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「和の政治家」の限界

混沌と変化の時代には豪腕・強靭なリーダーシップが必要

  • 谷川 博

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2007年9月25日(火)

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自民党総裁に福田康夫氏が選ばれた。一言で言えば「和の政治家」。ぎすぎすした空気の流れる自民党に“癒やし”をもたらすのか。だが、混沌と変化の時代には、明確な国家ビジョンを示し、強引なほどの実行力を発揮する「力の政治家」が求められる。福田氏にはそれが欠けている。新政権の先行きは楽観できないと、麗澤大学国際経済学部の松本健一教授は指摘する。(聞き手は工藤 泰志=言論NPO代表、編集・文責は谷川 博=日経ビジネス オンライン記者)

 

●言論NPOのウェブサイトで、インタビューの模様を動画で公開しています。

麗澤大学国際経済学部の松本健一教授

工藤 自民党では福田新総裁が誕生しました。ズバリ、福田さんという政治家をどのように評価されますか。

松本 福田さんは、いわゆる“調整型”の政治家ですね。私も福田さんの地元と同じ群馬県の出身ですから、よく分かるんです。群馬県の政治家には大別すれば、福田さんの父親でもある福田赳夫元首相と中曽根康弘元首相に代表される対照的な2つのタイプがあります。

 中曽根さんは明らかに理念型の政治家です。「戦後政治の総決算」を政治理念に掲げ、政界に白刃を振りかざして斬り込むようなところがあった。そういう意味では、「美しい国」「戦後レジームからの脱却」を唱えた安倍(晋三)さんと通じるところがあります。中曽根さんが安倍さんをかわいがったのも無理はありません。

 ところが、福田さんはそうではない。「時勢に合わせよう」と考えるタイプの政治家です。これまでの福田さんの言動などを見ていると、彼には明確な政治思想があるのかどうかさえ分からない。彼の言動から察せられるのは、ただ「和をもって社会を運営する」ということだけです。

政治信条は「和をもって尊しとなす」

 福田家は代々、上州(群馬県)で大地主(大農家)を務めてきた家系です。だから、福田家の人たちは元来、農民ら大勢の人たちを統率し、対立する利害を調整して、皆に合うような状態を作っていくことに長けているのです。長老政治と言ってもいい。福田さんが和を重視するのも、そういった彼の家系に関係があるのかもしれません。

 今回の総裁就任までの経緯にも、そんな福田さんらしさが表れています。自民党内には「安倍さんがこんな辞め方をするなら、福田さんがポスト小泉(純一郎・元首相)を決める前回の総裁選に出馬していればよかった」といった声もあります。でも、福田さんがそうしなかったのは当然なんです。

 なぜなら、福田さんは熾烈な権力闘争を展開して、その戦いに勝ち残るといったタイプの政治家ではないからです。むしろ「あまり波風を立たせたくない」と考えるタイプの政治家です。だから、もし福田さんに政治思想があるとするならば、それは「和をもって尊しとなす」ということになるのでしょう。

工藤 確かに、今の自民党内には“癒やし”を求める傾向が強いようです。和の政治家・福田康夫が党内で支持を集めるのは必然かもしれませんね。

松本 そう。自民党内は一度、分裂しましたよね。小泉さんが自分と対立する人たちを「抵抗勢力」と呼んで、党内を「敵と味方」に峻別してしまった。そして、反対派を「郵政選挙」で潰したり、選挙時に除名したりした。

 安倍さんは小泉的手法に批判的でした。安倍さんの側近と言われた城内(実)さんが郵政民営化に反対したことで、郵政選挙では彼の選挙区に片山さつきさんという“刺客”を送り込まれ、落選してしまった。そんなこともあって、安倍さんは本音では小泉的手法を良くないと思っていた。

 現に、安倍さんは総裁の時に衛藤(晟一)さんら大勢の“造反組”を復党させたでしょう。だから、安倍さんは「小泉政権を引き継ぐ」という建前で総裁に就いたのだけれども、実際に彼が取り組んだことは、参院選で大敗する原因となった小泉改革の影の部分の修正でした。この安倍路線を引き継ごうとしたのが、今回の総裁選で福田さんと争った麻生(太郎)さんでした。

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