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「総合取引所」構想が提起するニッポンの選択

「自由と規律」の再構築を急げ

  • 水野 博泰

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2007年5月21日(月)

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経済財政諮問会議グローバル化改革専門調査会の金融・資本市場ワーキンググループは4月下旬、「真に競争力のある金融・資本市場の確立に向けて」と題する第一次報告をまとめた。総合取引所を創設する構想が大きく報じられたが、真の狙いは、金融ビッグバンの総仕上げに当たり日本国民に1つの選択を迫ることだった。このまま米国的自由を追求し続けるのか否か──。ワーキンググループ主査の上村達男早稲田大学教授に聞いた。(聞き手は、日経ビジネス オンライン副編集長=水野 博泰)

早稲田大学法学部の上村達男教授

NBO 総合取引所構想が大きく報じられました。日本の金融・資本市場の国際競争力を高めるためということなのですが、いま一つ、そのロジックと効果が分からないのですが…。

上村 もちろん、取引所を一緒にさえすれば国際競争力が飛躍的に高まるなどというような単純な話ではありません。総合取引所構想には、金融庁、農林水産省、経済産業省といった取引所を所管する官庁の壁や、法律の壁といった、今まで乗り越えようとしても乗り越えられなかった壁を越えられるかという象徴的な意味合いが込められていると言った方がいいでしょう。

 法律と制度を変えて総合取引所ができたとして、即座に素晴らしい成果を上げるかというと、それは何とも言えません。ただ、それが突破口になって頑として残っている縦割りの壁が崩れて、様々な商品が扱えるようになり、投資家保護基金などのセーフティーネットの共通化や不正監視システムなども徐々に共通化されていくはずです。

「丸裸の自由」に邁進する日本の愚

NBO ニューヨークやロンドンと比べてこのぐらいの位置につけようとか、そういう具体的な目標があるわけではないのですね?

上村 そういうことを考えられるようなところまで、まず持っていこうということです。今までは制度の壁をできないことの言い訳にしていた。壁を取り払った時、我々の知恵が本当の意味で試されることになる。

 現実の問題として、世界的に取引所間の合従連衡が進んでいます。欧州取引所連合のユーロネクストはニューヨーク証券取引所を運営する米NYSEグループと4月4日に経営統合しました。英国やドイツも動いている。そして米国も。このままの状態でいて、東京証券取引所が米国勢に買収・統合されるようなことがあったら、間違いなく規制の失敗です。

 かつてマックス・ウェーバーは「強い取引所を持つことは経済の覇権をめぐる諸国民間の闘争だ」と書いた。欲の皮の突っ張った投資家の損がその国の取引所を強くするための費用、ここでの表現では軍事費の一部、とすら言えると100年前に言っていました。現代にも通じるところがある。取引所が外資に買収されて「はい終わり」で済むようなことではありません。

 いいですか、欧米、特に米国はグローバリズム、自由競争と言いながら、自国企業をしっかりと守っていますよ。例えば米国の会社法というのは州ごとに定められていて、“連邦会社法”というものはありません。州会社法はその州にある米企業を外資だけでなく誰からも守ろうとする。連邦政府が外国に市場開放を求める一方で、各州は市場や企業を守る。連邦政府は「あれは州の問題だから」と言ってかわす。上手に使い分けているんですよ。そういうしたたかさという点では欧州も同じだと思います。

 それに対して、日本は非常に単純な議論が横行しています。例えば、新日本製鉄やトヨタ自動車が外資に買収されたとしますよね。大変な騒ぎになるはずですが、「自由経済社会では理論的には間違っていない」なんていう論を平然と言う輩も出てくるに違いない。国民経済という観点が希薄化しているんです。グローバルな無国籍資本の論理があたかも世界中を覆っているかのように勘違いしている。世界の現実はそうじゃないんですよ。

 私は総合取引所でなければ絶対に競争に勝てないとは必ずしも思っていません。立派な総合取引所ができればいいと思いますが、それなら生き残れるというほど単純な話ではありません。しかし、壁の奥に閉じこもっていても、遠からず引きずり出されて食われてしまう。総合取引所構想というのは、世界を相手にもっとしたたかに戦うための総合的な仕組みを考えるためのトリガーであり突破口でもあるのです。

目指すべきはジョン・ウェインか? ジェントルマンか?

NBO 確かにワーキンググループが出した今回の報告では、総合取引所構想はほんの一部に過ぎません。金融ビッグバンの総仕上げなどとも言われていますが、やるべきことはまだ多いようですね。

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