• ビジネス
  • IT
  • テクノロジー
  • 医療
  • 建設・不動産
  • TRENDY
  • WOMAN
  • ショッピング
  • 転職
  • ナショジオ
  • 日経電子版
  • 日経BP

「外注される戦争」 米国の次の一手を読む

民間軍事会社が主役のイラク戦 米国の中東政策はどうなる?

2007年5月10日(木)

  • TalknoteTalknote
  • チャットワークチャットワーク
  • Facebook messengerFacebook messenger
  • PocketPocket
  • YammerYammer

※ 灰色文字になっているものは会員限定機能となります

無料会員登録

close

イラク混迷が続く中、米ブッシュ政権への批判が激しくなっている。中東情勢の不安、国際社会での米国のプレゼンスの低下は、日本の外交政策にも影響を及ぼす。米政府、中東の現地情報に詳しい英国の危機管理会社アーマーグループのアナリスト菅原出氏にイラク戦争、対イラン政策の現状をうかがった。

(聞き手=瀬川 明秀 日経ビジネス オンライン)

911事件当時 FBI内にはアラビア語ができるスタッフは5人

NBO イラクでの混迷が続いています。2001年9月11日の米同時多発テロを契機に始まった対テロ戦争と、その延長線上で2003年に始まったイラク戦争。改めてお伺いしたいのですが、これほどまで長期化した理由は何でしょう。

菅原 出氏

菅原 出 氏

菅原 いわゆる「ネオコン」と呼ばれる一極覇権主義者と反ネオコンの「現実主義派」のホワイトハウス内のパワーゲームに目を奪われがちですが、「911事件」以降、戦争の形態が変わったという事実認識も重要です。

 本来、一国の軍隊というものは、国家と国家が戦争をするという前提で組織編制がなされ、装備も整えられ、そのための訓練を行ってきました。ところが、イラクやアフガニスタンでの戦争、正確に言うと「主要な戦闘」が終わったと判断された後の治安維持や復興段階で米軍が直面している戦いというのは、そうした国家間同士の戦争とは全く異質のものです。

 今までの戦争のように軍服を着たり戦車に乗っている「敵」がいるわけではない。敵の姿が見えず、誰が敵なのか分からない。敵を倒したいのだけれど、敵の姿が見えないうちに、突然路肩爆弾が爆発して殺されてしまう、突然一般乗用車が突っ込んできて自爆テロを受ける、テロリストの隠れ家があると聞いて駆けつけてみたら待ち伏せを受けて包囲されて機関銃で蜂の巣にされてしまう。こういう戦いなのです。

 ですから、こうした攻撃に対処するためには、高性能の武器をたくさん持っていても、それこそ精密誘導ミサイルをいくら持っていてもあまり役に立ちません。それよりも例えば周辺地域の携帯電話での会話のやり取りを盗聴して、テロが計画されていないかを知るといったことの方がずっと重要になってきており、当然アラビア語をできるという人材が決定的に重要になってきます。

 911が起きた時、FBI(米連邦捜査局)内にはアラビア語をできるスタッフが5人くらいしかいなかったと言われています。そうなるとたとえテロリストたちの通信を傍受できても、翻訳が全然追いつかないということになります。

 つまり、こういう新しい戦いに必要な能力や人材が軍隊にも情報機関にも警察組織にも不足していたのです。そしてどの組織でも能力不足なのだから、当然組織間での情報共有や協力が不可欠なのですが、911以前にはそうした協力体制もできていなかったので、対策は後手後手に回ってしまったのです。

平和維持活動を想定していなかったのが敗因?

-----泥沼化した現状はベトナム戦を連想させます。

 ベトナム戦争で米国が学んだことは大規模な地上軍ほど高くつくものはない、ということでした。ですから二度とあのように大規模な地上軍を遠方に投入して長期間ゲリラ戦闘をするような戦争はしない、というのが米国の軍事戦略の前提でした。その究極的な姿が、ラムズフェルド元国防長官が思い描いたような、空からハイテク兵器で一気に叩いて、小規模の機動部隊で短期間で敵の拠点を制圧するという戦い方でした。

 こうした戦い方には大規模な人数の軍隊は必要ない、というのがラムズフェルドの考え方でしたし、彼はアフガン、イラクだけでなく、こうした低コストで効率的な戦争をもっとやってシリアやイランも倒したいと思っていましたから、そもそも戦争後にイラクの国造りに関与するなどということに関心はありませんでした。

 ラムズフェルドが理想とした戦争と違って、国造りに不可欠な治安維持や平和維持的な活動、対反乱戦などはとにかく労働集約型というか「人」がたくさん必要な事業です。こうした平和維持的な活動にはラムズフェルドは全く関心がなかったし、米軍はこうした活動のための訓練も準備も全然していなかったというのが長期化の理由です。

 そもそも冷戦時代に比べ米軍は半数以下に規模が縮小しています。現在、イラクに駐留しているのは17万人くらいでしょうか。もはや陸軍も海兵隊も兵士たちの派遣期間を延長したり、米国に戻ってきてもその休暇の期間を短くしなければ、兵員繰りが間に合わないほど逼迫してしまっています。新兵の募集でもボーナスを増やすなどしていますが、訓練も含めて全く間に合っていません。

コメント2件コメント/レビュー

アフガン戦争時にパキスタンに流れ込んだ難民が200万人にという話を聞いた。西欧の感覚では難民が流れ込んだ国も参ってしまう筈だが、そうはならなかった。これは地球を半周するように広がるイスラムの諸国では国があっても西欧的な感覚の国境などなきに等しいという良い例だろう。そのような世界では、アメリカがドイツや日本と戦争をして勝利を収めたという経験などは役に立たない。アメリカはかつてのイギリス、ソ連が犯したアフガン侵略、フランスのアルジェリア支配の誤りの教訓を忘れ、自らイラクに侵攻するという愚を犯して今苦しんでいるのだろう。「外注される戦争」はかつてのアルジェリア戦争における「外人部隊」の焼き直しだろう。(2007/05/11)

「NBニュース」のバックナンバー

一覧

「「外注される戦争」 米国の次の一手を読む」の著者

瀬川 明秀

瀬川 明秀(せがわ・あきひで)

日経ビジネス副編集長

日経ビジネス、日経ベンチャー、日経ビジネスアソシエなどを経て、日経ビジネスオンライン開設後はオンライン編集がメインの業務。2012年からは日経BPビジョナリー経営研究所の研究員を兼務。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

日経ビジネスオンラインのトップページへ

記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

アフガン戦争時にパキスタンに流れ込んだ難民が200万人にという話を聞いた。西欧の感覚では難民が流れ込んだ国も参ってしまう筈だが、そうはならなかった。これは地球を半周するように広がるイスラムの諸国では国があっても西欧的な感覚の国境などなきに等しいという良い例だろう。そのような世界では、アメリカがドイツや日本と戦争をして勝利を収めたという経験などは役に立たない。アメリカはかつてのイギリス、ソ連が犯したアフガン侵略、フランスのアルジェリア支配の誤りの教訓を忘れ、自らイラクに侵攻するという愚を犯して今苦しんでいるのだろう。「外注される戦争」はかつてのアルジェリア戦争における「外人部隊」の焼き直しだろう。(2007/05/11)

戦争とテロが区別して記述されてないので、分かりにくいです。アラビア語を話せる人も大切ですが、周知の通り指摘されたように、やはりインテリジェンスな部分(嘗て良い評判はあまり聞かなかったが)を縮小してしまい、結果そこからの得られたであろうはずの情報の欠落も重要でしょう。諜報活動、メディア、外交等これらの違いはなにか??ときに気になる。(2007/05/11)

ビジネストレンド

ビジネストレンド一覧

閉じる

いいねして最新記事をチェック

閉じる

日経ビジネスオンライン

広告をスキップ

名言~日経ビジネス語録

小池さんがこの言葉(排除)を述べたことで、「風」が変わっていきました。 ただし、小池さんが言ったことは正論です。

若狭 勝 前衆院議員