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シリーズ:日米関係は大丈夫か?(3)

安倍前首相の弱さは、オール日本人の弱さではないのか

  • 冷泉 彰彦

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2007年9月27日(木)

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 ここのところの日米関係は、お互いの利害を丁々発止やり合って落とし所を探すといったダイナミズムに欠ける印象がある。

 特措法(テロ対策特別措置法)の延長問題などがよい例だ。日米双方の姿勢が脆弱な政権党の国内政治に拘束されている中で、「あるべき姿」を共に考え真剣に双方の関係を強化するような建設的なディスカッションは見えない。民間の経済交流にしても、日本での金融工学や投資銀行のノウハウが確立しない中で規制緩和ばかりが先行し、結果的に米系金融機関のビジネスチャンスばかりが拡大している印象がある。

 そんな中、政治でも経済でも個別の案件では、どうしても米国に押され気味というのが実情だろう。個別の交渉としては米国に押しまくられ「ご説ごもっとも」とやり込められながらも、「日本の実情を考えますと、そう簡単にはいきません」と自分の国内事情をエクスキューズに、条件交渉や先送りを行う、そんな交渉パターンが多く見られるのはなぜなのだろう。それは、日本側に相手を知り尽くした「タフ・ネゴシエーター」が不在だからではないだろうか。

米国トップ大学に日本人が来ない

 例えば、GHQ(連合国軍総司令部)を相手に是々非々の交渉を繰り広げ、日本の再独立への条件闘争を戦い抜いた吉田茂、白洲次郎のコンビなどは、英国で受けた教育をバックグラウンドとしながら、対等の交渉術を駆使して危機を乗り越えている。国際化が叫ばれる現在の日本だが、そのような強靱な国際交渉力を持った人材は一向に輩出する兆しがない。その一因に、留学政策があるのではないだろうか。

 私の住むニュージャージー州中部にあるプリンストン大学は、米国の各種大学ランキングで連続してトップの評価を得るなど、アイビーリーグの名門として多くの人材を輩出している。ところが、学部学生に占める日本人の割合は極端に低い。毎年1200人の新入生が入学する中で数人というのがいいところで、入学者がゼロの学年もあるという。

 この大学は留学生が少ないのかというと、そうではない。中国や韓国、ロシアなどからの学生は年々増加しており、大学としては学生の出身国や人種構成などをさらに多様化していく計画を持っているのだという。

 では、どうして日本人学生が来ないのか。プリンストンの学風が親日的でないからだろうか。そんなことはない。東洋学部における日本研究は、1960年代初頭に文芸評論家の江藤淳が客員として教壇に立った頃には、坂本龍馬研究で名高いマリウス・ジャンセン教授などを中心に、すでに組織が出来上がっていた。

 その東洋学部では、近年では作家の村上春樹氏や大江健三郎氏が客員として滞在したし、昨年度は書家の柿沼康二氏が東洋学部の客員として1年間在籍し、大作の揮毫や学生への丁寧な指導などを通じて強烈な印象を残した。

 学部の陣容も、言語学の牧野成一教授、日本史のデビッド・ハウエル教授、日本文学のリチャード・オカダ教授など錚々たる顔ぶれが揃い、多くの大学院生が日本文化の研究に打ち込んでいる。大学としては日本への視線は「熱い」ものを持っているのだ。

留学生向け英語コースがない大学は敬遠される

 にもかかわらず、日本人留学生の数が微々たるものであるのには理由がある。プリンストンは、非英語圏からの留学生にも国内の標準テストSAT(Scholastic Assessment Test、大学進学適性試験)の成績を要求するのだ。外国人向けの英語力判定テストTOEFL(Test of English as a Foreign Language)の点数では入学を認めないのである。

 また学内にESL(外国人向けの英会話コース)を設置していない。日本人には、この点がネックとなる。まずTOEFLを勉強して米国に渡り、英語を勉強しながら徐々に英語の授業を取ってゆくというスタイルが全く通用しないのだ。

 似たような事情は名門の私立高校にもある。プリンストン大学にほど近い田園地帯に美しいキャンパスを持つローレンスビル・スクールといえば、ウォルト・ディズニーのマイケル・アイズナー前会長をはじめとする財界人、知識人を輩出してきた「プレップスクール」の代表格だ。この学校はそれなりに規模が大きく、1学年300人近くの生徒が在籍し、大学の単位を先取りしたり、ディスカッション形式の講義で生徒を鍛えるなど、教育内容には定評がある。

コメント48件コメント/レビュー

 筆者に対して肯定的でないコメントをされている方に対する反コメントが強烈に感情的で笑ってしまいますね。 >英語を学ぶと米国かぶれになる、日本人の魂を失うみたいなことを言う人がいまだにいることが信じられない。 誰もそんなこと言ってないと思いますけど。肯定的でないコメントをされている人たちは主に、1. 英語だけ学んだって交渉力がつくわけではないのでは2. 仮に英語を学ぶ必要性があるとしても、何でアメリカの大学でなきゃいけないの3. 上の1・2・の背景になることだが、論理的思考力など他に学ぶことがあるのでは ということを仰っていると思いますけど。こちらのほうがうなずけます。 逆にこれに対して反発をされる方のほうに、何か強い英語(米語)コンプレックスを感じてしまいます。*変な例ですが、北朝鮮などの外交官は充分交渉力を発揮したように見えるのですが、彼らは米国の大学で教育を受け、米国的価値観を持っているのでしょうか?(2007/10/01)

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いただいたコメント

 筆者に対して肯定的でないコメントをされている方に対する反コメントが強烈に感情的で笑ってしまいますね。 >英語を学ぶと米国かぶれになる、日本人の魂を失うみたいなことを言う人がいまだにいることが信じられない。 誰もそんなこと言ってないと思いますけど。肯定的でないコメントをされている人たちは主に、1. 英語だけ学んだって交渉力がつくわけではないのでは2. 仮に英語を学ぶ必要性があるとしても、何でアメリカの大学でなきゃいけないの3. 上の1・2・の背景になることだが、論理的思考力など他に学ぶことがあるのでは ということを仰っていると思いますけど。こちらのほうがうなずけます。 逆にこれに対して反発をされる方のほうに、何か強い英語(米語)コンプレックスを感じてしまいます。*変な例ですが、北朝鮮などの外交官は充分交渉力を発揮したように見えるのですが、彼らは米国の大学で教育を受け、米国的価値観を持っているのでしょうか?(2007/10/01)

この記事について、ぜひ冷泉氏に続編をお願いしたい。また、在米、在欧、在亜、あるいは、中・韓系の学生との比較など、何らかの客観(数値)データを伴う記事を、NBOnline でも日経本体でもよろしいが、編集部でお考えいただけないか。安倍氏の「弱さ」のレベルに留まらない、世界の中での日本をどう考えるか、という問題と、個人としての自分を世界の中でどう発現させていくか、という問題が絡んでいると思う。もちろん、高い意識というべきものを涵養できない日本の教育や社会に潜む問題もあるだろう。(2007/10/01)

アメリカの教育がいいというのは笑い話のような話です。超エリート教育は充実しているでしょうけれど、アメリカの国民の半分は貧困、半分以上は肥満、という現状を考えると、超優秀な人材はいなくても、国民全体の水準がそれなに高い日本の方が良いような・・・やはりそれよりも日本国内の教育の徹底的なレベルアップと国際化の方が重要なのではないでしょうか。そもそも母語で博士課程まで勉強できるというのは誇りにするべきことです。当たり前のことのようですが、多くの非欧米諸国では実現できていないことですし、明治維新後に日本のエリート層が猛烈な勢いで日本語に訳し、全て日本語で教育ができるように努力した賜物です。そのような立派な先人がいたにもかかわらず、今日本人は腑抜けになってしまったのは、アメリカかぶれになってしまったからではないでしょうか。アメリカ留学とか、外に頼らず、自分たちで一度じっと考えなくてはならないのだと思います。そういう私も海外で修士課程に行ったひとりですが、たまたま私の通っていた日本の大学の学部時代の教育が素晴らしかったので、殺人的だといわれるコースワークもディスカッションもすんなりとこなせましたし、ネイティブスピーカーより良い成績を修士号と取りました。日本の大学でもちゃんと教育はできるんです。日本で素晴らしい人材を育てて、アメリカを含めた海外の人々と堂々と渡り合えることができたらそれが一番良いですよね。(2007/10/01)

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