失敗を繰り返さないために生まれたはずの金融技術が不安の連鎖を招いた。震源地は米国の住宅でも、その衝撃は世界に及び、予断を許さない。新たなリスクの行方をシリーズで追う。
「もはやサブプライム問題と呼ばない方がいい。この言葉が実態を分かりにくくしている」。米国の金融関係者の間から、こんな声が出ている。
サブプライムローンは、低所得であったり、借金の延滞歴があったりする、信用力の低い消費者向けの住宅ローンのことを指す。確かに今回の金融不安の発端は、このサブプライムの焦げつきが増加したことで、一部の金融機関が資金繰り難に陥ったことだった。
しかし、現在の状況はサブプライムという言葉では、事態の大きさを語り尽くせていない。実際には、企業買収を手がけるプライベート・エクイティ・ファンドが資金調達難に陥ったり、銀行間市場における資金が逼迫したりするなど、サブプライムの枠を超えて、あらゆる金融商品に信用収縮の波が広がっている。先日はカナダで投資銀行のコベントリーなど複数の企業が、満期を迎えた資産担保CP(コマーシャルペーパー)の償還を延期した。
商品が多岐に及ぶばかりでなく、危機が伝えられる企業やファンドの所在も、米国、英国、オーストラリア、フランス、カナダなど世界各国に広がっている。証券化などの金融技術の発達は、リスクを広く薄く分散させる一方で、その所在を分かりにくくしてしまった。現在の状況は、商品も地域も、どこにリスクが潜んでいるか分からない“世界同時多発”型の金融不安を迎えていると言える。
かつての金融不安と比べると
こうなると対処の仕方が難しい。かつての金融不安の局面では、米国政府の動きは総じて早かった。1998年のロシア危機では、巨大ヘッジファンドのロングターム・キャピタル・マネジメント(LTCM)の破綻を踏まえ、米金融当局が連鎖破綻を防ぐために、数十億ドルの緊急融資を実施した。2001〜02年にエンロンやワールドコムの破綻を機に企業会計不信が広がり株価が急落した際には、情報開示を強化する米企業改革法(サーベンス・オクスリー法)を施行した。
それに比べると、今回は明確な集中治療の対象が存在しない。サブプライムのローン契約者は全米各地に散らばっており、そのローンや証券化商品を抱える金融機関、投資家は世界各国に存在する。
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