「ニュースを斬る」

ジャパン・マネー、臆病は損か?

ハイリスク志向の米国マネーは超格差社会の産物

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2007年9月20日(木)

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 サブプライムローン(信用力の低い個人向け住宅融資)危機をめぐる議論の中で、日本の投資家と金融機関の損失が(おそらく)軽微だったことに日本人は安堵しているようだ。

 しかし同時に、世界潮流の蚊帳の外に置かれていたという見方もある。ジャパン・マネーはやはり“臆病”であり、“リスク回避型”であり、日本的投資、日本的金融モデルの限界を露呈しているのではないかという印象を抱いている方も少なくないだろう。

日系金融機関と投資家は「慎重なお客様」?

 NBonlineでも8月24日に「『損失が少ない』は誇れるのか」のタイトルで、J・W・チャイ氏が、日系金融機関の損失が今回僅少だったのは、グローバルな証券化ビジネスの“蚊帳の外”にいたことの結果だと言っている。確かにサブプライムローンの証券化ビジネスに関わって700億円余りの損失を計上した野村アメリカを除くと、日系金融機関はサブプライムローン資産を組み込んだ最上級格付け部分に投資するという証券化ビジネスの「慎重なお客様」に過ぎなかった。

 しかし、米国でも商業銀行(部門)はリスク判断に元来保守的かつ慎重である。米国の年金や生命保険などの機関投資家も同様に保守的な投資家であり、リスク分散と長期投資による運用原則に忠実だ。米国の金融ビジネスモデルの積極的なリスクテイカーとしての機能は、金融機関としてはインベストメントバンカー(部門)、投資家としてはヘッジファンド、エクイティファンド、ベンチャー・キャピタル・ファンド(これらを総称して「ファンド類」と呼ぼう)によって担われている。

 米国でもリスクに対する受容度が両者で大きく異なるのは、受け入れている資金の性質が異なるからである。商業銀行の資金は預金と自己資本である。一方、インベストメントバンクの資金は自己資本と市場調達債務であり、資本市場とファンド類の間を複雑に仲介することで大きな収益を上げている。年金や生命保険の資金は広範な大衆の積立金、保険掛け金である。年金、生命保険は長期的に市場全体と同じ程度のリターンを確保できれば普通は十分であり、ハイリスク・ハイリターンな投資にことさら傾斜する必然性がない。

 一方、ファンド類の資金は、元来は少数の富裕個人層の出資金であり、富裕であるが故にリスク受容度が高く、ハイリスク・ハイリターンが期待される。近年は年金や生命保険の資金もヘッジファンドで一部運用されることが増えているようだが、あくまでも投資の多様化によるリスク分散の手段としてファンド類が利用されているに過ぎない。

 要するに金融機関、ファンド類を含む機関投資家の金融・投資行動は、最終的な資金の出し手である家計の投資選好とそれに基づいた投資商品の設計に依存しているのだ。そうすると、日本の金融機関、機関投資家が総じてリスク判断に保守的、リスク回避的であるのは、日本の家計の投資選好を反映した結果だと言えよう。

「リスクを避けるのは日本人の文化的特性」という俗説

 では、なぜ日本の家計は“総じて”リスク回避型なのだろうか。「それは日本人の文化的特性だ」と一般にイメージされている。あるいは「日本人は農耕民族であり、欧米人は狩猟民族。その違いから生じた文化的相違だ」という説明まで持ち出される。しかし、こうした擬似社会学的説明は事実にそぐわない。

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著者プロフィール

竹中 正治(たけなか・まさはる)

竹中 正治

龍谷大学 経済学部教授

1979年東京大学経済学部卒、東京三菱銀行(現三菱東京UFJ銀行)の為替資金部次長、調査部次長などを経て、2003年3月よりワシントン駐在員事務所所長。ワシントンから米国の政治・経済の分析リポート「ワシントン情報」を発信する傍ら、National Economists Club(WDC)役員を務めるなどエコノミストとして活動。2007年1月から2009年3月まで国際通貨研究所チーフエコノミスト、2009年4月より現職。最近の著書に、『米国経済の真実』(共著編、東洋経済新報社、2002年)、『素人だから勝てる 外貨投資の秘訣』(扶桑社、2006年11月)、『ラーメン屋vs.マクドナルド』(新潮新書、2008年)、『今こそ知りたい資産運用のセオリー まず投資の魔物を退治しよう』(光文社、2008年)、「なぜ人は市場に踊らされるのか?」(日本経済新聞出版社、2010年)など。



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