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思想なきエンジェル税制

利用低迷が浮き彫りにする“官製平等国家”の限界

  • 谷川 博

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2007年7月17日(火)

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創業間もない企業への投資を促す「エンジェル税制」の利用が低迷している。個人投資家が制度の適用を受けたベンチャー企業に投資すると、同じ年の株式譲渡益の一部が非課税となるなど、税制上の優遇措置を設けている。だが、経済産業省によれば、2006年度の制度利用による投資額は13億円程度で、前年度に比べて46%も減少した。投資時点の税制上のメリットが小さいことが主因と見られるが、「背景には根深い問題がある」と日本エンジェルズ・インベストメントの井浦幸雄代表は指摘する。井浦氏にエンジェル税制利用低迷の真因を聞いた。(聞き手は日経ビジネスオンライン記者=谷川博)

日本エンジェルズ・インベストメント代表  井浦幸雄氏

NBO エンジェル税制の利用が低迷しています。原因は何でしょうか。

井浦 これは非常に根深い問題です。

 直接的な原因を一言で言えば、「投資メリットが小さい」ことに尽きます。諸外国と比べると投資家の税負担が非常に大きい。投資家の利用を促すためには、制度をもっと柔軟に設計する必要があります。

 例えば英国では、投資時点で投資額の20%を税額控除しています。大まかに説明するとこういうことです。ある投資家が1000万円を投資したとします。この投資家が納めている所得税は300万円とします。この場合、投資額の20%、すなわち200万円が税額控除となりますから、投資家が払う所得税は100万円ということになります。

 英国でエンジェル税制の利用が進んでいるのは、このように投資家の税負担を大幅に軽減する措置を取っているからです。残念ながら、日本ではそこまでの優遇措置を取っていません。日本の税当局は税負担の「公平の原則」を重視し、「担税能力のある人に税を負担してもらう」という考え方も根強く持っています。

 エンジェル税制の対象者には投資余力のある比較的富裕層が多いので、日本の税当局としては「経済的ゆとりがあって担税能力のある人には少しぐらい税を多く負担してもらっても構わないのではないか、少なくとも税を軽減する必要はないのではないか」といった考え方があるのだと思います。

 結局、日本と英国の制度設計が違うのは、両国の税当局に根本的な思想の違いがあるからです。要するに、創業間もないベンチャーを「金の卵を産む鶏」に例えると、英国では鶏が育ち金の卵を産むようになってから税金を取った方が結果的に経済・社会にプラスに働くと考える。それに対し、日本では卵の段階から税金を取った方がよいと考えるわけです。

 日本の税当局も英国のような発想に転換しないと、国内でエンジェル税制が定着するのは難しいでしょう。

「足し算・引き算」の政策から脱却せよ

NBO なるほど、日本の税当局が発想を変える必要があるわけですね。

井浦 ええ。官僚には、経済を「足し算・引き算」で見るのではなく、もっとダイナミックにとらえてもらいたいのです。

 高速道路の通行料の問題を考えると分かりやすいでしょう。もしかすると、料金を非常に低額に抑えたり、あるいは思い切って無料にしたりした方が経済に与える効果は大きいのかもしれません。

 実際、神奈川県川崎市と千葉県木更津市を結ぶ東京湾横断道路の通行料を巡って、木更津のゴルフ場関係者らが「料金を3分の1に引き下げてほしい」という要望を出したという話を聞いたことがあります。ゴルフ場関係者からすれば、その方が道路の通行量が増えて、東京方面から多くの客が呼べると期待しているのでしょう。

 もっとも、「高速道路の建設には莫大な資金がかかったのだから、利用者にそれを負担してもらえ」という国の考え方も分からないではない。つまり、道路建設による支出(引き算)を通行料による収入(足し算)で補う、という発想です。しかし、だからといって高額の通行料を設定し、そのせいで道路利用が伸びず、料金収入も増えなければ、本末転倒の事態を招きかねません。

 むしろ反対に、料金を低額あるいは無料にして通行量を増やし、ヒト・モノ・カネの交流を活発にして経済を活性化すれば、それによって沿道や周辺地域で既存事業が潤ったり新規事業が誕生したりして法人税や所得税の収入が増える。結果的に全体として支出と収入がバランスするということもあり得る。ですから、高速道路を作る際には、ぜひ国にそうした“計算”をしてもらいたい。それができないのなら、「使われないものを作るな」と言いたい。

 要するに、言いたいことはこういうことです。国は目先の減収(マイナス)を恐れて、それを上回る将来の増収(プラス)機会を逃すような施策を取るべきではない――。エンジェル税制で「金の卵を産む鶏」の例を出したのも、まさしくそういうことを訴えたかったからです。

成功者や富裕層が正当に評価されない

NBO そのためには、政治が主導する必要もあるのではないでしょうか。

井浦 確かに、税当局にオーバーライズするための政治的決断が必要です。ただ現状では、政治の側にはそれだけのエネルギーがないように見えます。

NBO それはどうしてですか。

井浦 基本的には、「富裕層を優遇するような税体系はできるだけ排除しよう」という国民のコンセンサスがあるからではないでしょうか。政治の側とすれば、やはりそれを“曲げる”ことはできないのでしょう。

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