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社保庁改革、届かなかった警告

「犯人捜し」の政争で年金不安は解消しない

  • 馬場 完治

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2007年7月9日(月)

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 不祥事続きの社会保険庁の解体、年金記録漏れというずさんな仕事――。社会保険庁改革法案が強行採決で成立した後も、国民生活に直結する年金問題は7月29日の参議院選挙の大きな争点になっている。

 だが、安倍晋三首相の自民党と、小沢一郎党首の民主党が繰り広げる論戦では、「犯人捜し・責任・けじめ」が前面に出る。首相や社保庁の歴代長官、職員の賞与返納など責任の取り方と範囲が取りざたされる。その一方で、不祥事再発をどう防ぎ、年金をどう守るかの議論は置き去りにされたままだ。

 突如明るみに出た該当者不明の約5000万件の年金記録。自民が「社保庁が労働組合に支配されているから記録ミスなどの不祥事のオンパレードになる」と労組の責任論を展開すれば、民主は「社保庁全体の問題のすり替え」と反論する。

 社保庁の労組が槍玉に挙がる背景には、政治的な意味もある。社保庁と社会保険事務所の約1万1000人の職員で作る全国社会保険職員労働組合(全国社保労組、旧国費評議会)は、民主の最大の支持母体である自治労(全日本自治団体労働組合)で「最強部隊」という位置づけだからだ。出身の政治家も輩出し、100万人近い組合員数を誇る日本最大の労組は政治に大きな影響力を持つ。参院選を前に、国民生活を脅かす年金問題の責任が社保庁の労組にあると受け止められれば、自民には追い風、民主には逆風となる。

 もっとも、再発防止の議論なしでは問題は解決しない。労組批判も労組擁護も、そこから踏み出さなければ年金不安の解消にはたどり着けない。

「ぬくぬく」風土が不祥事招く

 実は、社保庁改革の議論がスタートした段階から、今日の問題を見抜き、警告していた人物がいる。2004年8月に発足した「社会保険庁の在り方に関する有識者会議」のメンバーを務めた、香川県坂出市の松浦稔明市長だ。松浦市長は、労組問題が社保庁問題の本質ととらえながらも、改革の要は職員の働かせ方にあると主張した。

 「社保庁と労組がいかなる協定を結んでいるかを、まず出していただく」

 有識者会議の初日。松浦市長は先制パンチを繰り出した。

 市長は自身を含む市職員の給与カットという大胆なリストラなどを通じて、25億円の累積赤字を抱えていた市立病院を立て直した実績を持つ。その後も職員の削減など、改革を進めた民間企業出身の市長が、最も手を焼いたのが自治労だった。

 市立病院の給食担当の臨時職員が退職する際、本来は出ないはずの退職金が支給される――。こうした覚書の存在を些細な出来事から知った。覚書=ヤミ協定こそが、組織を非効率にし、機能不全に追い込む元凶と気づいた。

 その経験があるから社保庁問題でも、まず覚書に切り込んだ。調べてみると、労組が社保庁と結んだ覚書は約100件。「45分コンピューターの作業をしたら15分休む」というものまであった。最後まで残っていた、このオンライン実施についての覚書を次の会議で指摘しようと準備していると、会議前日に「本日、破棄しました」と連絡が入る。書面を読むと、自治労が覚書を破棄することを一方的に通告する内容。社保庁内部が労組に実権を握られていた様子がうかがえた。

 「とことんやりますから」

 松浦市長は、村瀬清司長官らがいる前で、何度も繰り返した。旧国費評というより、こうした非効率が許され、ぬくぬくと育つ風土に不祥事の根っこがあると分かったからだ。

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