• BPnet
  • ビジネス
  • IT
  • テクノロジー
  • 医療
  • 建設・不動産
  • TRENDY
  • WOMAN
  • ショッピング
  • 転職
  • ナショジオ
  • 日経電子版

「給油新法」は何のため?

海上自衛隊の活動再開で日本の“失地”は回復しない

2008年1月18日(金)

  • TalknoteTalknote
  • チャットワークチャットワーク
  • Facebook messengerFacebook messenger
  • PocketPocket
  • YammerYammer

※ 灰色文字になっているものは会員限定機能となります

無料会員登録

close

海上自衛隊のインド洋での給油活動を再開するための給油新法(新テロ対策特別措置法)が衆議院の再可決で成立した。新法成立を受け、海自は2月中にも給油活動を再開する見通しだ。しかし、防衛庁(現防衛省)出身の軍事ジャーナリスト、鍛冶俊樹氏は「日本の“失地回復”は難しい」と指摘する。

(聞き手は日経ビジネス オンライン記者=谷川 博)

軍事ジャーナリスト鍛冶俊樹氏

NBO 海上自衛隊のインド洋での給油活動を再開するための給油新法が衆議院の再可決で成立しました。これによって2月中にも海自の給油活動が再開される見通しです。

鍛冶 「今さら給油のために戻っても…」といった感じはしますね。

 これまでと同じ活動をするだけでは日本の“失地回復”は難しいでしょう。米国やNATO(北大西洋条約機構)加盟国などは表面的には新法成立を評価しているようですが、本音では日本に対してかなり失望していると思います。

 日本は旧テロ特措法が延長できずに海自がインド洋から撤退したことで1歩後退しました。そして、今回の新法成立でようやく半歩前進した格好になります。しかし本来、日本が国際的な信頼を回復するためには2歩前進しなければいけません。

NBO 海自の給油活動再開は半歩前進に過ぎないのですか。

鍛冶 そうです。日本国内では「国際貢献上、海事の給油活動は必要不可欠」といったような大仰な言われ方をしていますが、実は米国を中心とした多国籍軍の“アフガニスタン作戦”では海自の給油活動などはさほど重要な任務とは言えないのです。せいぜい多国籍軍の油代を肩代わりしている程度です。

“楽な仕事”に復帰する日本への不満

 海自の給油活動というのは、多国籍軍に参加している他国の軍隊の活動と比べれば、非常に軽易な作業です。一言で言えば、補給艦とその護衛艦が2隻1組でドバイまで行って油を積み、インド洋に戻ってきて他国船に無償で給油するというだけの活動ですから。いわば、単なるガソリンスタンドの役割に過ぎない。

 一方、多国籍軍に参加しているNATO加盟国などは、自国の軍隊に多数の死者を出すなどして大変な犠牲を払っている。各国も本音ではアフガニスタンから手を引きたいと思っているのです。それでも、現地に踏みとどまっている。

 そのような国々からすれば、日本の海自がインド洋から撤退するというのは見過ごせない問題です。「日本はあんなに楽な作業をしているのに、それでも逃げ出すのか。米国はそんな身勝手な日本の行動を認めるのか」と思っているはずです。

 米国としても、NATO加盟国など同盟国との連携を維持・強化したいわけですから、日本の“戦線離脱”は認められないはずです。仮に米国が日本の海自撤退を容認すれば、NATOとの連携や多国籍軍の結束が動揺しかねません。それを防ぐためには、日本の給油活動を続けさせる必要があったのだと思います。

 結局、日本は新法成立で海自の給油活動を再開することになりましたが、多国籍軍の中には「日本はいったん兵を引き揚げたくせに、また以前と同じ楽な仕事をしに戻ってくるのか」といった不満もくすぶっているはずです。「海自の給油再開は半歩前進」と言ったのは、そういった事情があるからです。

米国の“日本離れ”が加速する!?

NBO しかし、海自の活動内容は従来とさほど変わっていません。海自は同じ作業をするのに、その活動に対する国際的評価はそんなに違うものなのでしょうか。

鍛冶 全く違います。

 以前なら日本の海自が楽な仕事をしていても、大目に見られるところがあった。日本は米国を中心とする多国籍軍への人的支援を迅速に表明しましたから。米国も日本の国内事情をよく知っているため、日本の迅速な支援表明を高く評価して、「日本は楽な仕事でもよし」としてくれたのだと思います。

 ところが、日本はその楽な仕事からもいったん手を引いた。日本の海自が再びインド洋に戻るといっても、今度は日本が“遅れてやってくる”という形になる。多国籍軍とすれば、「遅れてきた国なのに、また楽な仕事をするのか」といった印象を抱くでしょう。当然、日本への評価は低くならざるを得ません。

 折しも、今年は米国で大統領選挙が行われます。今のところ民主党の候補者が優勢と見られていますが、仮に民主党政権が誕生するとなると、米国の対日政策は厳しくなるでしょう。あるいは、冷たくなるかもしれません。

 実際、民主党政権が誕生すれば、米国の“日本離れ”が起きる可能性があります。有力候補のバラク・オバマさんはあまり日本を知らないようです。同じくヒラリー・クリントンさんも「中国との関係を最重要視する」と明言しています。

 オバマ氏、クリントン氏、あるいはほかの候補者のいずれが大統領になるにしても、米国の民主党がもともと親中的な傾向が強い党だということを考え合わせれば、その政権下では日本の存在感が今より小さくなるのは避けられないでしょう。

コメント39

「ニュースを斬る」のバックナンバー

一覧

日経ビジネスオンラインのトップページへ

記事のレビュー・コメント投稿機能は会員の方のみご利用いただけます

レビューを投稿する

この記事は参考になりましたか?
この記事をお薦めしますか?
読者レビューを見る

コメントを書く

ビジネストレンド

ビジネストレンド一覧

閉じる

いいねして最新記事をチェック

閉じる

日経ビジネスオンライン

広告をスキップ

名言~日経ビジネス語録

もう中山素平のような人物が銀行の頭取という形で現れることはないだろう。

佐藤 康博 みずほフィナンシャルグループ社長