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“ミニハゲタカ”が巨象をついばむ?

対岸の金融危機、個人投資家に千載一遇のチャンス来る

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2007年12月10日(月)

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 米国の住宅不況とサブプライムローン(信用力の低い個人向け住宅融資)問題で、経済ビジネス雑誌の表紙に「危機」や「崩壊」の大見出しが躍っている。かつて日本の金融危機で「ゼネコン崩壊」やら「銀行危機」の大見出しが出回った頃を思い出す。

 しかし、金融危機の局面は投資家にとっては優良な資産を安く買える千載一遇のチャンスでもある。実際、その当時に大手銀行や大手ゼネコンの株式を買っていたら、その後の価格回復でどれほど儲かったことだろう。

 1998年から2003年の金融危機と不良債権処理の時期に、欧米の「ハゲタカファンド」に日本の資産を安く買い叩かれたと恨む声をずいぶんと耳にした。ならば今の局面は日本の投資家や金融機関にとって、やり返す絶好の機会ではなかろうか。

なぜ日本から“ハゲタカ”は飛び立たないのか?

 彼らが投げ売っている資産を安値で買うチャンスだ。もちろん日本の金融機関、投資家も一緒に大損しているならば、そういう余力はないだろう。だが、日本の金融機関もサブプライム住宅ローン資産を含んだ証券化商品への投資などで損失を出しているのは確かだが、損失は全部合計しても数千億円の規模に過ぎない。欧米の主要金融機関の現在までの総計7兆円以上(まだ増える)に比べればかすり傷でしかない。

 ところが、巨大損失で株価が急落し、CEO(最高経営責任者)が引責辞任したシティグループに75億ドル(8250億円)、発行済み総株式の4.9%に当たる大口出資(正確には普通株への転換条項付き出資証券の購入)を行ったのはアブダビ投資庁だった。

 日本の家計金融資産は1990年の約1000兆円から現在では1555兆円に増え、国別規模では米国に次ぐ大きさだ。その多くは日本の金融機関、機関投資家に預けられている。にもかかわらず、こうした日系機関の大胆で戦略的な投資活動が感じられないのはどうしたことだろう。日本の家計貯蓄は例えるならば「眠れる巨人」のようである。山を動かし、川の流れも変える力があるのに覚醒していない。

 「ジャパンマネー、臆病は損か?」(2007年9月20日)で書いたように、富がひとつまみの超富裕層に一極集中している米国に比べると、日本の富の分布格差は相対的に小さい。その結果日本は「小金持ち父さん」ばかりが多くなり、ジャパンマネーのリスクテークの許容度は小さくなる。そうした資金の受け皿になっている金融機関、機関投資家も米国のエクイティファンドやヘッジファンドのような投資行動をしないのは、ある意味では自然な結果だと述べた。

 しかし、私の真意はこのような日本の現状を解釈、追認して終わることではない。日本にもリスクテークマネーが必要なのだ。まずその点から考えてみよう。

外資の行動を責めるのは筋違いだった

 大型倒産などが連続する金融・経済の危機的状況は10年か20年に1度ぐらいは起きるものだ。そのような時には破綻した企業資産を引き受けて、不良資産を処分し、生かせる部分を再生させる担い手が、現代の経済システムには不可欠である。

 1980年代までの日本ではそうした機能は多くの場合メーンバンクである大手銀行が担っていた。メーンバンクは破綻企業の資産を担保に下位の債権者の債権をある程度肩代わりし、事業をリストラ・再編して資金を回収した。大きな損失が出た場合には、自らが長期に保有している株式の含み益を計上してしのいだ。メーンバンクのこうした慣行的な機能が、損失と信用破綻の連鎖が広がるのを防ぐ働きをしていたと言える。

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著者プロフィール

竹中 正治(たけなか・まさはる)

竹中 正治

龍谷大学 経済学部教授

1979年東京大学経済学部卒、東京三菱銀行(現三菱東京UFJ銀行)の為替資金部次長、調査部次長などを経て、2003年3月よりワシントン駐在員事務所所長。ワシントンから米国の政治・経済の分析リポート「ワシントン情報」を発信する傍ら、National Economists Club(WDC)役員を務めるなどエコノミストとして活動。2007年1月から2009年3月まで国際通貨研究所チーフエコノミスト、2009年4月より現職。最近の著書に、『米国経済の真実』(共著編、東洋経済新報社、2002年)、『素人だから勝てる 外貨投資の秘訣』(扶桑社、2006年11月)、『ラーメン屋vs.マクドナルド』(新潮新書、2008年)、『今こそ知りたい資産運用のセオリー まず投資の魔物を退治しよう』(光文社、2008年)、「なぜ人は市場に踊らされるのか?」(日本経済新聞出版社、2010年)など。



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