少子化、高齢化、総人口減少という「三重苦」に日本が直面しているという事実は既に語り尽くされている。しかし、この問題を克服するための思い切った方策はまだ打ち出されていない。先送りできる問題ではないのにもかかわらず、動きはあまりにも緩慢で遅い。
ドイツは税率と年金支給開始年齢の引き上げを断行
同じ問題に直面する国の中には、着々と備えを固めているところもある。
例えば、かなりの勢いで高齢化が進み、総人口が減少に転じたドイツでは、今年から付加価値税率を16%から19%に引き上げた。
付加価値税は日本の消費税に当たる基幹税目だ。欧州連合(EU)の国の多くは付加価値税を採用しており、その平均的な水準が19%である。EUの財政規律を定めたマーストリヒト条約は、加盟各国に毎年の財政赤字のGDP(国内総生産)比率を3%以下にするよう要請している。この水準を満たしていなかったドイツは、連立政権の合意として付加価値税率の引き上げを決めた。
さらに、ドイツ連立政権は公的年金の支給開始年齢を現在の65歳から2012年以降、段階的に67歳に引き上げる方針を決めた。年金財政の悪化をくい止めるための苦肉の策だ。
特筆すべきは、付加価値税の増税に対しても年金支給開始年齢を引き上げることに対しても、ドイツ国民の多くが最後は得心したという事実だ。増税には6割強の国民が反対だったという世論調査の結果もあるが、連立政権はなぜいま負担増が必要なのか、説明と説得を厭わず、強い意志をもって引き上げを決断した。人気取りの政策に走らなかったのだ。現世代のドイツ人は次の世代のために「痛み」を分かち合う道を早々と選択したということである。政治の指導力と国民各層の次世代に対する豊かな想像力の結果だろう。
まともに議論さえできない日本の空気
日本はのんびりしたものである。
加速度的な少子化と高齢化によって公的年金の財政状況がより逼迫することが明白な日本こそ、年金支給開始年齢の引き上げは避けて通れない道ではないか。しかし、その弊害が表面化するのは数十年先だ。今そこにある危機ではないことをいいことに、この問題に向き合うことを避けようとする勢力が存在する。
日本では現在、厚生年金の支給開始年齢を60歳から段階的に65歳に引き上げている途上にある。2025年に男性が65歳に完全移行し、女性は5年遅れの2030年から65歳支給になる。小泉純一郎前首相は在任中、年金制度改革の議論の際に支給開始をさらに遅らせる案に言及したことがある。だが自民、公明両与党の厚生族議員などの猛反対に遭い、すぐに引っ込めた。議論することさえ封じる空気が満ちているのだ。
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