• ビジネス
  • IT
  • テクノロジー
  • 医療
  • 建設・不動産
  • TRENDY
  • WOMAN
  • ショッピング
  • 転職
  • ナショジオ
  • 日経電子版
  • 日経BP

シリーズ:孤高のアメリカニズム(1)

米単独覇権主義に翻弄される英軍イラク撤退

2007年8月29日(水)

  • TalknoteTalknote
  • チャットワークチャットワーク
  • Facebook messengerFacebook messenger
  • PocketPocket
  • YammerYammer

※ 灰色文字になっているものは会員限定機能となります

無料会員登録

close

 2003年春に米英軍がイラクに侵攻し、フセイン政権を倒して占領を開始した当初、英軍によるバスラなどイラク南部の占領は、米軍によるバグダッドなどイラク中部の占領より、ずっとうまくいっていると報じられていた。

 イラク中部の米軍は、ヘルメットをかぶった重装備で、しばしばゲリラから攻撃を受けて苦戦していたが、これと対照的に南部の英軍は、ベレー帽の軽装でバスラ街頭をパトロールし、子供たちにキャンディを配り、地元民との親交を深める姿が世界に流れた。

 しかし今や、占領の状況は米軍より英軍の方が悪くなっている。バスラにおける英軍の主な拠点は、約500人の兵士が駐屯する市街地中心部の旧フセイン政権の宮殿と、約5000人が駐屯する郊外のバスラ空港であるが、宮殿の敷地には毎日最大60発のロケットや迫撃砲がゲリラによって撃ち込まれ、英兵士は自分たちの身を守るのがやっとで、反撃やパトロールもできない。

英軍のイラク撤退で米英関係に重大な亀裂

 英軍は、占領開始後に訓練した新生イラク軍にバスラ市街地の治安維持を委譲し、近く、宮殿の陣地を引き払い、駐屯地をバスラ空港に一本化することにした。だが、イラク軍内にはゲリラの支持者が無数に入り込んでおり、英軍が郊外に撤退したらイラク軍は崩壊しそうだ。英軍が撤退した分、ゲリラが追いかけてきて、いずれバスラ空港にゲリラのロケットや迫撃砲が降り注ぐことにもなりそうだ。

 軍事関係者の間では、英軍のバスラ占領は既に失敗が確定しているという見方が強い。米政府の匿名の諜報担当者が、8月7日付のワシントンポストの記事で「英国は基本的に、既にイラク南部で失敗している」と述べている。また、英軍のリチャード・ダナット参謀総長は8月20日に「英軍は(イラクではなく)アフガニスタンに全力を注ぐべきだ」と発言し、間接的にイラク撤退を主張した。もはや英軍の課題は「撤退するか否か」ではなく「どうやって安全に撤退するか」になっている。

 しかし、こんな状態になっても英国政府は、イラクからの撤退を表明しておらず「イラク軍の養成が進んだので、バスラの宮殿をイラク軍に委譲する」とだけ発表している。その理由は、英軍がイラクから撤退すると、英国にとって最も重要な国家戦略である米国との同盟関係にひびが入りかねず、国益に大きなマイナスになるからだ。イラク撤退は、軍事的に必要でも、政治的には避けねばならない。英軍の将軍たちが撤退を求めても、ブラウン首相は了承できないだろう。

 バスラなどイラク南部は、クウェートとバグダッドをつなぐ、米軍にとって最重要の補給路の通過点である。米軍は毎日2000台のトラックで、駐留に必要な物資の9割をこのルートで運んでいる。米軍は今のところ、ハイウェイを攻撃するゲリラをなんとか抑制しているが、英軍がイラク南部から撤退したら、事態は急速に悪化するだろう。ブッシュ政権は英国に対し、あと1~2年はイラクに駐留してほしいと要請している。

 加えて米軍にとっては、英国に任せ切りだったイラク南部の治安維持を自分たちで担当せねばならず、兵力の増派が不可欠になる問題もある。既に米陸軍は疲弊している。「英国が撤退したせいで、米国のイラク統治が失敗しそうだ」という批判が米政界で噴出する懸念がある。

日本の気楽な対米従属とは違う英国の米国レバレッジ戦略

 英国にとって対米関係は、日本にとっての対米関係より重要だ。戦後の日本は、国際政治や軍事の負担を米国に任せるという「気楽さ」を利点に、受動的な対米従属を続けてきた。日本と反対に、英国が米国との同盟関係を重視するのは、能動的な動機からだ。英国は第1次世界大戦以来、米国の議会や政府、学界やジャーナリズムを誘導し、英国にとって有利な世界戦略を採らせることで、国力の何倍もの国際影響力を維持してきたのである。

コメント8件コメント/レビュー

英国のように,米国との関係でうまく政治力発揮するよう日本も見習へと言っても、基本的に無理な面があります。英国は核保有国で国連安保理事国です。対米政治力は、自分で自分を守る基本をわきまえない限り,国際政治で置いてきぼりになるのは致し方ありません。 日本は、せめて形を整えるためにも、自衛隊の参加(給油)を行っているのです。(米国は日本の憲法の制約、世論の状況など十分に理解しています)、しかしながら、核ミサイル到来のいざと言うとき我が国領海を通りすぎるなら攻撃しないなどという防衛大臣では日本抜きの取引が起きるのも当り前です。  (2007/09/07)

「ニュースを斬る」のバックナンバー

一覧

日経ビジネスオンラインのトップページへ

記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

英国のように,米国との関係でうまく政治力発揮するよう日本も見習へと言っても、基本的に無理な面があります。英国は核保有国で国連安保理事国です。対米政治力は、自分で自分を守る基本をわきまえない限り,国際政治で置いてきぼりになるのは致し方ありません。 日本は、せめて形を整えるためにも、自衛隊の参加(給油)を行っているのです。(米国は日本の憲法の制約、世論の状況など十分に理解しています)、しかしながら、核ミサイル到来のいざと言うとき我が国領海を通りすぎるなら攻撃しないなどという防衛大臣では日本抜きの取引が起きるのも当り前です。  (2007/09/07)

核保有論議など、北朝鮮や中国から一発ミサイルが実際に飛んできて日本に着弾すれば、すぐに沸き起こります。憲法改正もしかり。能動的対米従属を行っていた英国でさえ、米国に裏切られているこの期におよんで、いまだに対米従属以外に解があるのか、などと云われる方は、心のどこかで実際には飛んで来ないに違いないと思っているだけではないでしょうか。そうした自称現実論者は、悲観的な予測に基づく危機意識を「情緒的」と片付けますが、問題は危機意識の違いだけです。実際に危機が起こり、国民感情が高ぶった状態で憲法改正や核保有論議を行うことになれば、また日本人は(もちろん民主的手続きを踏んで)極端に振れるでしょう。その方がさらに危険ではないでしょうか。情けないのは、そうした茹で蛙のような日本人の思考停止です。(2007/08/30)

英国は当初、イラク戦争に参戦するのを渋っていたようだが、フォークランド戦争時にアメリカから人工衛星で収集した情報などが提供されたツケがあり、アメリカの圧力に強く逆らうこともできず、また大陸国からの距離を保つ伝統的な外交方針から独仏連合のイラク攻撃反対路線にも加担できないジレンマに陥り、しぶしぶイラク戦争に参加した形跡がある。だがBBCはこの政府の方針に依然として逆らっていたので、BBCのトップを首にしたが、その後は国策放送局と化したCNNと余り変わらないものとなってしまった感がある。先日も3人の兵士が死亡する米軍に誤爆撃攻撃があり、もう早く撤退したいという態度が見え見えだ。(2007/08/30)

ビジネストレンド

ビジネストレンド一覧

閉じる

いいねして最新記事をチェック

閉じる

日経ビジネスオンライン

広告をスキップ

名言~日経ビジネス語録

組織を正しい方向に導き、 作り変えていける人が、優れたリーダーです。

ジェニー・ダロック 米ピーター・F・ドラッカー伊藤雅俊経営大学院学長