「ニュースを斬る」

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2007年6月1日(金)

矮小化するニッポン

松岡利勝前農相の自殺で憂うこの国の皮相と末梢

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 昔、三木武吉という政治家がいた。同じ選挙区の対立候補から、「某候補は妾を3人も囲っている。こんな人間は、選良としての資格がない」と立会演説会で攻撃された時、ドラ声を上げて反論した。

 「いま“某候補”と言われた人間は、この私であります。しかし、今の発言には決定的な誤りがある。囲っている女性3人とおっしゃったが、そうではない。4人の面倒を見ているのであります」

 場内は爆笑に包まれ、女性問題は雲散霧消してしまった。

スケールの大きい政治家がいなくなった…

 三木は戦前、電鉄汚職にからみ、逮捕されたが、仲間をかばい最後まで自供しなかった。戦後、いろいろと背後関係についての噂が絶えなかったが、旧自由党と旧民主党との大合同を演出し、「55年体制」を築き上げる大立者となった。彼がいなかったら、日本の長期繁栄の基礎となった政治的な安定は実現しなかったか、相当に遅れたことだろう。

 もう1人、政治家ではないが、今日の9電力体制を作り上げ、エネルギーの安定供給を導いた人物に、「電力の鬼」と呼ばれた松永安左ェ門がいる。松永は普段から公言してやまなかった。「大病、破産、それに留置所を経験しなかった者は、大物にはなれない」。

 慶応義塾大学の学生だった頃、コレラにかかり、死線をさまよい、長じて株式や石炭への投機がたたり、すってんてんの夜逃げ生活を味わい、三木同様、電鉄汚職にかかわって留置所で検事の追及を受けた。ちなみに、この時同じ事件にからみ、一緒に留置所に入っていたのは、阪急の創始者である小林一三である。

 戦後政治の天才と言えば、田中角栄だろう。ロッキード汚職で失脚した彼については毀誉褒貶相半ばするが、日中国交回復の立役者であり、議員立法の記録保持者であり、大胆な公共事業によって都市と農村の格差を縮めた推進者であることを否定する者はいないだろう。まれにみるスケールの大きな政治家であったことは確かである。

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著者プロフィール

水木 楊(みずき・よう)

水木 楊

1937年、中国上海生まれ。自由学園最高学部卒業後、日本経済新聞社入社。ロンドン特派員、ワシントン支局長、外報部長、取締役論説主幹などをを経て、作家活動に入る。主な著書に『動乱はわが掌中にあり』『2025年日本の死』『拒税同盟』『美しい国のスパイ』『パナマ運河奪還』『人生後半戦のポートフォリオ』『爽やかなる熱情』『田中角栄』『青いあひる』『東大法学部』など。『思い邪なし―下村治と激動の昭和経済』(講談社)で高度成長期のエコノミスト群像を描く。最新刊は『…が、無くなる日』(日本電気協会新聞部)。


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