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証券優遇税制は投資家優遇にあらず

金融所得の一体課税こそが投資家の力を高める

  • 大豆生田 崇志

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2007年11月20日(火)

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個人投資家の負担軽減と株価のテコ入れを目的に導入された証券優遇税制が来年度までに廃止される予定だ。これに対し、金融庁や自民党財務金融部会は、優遇税制の継続・恒久化を要望している。しかし、中央大学法科大学院の森信茂樹教授は、優遇税制を廃止して金融所得にかかる税率や課税方法を揃える金融課税一体化こそが投資家のリスクテーク能力を高めると主張。銀行、証券業界の関係者を交えた私的研究会の報告書を公表した。(聞き手は、日経ビジネス オンライン記者=大豆生田 崇志)

中央大学法科大学院の森信茂樹教授

中央大学法科大学院の森信茂樹教授

NBO 政府税制調査会は11月20日に答申をまとめ、株式・投資信託の譲渡益にかかる税率10%の優遇税制を2008年12月末に、配当課税も2009年3月末に、いずれも本則の20%に戻す方針です。しかし金融庁や自民党財務金融部会などは優遇税制の継続・恒久化を要望しています。一方で、金融所得にかかる税率や課税方法を揃えるという金融課税一体化に向けた議論が進んでいるようですね。

森信 金融所得の一体課税は、投資家のリスクテーク能力を高めるもので、もはや世界的な流れです。現行の金融所得課税には問題点もありますので、税制のゆがみが経済に与える悪影響をなくすために、日本も急いで検討を始める必要があります。

NBO ただ、金融庁や証券業界には優遇税制の継続を求める意見が強く、日本証券業協会などは一体課税が実現するまで優遇税制の継続を求めています。米サブプライムローン(信用度の低い借り手向け住宅融資)による株価下落への配慮を求める意見も根強いようです。証券優遇税制が「金持ち優遇」だという批判に対しても、軽減税率によって株式・投信の保有比率が増えているのは年収400万~500万円の中間所得層だと反論しています。

森信 株式を保有するのが高所得者に偏っているのは統計上明らかなことです。証券業界は、中小証券会社などの突き上げを受けて、とにかく軽減税率10%を延長してくれという主張になるのでしょう。ただ、優遇税制が恒久税制になることはあり得ません。軽減税率の1年間延長が決まった昨年とは、今や雰囲気が違います。

 論点は、「金持ち優遇」かどうかという公平さだけの問題ではありません。税制の効率という別の観点があるのです。公平さばかりを重視して所得の再分配を進めると、たくさん稼ごうとするインセンティブがなくなってしまいます。しかも今や瞬時に世界中に資金移動が可能なので、簡単にお金は海外に逃げてしまいます。とりわけ足の速い金融所得は、効率的な税制を考えていかざるを得ないのです。

 私が座長を務めた金融税制研究会では、銀行と証券業界関係者を交えて議論し、我が国も金融所得課税の一体化を急ぐ必要があるという報告書「金融所得一体課税 その位置づけと導入にあたっての課題」を10月にまとめました。ジャパン・タックス・インスティチュートのサイトで入手できます。この報告書の方向で議論が進む機運が出てきています。

現行税制は年金受給者を優遇

NBO 報告書では、現行の優遇税制はいくつか問題点があると指摘していますね。

森信 現行の金融所得課税の問題点として、例えば年金受給者である個人投資家と、若い投資家を比べると、年金受給者だけが優遇されるケースがあります。

 なぜかというと、現行の税制では所得は10分類に分けられ、公的年金や外国為替証拠金取引、外貨預金の為替差損益などは同じ雑所得とされるからです。同じ所得分類なので、年金受給者は為替差損が生じると、年金と損益通算が可能で課税額が減らせるのです。実際に、その仕組みを利用した金融商品が登場しています。年金受給者でなければ損益通算できないというのは不平等ではないでしょうか。いわば現行税制は、投資家間で中立ではなく、ゆがんでいるのです。

 同じように、株式オプションも雑所得なので、株式の売買損益とは相殺できません。あらゆる所得を加算して費用を差し引き、決められた税率をかけて税額を求める総合課税で、所得の高い人ほど税率が高くなります。

 雑所得の中には、3つのものが混じっています。まず1つは公的年金、それから2つ目が金融、最後のカテゴリーは本当に雑多なものです。例えば、ちょっと人にお金を貸して利子をもらえば雑所得です。

 一方で株式の売却益や、預貯金、投資信託の収益分配金などの貯蓄や投資による所得は、一つひとつの所得に対して個別に税金を支払う分離課税です。同じ金融所得に対する課税方法がまちまちで複雑なのです。

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