明るいニュースだ。昨年の合計特殊出生率(女性1人が生涯に産むと子供の数を推計した値)が1.32人となり、前年より一気に0.06人上昇した。この上昇に大きく寄与しているのは団塊ジュニアだ。彼ら、彼女らが生を受けたのは1970年代前半。その第2次ベビーブームが終わってから、日本の出生率は長期低落期に入っていた。
人口学の世界では出生率が1.30を下回る国を「超少子化国家」と呼ぶ。4年ぶりに超少子化から抜け出した日本。この先、少々のことで年金や医療に制度疲労を起こさないようにし、経済の成長力をより高め、労働力人口や納税者の減少による経済や社会へのマイナスの影響を緩和するためにも、今回の反転を機に出生率の上昇トレンドを確かなものにしなければならない。そのカギの1つは「お金」が握っている。
出生率2.0を回復させたフランスの15年改革
小泉前政権の5年半に、経済政策の常識は180度覆った。公共事業は毎年のように減らすことが当たり前になり、郵政事業など役人がやるのが当然だと誰もが思っていた仕事も民営化への道筋をつけた。
「小さな政府」「官から民へ」――。このかけ声が構造改革という言葉とともに定着し、役人や族議員が新規に予算を増やすことがはばかられる空気が醸成された。歳出の積み増しを求める声は、それは予算のばらまきじゃないかという「正論」にかき消されることが日常の風景になった。
少子化対策には予算が要る。昨年の出生率が2.0を上回ったフランスの例を出すまでもなく、これは否定しようのない事実だ。
経済面でも出産・育児世代を税や予算を使って国民総がかりで後押ししてきた。とりわけ子どもがいる世帯への給付が充実している。日本は、第1子が生まれた時の児童手当が1人当たり年間12万円。フランスは手当てを合算すると日本の2倍強にもなる。GDP(国内総生産)に対する少子化対策費の割合は日本の0.75%に対し3%と桁違いに高い。
高齢者向け歳出を削り、少子化対策に振り向けよ
今、フランスの少子化対策と同じことを日本でやろうとすれば、財務相が増税を求めたように年間10兆6000億円が必要になる。今の日本の少子化対策費の3倍、消費税率に換算すると3%弱分に当たる。1993年に1.66に落ち込んだフランスの出生率が、わずか15年で2.0を超えたのは、その当然の帰結である。
お金だけで出生率の回復を持続させることはできないのはその通りだろう。女性の働き方の問題、国民全体の意識の問題、幼稚園と保育所の一元化など制度改革の問題。この合わせ技が必要だ。
だが、ここではばらまき批判を受けるのを覚悟のうえで、超少子化国家という汚名を返上し続けるためにも、子供とその若い親の世代にもっと予算を使おうと提案したい。
今月4日、首相官邸で開いた経済財政諮問会議でちょっとした衝突があった。少子化対策を議題にした時のことだ。尾身幸次財務相が次のような趣旨の発言をしている。
「日本がフランス並みに(少子化対策を)やると、10兆円強が必要になる。少子化対策は待ったなしであることを考えると、今、直ちに着手しなければならない」
10兆円の根拠は前述したとおりだ。問題は「直ちに着手する」と言っている増税論にある。消費税率の引き上げによって兆円単位で必要になる少子化対策予算を賄うべきだ、と力説しているのだ。「本物のばらまき」をやれと言っているに等しい。
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