インドのミタル・スチールがルクセンブルクのアルセロールを買収してから1年。新生アルセロール・ミタルの「次なる標的」との観測が消えない新日本製鉄は、資本参加と技術提供からなる提携戦略を加速。世界的な再編機運の中で、したたかに、着実に、独自戦略を進めている。
昨年後半には韓国の大手鉄鋼メーカーであるポスコ、そしてブラジル鉄鋼最大手で、日本とブラジルの合弁事業として1962年設立したウジミナスとの資本提携を相次いで実施した。ポスコとは互いに株式を買い増し合うことで、4~5%の株式を持ち合い、ウジミナスには1.7%を出資した。またウジミナスの大株主である日本ウジミナスの株式を50.9%まで買い増した。ウジミナスは新日鉄の持ち分法適用会社となり、実質的な子会社とした。
ブラジルに新高炉建設も
「アルセロール・ミタルに対する対抗軸が必要だ」。かねて三村明夫社長は、買収されることの危機感を率直に表明、自社を含めたグローバルな企業連合の必要性を繰り返し説いてきた。一連の提携により、自動車用鋼板で提携関係にある中国最大手、宝鋼集団傘下の上場企業である宝山鋼鉄を含めて、韓国、ブラジルへと、守りの盾はさらに広がった。
この盾は“仮想敵”に対する武器ともなる。
新日鉄は傘下に収めたウジミナスを通じて新高炉の建設を計画しているとされる。時期は2010年、投資額は3000億円規模になる、との見方が強まっている。ブラジルには世界の自動車メーカー各社が進出し、高級鋼板をはじめとする鉄鋼需要が急増している注目の市場となっている。
新高炉が完成すれば、粗鋼生産量は1110万トン規模まで拡大する。これまで進めてきた溶融亜鉛メッキ鋼板などの高級鋼材へのシフトを、戦後初となる海外新高炉の建設という形でいっそう加速することが可能になる。
足元の好業績が、こうした攻めの姿勢を後押しする。
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