• BPnet
  • ビジネス
  • IT
  • テクノロジー
  • 医療
  • 建設・不動産
  • TRENDY
  • WOMAN
  • ショッピング
  • 転職
  • ナショジオ
  • 日経電子版

シリーズ:孤高のアメリカニズム(2)

揺らぐドル一極体制、地域統合通貨論がアジアでも加速?

2007年9月28日(金)

  • TalknoteTalknote
  • チャットワークチャットワーク
  • Facebook messengerFacebook messenger
  • PocketPocket
  • YammerYammer

※ 灰色文字になっているものは会員限定機能となります

無料会員登録

close

 10月末に任期の切れる国際通貨基金(IMF)のロドリコ・ラト専務理事の後任に、ロシア政府が独自候補を立て、欧州連合(EU)が推している候補に対抗する姿勢を見せている。

 EUは、次期専務理事としてフランスの元財務相のドミニク・ストロスカーンを立て、米国もこの候補を支持している。これに対しロシアは8月末、チェコのヨゼフ・トショフスキ元首相(前中央銀行総裁)を対立候補として立てた。

【編集部注:IMF理事会は9月28日、ストロスカーン氏を次期専務理事として選出した。11月1日に正式就任。任期は5年】

ブレトンウッズ体制は盤石にあらず

 IMFの専務理事職は、これまで歴代、西欧諸国が話し合って選出してきた。国際通貨体制を管理するIMFと、発展途上国向けの経済支援を行う世界銀行は、第2次大戦後の世界の通貨・金融を運営する双子の機関として1945年に設立され「ブレトンウッズ体制」と呼ばれるが、この体制には、世銀の総裁を米国が決め、IMFの専務理事を西欧(現EU)が決めることが暗黙の合意事項として含まれており、今日に至るまで、この人事原則は守られてきた。

 つまりブレトンウッズ体制とは、欧米中心の国際金融体制なのであるが、ロシア政府がIMF専務理事に独自候補を立てたことは、この欧米中心体制を崩壊させようとする動きであることを意味する。

 世界の発展途上国の多くは近年、戦後の欧米中心の金融体制への反発を強めている。90年代後半には、債務を抱える中南米や、97年のアジア通貨危機で経済破綻した東南アジア諸国などに対し、IMFは公共部門の民営化によって政府の財政支出を切り詰めて債務を返済させる「ワシントン・コンセンサス」と呼ばれる政策を強要して大失敗し、世界的に途上国の怒りを買った。

 ここ数年は、米英がテロ戦争やイラク占領の失敗で、イスラム世界の怒りを煽る状況を作っている。「人権擁護」や「民主化」を名目として、反米的な国々に対して軍事行動を含む介入行為を行う欧米のやり方に対する途上国からの反発は強まる一方。IMFや世銀が途上国に求める経済改革や民主化も、途上国のためを考えた政策ではなく、欧米中心の世界体制を維持するための詭弁なのだという批判的な見方が、世界的に広がった。

世銀からIMFに飛び火する欧米批判

 今年6月には、ポール・ウォルフォウィッツ世銀総裁(独身)が、同じ世銀に勤めていた自分の恋人に、高すぎる給料や地位を与えていたとされるスキャンダルで辞めた。この騒動では、途上国勢がウォルフォウィッツの辞任を強く求めた。

 ウォルフォウィッツは、世銀総裁になる前のイラク侵攻前後、ブッシュ政権で国防副長官を務め、イラク侵攻に反対する米政府内の穏健派を押し切って侵攻を実現した「新保守主義(ネオコン)」の強硬派であり、このことが途上国側の結束した怒りの理由となった。

 途上国側からは、ウォルフォウィッツの辞任にとどまらず、米国が歴代の世銀総裁を決める暗黙の決まりを破棄すべきだという主張も出た。だが、それは世銀理事会の総意とはならず、ブッシュ政権が指名したロバート・ゼーリック(前国務副長官、ウォルフォウィッツよりは現実派)が、後任総裁に選出された。

 今回のIMF専務理事選挙でのロシアの動きは、今春の世銀における「欧米対途上国」の対立が、IMFに飛び火したものである。ロシアは、途上国の代表を自認しつつ、欧米中心のブレトンウッズ体制の打破を目指している。こうした途上国の反欧米感情に立脚するロシアの戦略は、パレスチナ問題やイランの核開発疑惑などでも見られる。

 ロシアがチェコの元首相をIMF専務理事に推挙したのに、当のチェコ政府は、EUが推すフランス元蔵相を支持すると表明した。チェコはEUに加盟したばかりで、独仏などEUの古株の大国から批判されたくないと考えたのだろう。このことからは、欧米の側も、まだかなりの影響力を持っていることがうかがえる。次期専務理事は、9月中に決定するだろうと報じられている。

FRBとの連動利下げを見送る国々が続出

 国際金融における米国の影響力が低下していることは、IMFの人事のような政治的な面だけでなく、実体経済の面にも表れている。米国の連邦準備理事会(FRB)は9月18日に利下げを決めた。だが、自国通貨リヤルをドルに連動(ペッグ)させている中東のサウジアラビア政府は、FRBに連動して利下げを行わなかった。

コメント3件コメント/レビュー

ユーロ圏の繁栄は日本から見る限り大変にうらやましい。が、ユーロの場合は先行して国と国とに冷戦下での経済的・軍事的同盟の長い助走期間があり、通貨統合を可能にする素地があったと思う、基本的にはかつてキリスト教を信じた宗教共通項もあった。国家間の経済格差も知れている。それでも通貨統合は世界から当初は懐疑的に見られたし、軌道に乗るまでは何度も危機にも見舞われた。アジアの統一通貨は実現すれば戦略上重要な一手になることは間違いないが、文化も宗教も違い、共通項も基本的な信頼関係もほとんど無いアジアに、現時点で通貨統合の成功の目があるとは思えない・・。当面は自国通貨とユーロとドルをバランスよく保有するしかないだろうと思う。(2007/09/28)

「ニュースを斬る」のバックナンバー

一覧

日経ビジネスオンラインのトップページへ

記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

ユーロ圏の繁栄は日本から見る限り大変にうらやましい。が、ユーロの場合は先行して国と国とに冷戦下での経済的・軍事的同盟の長い助走期間があり、通貨統合を可能にする素地があったと思う、基本的にはかつてキリスト教を信じた宗教共通項もあった。国家間の経済格差も知れている。それでも通貨統合は世界から当初は懐疑的に見られたし、軌道に乗るまでは何度も危機にも見舞われた。アジアの統一通貨は実現すれば戦略上重要な一手になることは間違いないが、文化も宗教も違い、共通項も基本的な信頼関係もほとんど無いアジアに、現時点で通貨統合の成功の目があるとは思えない・・。当面は自国通貨とユーロとドルをバランスよく保有するしかないだろうと思う。(2007/09/28)

 プロの文筆家が書いているはずなのに、自分の情念先にありきで現実をそれにあわせて解釈するような文章が多すぎるので、現実先にありきで、それを読み解いていくというこのような文章が日経のweb内でももっと増えることを望みます(尤もそれは日経に限ったことではなく、小説読解=日本語教育としてきた体制なので、非常に難しいのかもしれないですが)(2007/09/28)

田中宇氏の論文は、一般の論者と常に視点が異なる。読んだ直後は「?」と感じるが何ヶ月後、また何年か後「はた」と膝を打つ事が多い。他の人とは全く異なる広範な情報分析によるものだろう。私は極めて貴重な注目すべき言論人である。今後も独自スタンスの言論を展開していただきたい。                仙台貧乏くじ爺(2007/09/28)

ビジネストレンド

ビジネストレンド一覧

閉じる

いいねして最新記事をチェック

閉じる

日経ビジネスオンライン

広告をスキップ

名言~日経ビジネス語録

お客様が低価格に慣れてきている。

片岡 優 ジェットスター・ジャパン社長