はもっともだと思うのですが…。アナログでコピーすると映像品質が劣化しますが、デジタルでは高品質のまま複製できてしまいますから。

池田 著作権の保護と言いますが、注意深く見てください。著作権を守れって声高に叫んでいるのは著作者やクリエーターではなく、真ん中に入って仲介している人たちですよ。現場のクリエーターたちが「コピーワンスでなければ困ります」なんて言っているのを、僕はあまり聞いたことがない。

 僕はいつも言っているんだけど、著作権って“著作者”の問題じゃないんです。クリエーターたちが作り出したものを売って儲けている人たち、つまり、放送局や映画会社、出版社などにとっての利害の問題なんです。ずばり言ってしまえば、「著作権」という言葉を隠れみのにして、販売業者の独占的利潤を守ろうとしているわけです。

著作権延長が守るのは映画会社の利益だけ

NBO 著作権と言えば、今、その保護期間を50年から70年に延長すべきかということが議論されていますね。(関連記事:「著作権延長論に物申す」へ)。

池田 映画については一足先に著作権法が改正されました。2003年12月31日までは「公開後50年」が保護期間でしたが、2004年1月1日から「公開後70年」に延長されたのです。法改正ぎりぎりのタイミングで著作権が切れたのは1953年に公開された作品で、例えばオードリー・ヘップバーンが主演した「ローマの休日」がそれに当たります。著作権が切れたということで、500円くらいの廉価版DVDが販売されるようになりました。

 ところが、版権元の米映画会社パラマウント・ピクチャーズ・コーポレーションが、これに異議を唱えた。細かいことは省きますが、「ローマの休日」の著作権はぎりぎりで生きていて、あと20年間保護されるべきだと主張したのです。昨年、東京地裁はパラマウント側の申し立てを退ける決定を下したのですが、仮に裁判所がパラマウントの主張を認めたとしたらどうなるのか。

 500円の廉価版を販売している業者は、販売が禁じられるでしょう。500円で売り出したということは、その価格でも利益が出せるということです。パラマウントが販売している正式版はその何倍もの価格で売られていますから、著作権の延長は第一義的にパラマウントの利益を確保することに直結します。

 また、著作権保護期間を延長することはクリエーターのインセンティブになるという意見がありますが、「ローマの休日」にかかわった人たちはほとんど亡くなっているわけですから、遺族に多少の著作権料が支払われたとしても、亡くなってしまった俳優やアーティストの意欲を高めることにはなるはずもない。これから制作される作品について著作権を延長するのならともかく、過去の作品の著作権を延長しても、世の中にとって意味のあるインセンティブにはならない。

「著作権」は新規参入を拒むための便利な口実

NBO 著作権の延長の目的は、仲介者である映画会社の利益を守ることにしかならないということですか。

池田 その通りです。そして、コピーワンスに関しても同じような構造が透けて見えてきます。デジタル番組のコピーを制限することで守られるのは、テレビ局や映画会社の利益であって、テレビ番組を実際に作ったプロダクションなんかにはお金は行きっこない。

 「発掘!あるある大事典II」の騒ぎで僕がびっくりしたのは、番組制作費3200万円のうち、孫請けのところには860万円しか支払われていなかったという事実です。大半のお金は放送局が中間搾取していて、現場のクリエーターには回っていなかった。コピーワンスが守ろうとしているのは、現場の著作者の権利ではなくて放送局の“搾取権”なんです。(編集部注:「番組制作費3200万円のうち、下請け、孫請けのところには860万円しか支払われていなかった」とあったところを、「番組制作費3200万円のうち、孫請けのところには860万円しか支払われていなかった」と修正しました)

コメント45件コメント/レビュー

コメントを読むと、今の放送事業者は電波利権、放送利権、著作権、搾取権など種々の利権より強固に守られており、これらの権利、権力を開放する気持など、全くないと云ってもよいほど、ないことが判った。更に視聴者側には、TVのデジタル化という機会を捉えて、コピーワンスなどという前代未聞の排他的手法を押しつけてこれらの利権を一層強固なものにするのに成功したようだ。日本の放送事業者が自らこの事業を改革するのは最早無理だろう。結局、インターネットという国境のない新たなメディアを基盤にして躍り出てきた楽天、Gyao、YouTubeなどが既存の勢力の思惑に囚われることなく、双方向性を生かして視聴者の要求に応えるのを期待するしかない。(2007/05/10)

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コメントを読むと、今の放送事業者は電波利権、放送利権、著作権、搾取権など種々の利権より強固に守られており、これらの権利、権力を開放する気持など、全くないと云ってもよいほど、ないことが判った。更に視聴者側には、TVのデジタル化という機会を捉えて、コピーワンスなどという前代未聞の排他的手法を押しつけてこれらの利権を一層強固なものにするのに成功したようだ。日本の放送事業者が自らこの事業を改革するのは最早無理だろう。結局、インターネットという国境のない新たなメディアを基盤にして躍り出てきた楽天、Gyao、YouTubeなどが既存の勢力の思惑に囚われることなく、双方向性を生かして視聴者の要求に応えるのを期待するしかない。(2007/05/10)

遅かれ早かれ放送業界はコピーワンスやB-CASカードを撤廃せざるを得ない事態に追い詰められると思う。ただ、そんなことになる前に放送業界はすみやかにテレビを通じてデジタル放送の現状を包み隠さず報道してほしい。それが自らの首を絞める行為だとしても、ジャーナリストであるからにはきっちり国民に説明をして筋を通してほしい。(2007/05/04)

コピーワンスなんて、所詮放送局とお役人の再就職作りのマスターベーションである。何ゆえ公共の電波で流した番組を二回目以上は見させない権限があるのか、理解に苦しむ。ましてや、NHKは、公共の電波を使用し、国民が金(聴取料)を払って番組を作ってもらっているものであり、その番組は、そもそも視聴者の財産であると考えられる。そのようなコンテンツを一方的に制限を付けて見せないのであれば、それは、財産の私有であり、視聴者が同意したとは思えない横暴である。一体、何割の人が、二回も三回も同じ番組を見るであろう。仮にその時に見れなかった人が、録画、または、DVDを買って見る人がいるかもしれないが、それは、従来のシステムでも同じであろう。デジタル化と言う技術が、文化を崩壊させるとは思えず、更なる発展をもたらす可能性を一部の私有にとどめてしまう愚作は避けなければならないと考えます。池田さんの寄稿の中で、米国の良識あるいきさつについて触れられているが、できれば、世界のデジタル放送の趨勢を詳しく紹介していただければと願っています。(2007/05/01)

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三品 和広 神戸大学教授