売上高1700億ドルを超す世界最大のコングロマリット、米ゼネラル・エレクトリック(GE)の日本法人社長兼CEO(最高経営責任者)として2005年2月から活躍してきた伊藤伸彦氏が、2007年10月に退任した。そんな伊藤氏に、ビジネスの世界でグローバルに活躍できる人材像や、そうした人材が育つ組織のあり方などについて聞いた。
米GEは経営者人材の輩出企業として知られており、日本GEと事業子会社の“卒業生”の多くも現在、外資系企業の日本法人を中心に経営手腕を振るっている。例えば、カルティエやクロエやヴァン クリーフ&アーペルなど時計やバッグの高級ブランドを擁するリシュモンジャパンの西村豊社長、医療用機器を製造・販売するタイコヘルスケアジャパンの織畠潤一社長、同じくスミスメディカル・ジャパンの河田卓社長、プライベート・エクイティ投資会社の米カーライル・グループの安達保日本代表がその一例である。また、2007年3月期に創業以来初の経常黒字を記録したフェニックスリゾート(宮崎市)の丸山康幸社長兼CEOも、卒業生の1人だ。
伊藤氏は2008年1月、企業の組織変革コンサルティングを手がけるジェネックスパートナーズ(東京都港区)のシニアアドバイザーに就任。投資ファンド会社の米TPG(旧テキサス・パシフィック・グループ)の日本法人顧問も兼務する。
(聞き手は杉山 泰一=日経情報ストラテジー)
―― 米GEの前CEOであるジャック・ウェルチ氏が次期CEOとして候補者を3人まで絞り込み、ジェフリー・イメルト氏を後継者に指名、残りの2人は米スリーエム(3M)と米ホーム・デポのCEOとしてヘッドハントされたことが、2000年頃に大きな話題となりました。日本でもGEジャパンの出身者が経営者としてヘッドハントされる例が近年着実に増えています。GE出身者はどんな能力を特に高く評価されているのでしょうか。
2007年10月に日本GEの社長兼CEO(最高経営責任者)を退任した伊藤伸彦氏。外資系化学メーカーを経て、1989年にGEグループに転職した。1999年からGE横河メディカルシステムやGEエジソン生命保険、GEキャピタルリーシングといった事業子会社の社長を歴任した後、2005年2月に日本GEの社長兼CEOに就いた
伊藤 「オペレーショナルエクセレンス」の卓越性でしょう。日本語にはしっくりくる言葉がないのですが、強いて訳せば「実行能力」です。「やる」と発言したことをきちんとやり遂げる能力のことです。
GEの経営幹部やマネジャーの大半は、プレイングマネジャーです。チームビルディングやコミュニケーションなどの力に長けており、自ら率先して行動する。また、そうなるように(研修や実務を通じて)訓練を受けています。
―― GEといえば、1990年代半ばに採り入れて自社流にアレンジした、業務改善や事業戦略実践のための手法「シックスシグマ」も有名です。米国ではGEのシックスシグマ導入による事業面での成果を見て、1990年代後半に同手法の導入ブームが起こり、現在では重厚長大の製造業はもちろん銀行、保険会社、IT(情報技術)企業、ホテルチェーン、ファストフード、飲料メーカーなど業種を問わず、多数の米国企業がシックスシグマを活用しています。日本では90年代の終わりにソニーや東芝を筆頭に火がつきましたが、いったん沈静化。ところがここ2〜3年、ダスキンや東レなど導入企業が再び増えていることをどう見ていますか。
伊藤 シックスシグマという手法はもともと、1980年代に日本企業のものづくりの現場を米国の企業や大学が研究して誕生したものです。でも単に「ものづくり」という点では、現在も日本企業が世界一だと思います。日本の自動車メーカーも家電メーカーも圧倒的に高い品質の製品を作っています。
しかし、GEが自社流にアレンジして採り入れたシックスシグマは製造現場だけに適用する手法ではないのです。GE社内では「ウィング・トゥ・ウィング」という言い方をしますが、営業部門による顧客との交渉に始まり、契約、製造、納品といった全体の流れを1つのプロセスとして見て、どこのポイントが改善の必要性が高いのかを見るのです。ひょっとしたらまず、経理などのバックオフィスのオペレーションを改善しなければならないかもしれません。
シックスシグマ導入企業が後を絶たないのは、こうしたプロセス重視の考え方が重要だということに、多くの企業が気づいたのだと思います。
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