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2008年を斬る:本当の地方再生とは?

官が頑張れば頑張るほど地方はダメになっていく

  • 谷川 博

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2008年1月7日(月)

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地方交付税の増額、都市の法人事業税の地方への再配分など、政府は地域格差是正のための地方自治体への財政支援を矢継ぎ早に打ち出した。衆議院解散・総選挙に向けた福田康夫政権の選挙対策の色彩が濃く、かつてのバラマキ政策の復活を懸念する声もある。「改革派知事」で鳴らした前鳥取県知事の片山善博・慶応義塾大学大学院教授は、格差是正のための地方再生では「官は頑張るな」と指摘する。その真意を聞いた。(聞き手は、日経ビジネス オンライン記者=谷川 博)

慶応義塾大学大学院教授の片山善博氏

NBO 今年も地域格差の是正が大きな政策課題となります。自治省(現総務省)職員から鳥取県知事に転身し、2007年4月まで2期8年間、知事を務めた片山さんから見て、地域格差是正のためにどんな政策が必要だと思いますか。

片山 はっきり言って、地方自治体には「休みなさい」と言いたいですね。自治体はもう頑張らずに、しばらくは“癒しの期間”に充てた方がいい。国もそういう頑張らない自治体を応援するような政策に転換した方がよいと思います。

NBO いったい、どういうことですか。

片山 これまでも「霞が関(=中央官庁)」は地方対策をいろいろ考えてきたんです。そして、自治体もそれに乗って頑張ってきた。で、結果はどうですか。いくらやっても効果は出ない。逆に、地方はますます疲弊するばかりです。

 結局、自治体が何をやってもダメでなんですよ。これまでのように漫然と政府の言う通りのことをやっているようでは。

 霞が関の地方対策というのは、「地域振興のためにお金を使って、事業をやる自治体を政府が応援しましょう」という発想です。つまり、政府の言う通りに道路を作ったり“ハコもの”を作ったり、アレコレやった自治体には政府が交付税増額などのご褒美を上げましょうと。こんな発想ではまったくダメなんです。これまでの経緯を見ても、そのことは明らかでしょう。

 だいたい霞が関の人たちが本当に考えていることは自分たちの役所の権限を拡大することばかりです。今回だって「格差是正、格差是正」と言いながら、本音は新規政策をネタにして自分たちの予算をいかに多く取るかということにある。そんな霞が関の政策に自治体が食いついたって、うまくいくはずがありません。

格差是正策を打てば打つほど地方財政は破綻に近づく

 自治体が抱える膨大な借金はまさにそうやって作られたのです。

 政府はバブル崩壊後に大規模な景気対策を毎年やりましたよね。その際、補正予算で追加した公共事業の多くは、実は自治体にやらせたんです。自治体はその財源を地方債で賄ったために、ここにきて当時の借金が自治体財政を大きく圧迫するようになったのです。

 では、なぜ自治体はそんな借金をしてまで公共事業に取り組んだのか。

 理由は、政府が自治体に公共事業をやらせるために「地方債の償還財源はすべて後年度に地方交付税を上乗せして補填する」と言ったからです。自治体にしてみれば、自分の懐がさほど痛みませんから、政府の言う通りに地方債をバンバン発行して大量のハード事業をやってしまったのです。

 ところが、財政再建を掲げる小泉(純一郎)政権の「三位一体改革」で地方に配分する交付税の総額が大幅に減らされてしまった。そのため、かねて自治体が当てにしてきた交付税の上乗せは実現されませんでした。だから今、多くの自治体が借金を返すのにヒーヒー言っているわけです。

 自治体にしてみれば、「政府にだまされた」ということになる。

 要するに、政府の言う通り頑張ってきた自治体がここにきて苦しんでいるわけです。だから、もう自治体は頑張らない方がいい。政府の“甘言”に乗って、かつての公共事業のように要らないことをしてはいけない。

「覚えておけ」と農水省の捨て台詞

 現に、私が鳥取県知事をしていた頃に、こんなことがありました。

 先ほどの政府の補正予算による景気対策で、農林水産省は「農道を作れ、漁港を作れ」と県に盛んに勧めるわけです。我々が「必要なものは当初予算で手当てをしたから」と断ると、農水省は何と言ったと思いますか。「覚えておけ」ですよ。そして実際、翌年度の農水省からのお金は減らされてしまいました。

 農水省は結局、鳥取県に勧めた農道や漁港の整備費を他県に回したんです。彼らの念頭にあったのは鳥取県の農家や漁民に必要な農道や漁港を作ることではなく、自分たちの予算を消化する(使い切る)ことにあったわけです。

 だから、もういい加減、政府は「景気対策だ、地域振興だ」と言って、自らの権限を拡大するための無駄な公共事業をやめなければいけないのです。

コメント31件コメント/レビュー

現在の日本の官僚機構こそが、日本閉塞状況を生み出している、根本的原因だというのが、一般的な見方だろう。そして、いうまでもなくそのとおりだと思う。ではこの状況を打開するには、具体的打開策としてどういうようにすればいいのか?誰かアイデアを持つ人がおられれば、ぜひお聞きしたいものです。(2008/01/12)

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いただいたコメント

現在の日本の官僚機構こそが、日本閉塞状況を生み出している、根本的原因だというのが、一般的な見方だろう。そして、いうまでもなくそのとおりだと思う。ではこの状況を打開するには、具体的打開策としてどういうようにすればいいのか?誰かアイデアを持つ人がおられれば、ぜひお聞きしたいものです。(2008/01/12)

片山さんの意見は私が前から思っていたことで全く賛同します。今後、地方分権など推進する時に心配なのは今までのような地方自治のやり方では出来ない事。中央から愛郷心がある指導者が出身地方に戻りその地方にあった政策を立ち上げねば駄目と思う。中央から金をばら撒いてもらい都会のまねをしようとする方に退いてもらい愛郷心のある方にリーターシップを取ってもらう外は無いと考える。農業においてもしかり。後継者問題も身内の策がないためこうなっている。米価が安くなった等と寝ぼけたメディアの報道で悪いのは自由化だとしている農家とその対策を悪用する農水省である。(2008/01/09)

自覚しなければならないのは、一番の責任は無知な国民にあることではないのか。どうも、政治家や役人がすべて悪いと責任転換しているだけで、自分たちが悪いと自覚している人間が少なすぎると思う。批判や批評ばかりをし、知る努力もしないで世の中がよくなるわけが無い。マスコミの記事も悪いことばかりで、もう少し客観的に判断できるような「記事」を多く記載してほしい。自分たちの生活は自分たちで守る、そういった覚悟が足りないと思う。(2008/01/08)

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三品 和広 神戸大学教授