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グレーゾーン金利の息の根を止めた男

宇都宮健児弁護士が見た社会の変化

  • 大豆生田 崇志

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2008年2月21日(木)

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 福田康夫首相が「消費者行政推進会議」を立ち上げて検討を始めた消費者行政の一元化構想は、最近になって登場したものではない。その源流は、1989年に日本弁護士連合会の消費者問題対策委員会が中心になって開いた人権擁護大会の決議にある。

 日弁連の消費者問題対策委員会委員長を務めた宇都宮健児弁護士は、多重債務者問題に長年携わってきたことで知られる。たまたま弁護士会の相談窓口で消費者金融から過酷な取り立てに苦しむ依頼者を担当。依頼者の相談には何十社もの業者から借り入れたり、自殺を考えたりといった深刻なケースが多いことに気づいた。多重債務者事件の弁護士報酬は、わずか数万円程度。違法なヤミ金融の背後にいる暴力団幹部らの脅迫電話を受けることもあるにもかかわらず、年間100件以上の多重債務の相談を扱う。

 99年結成の「高金利引き下げおよび多重債務対策を求める全国連絡会」(高金利引き下げ全国連絡会)や、2000年設立の全国ヤミ金融対策会議の代表幹事などを務めた。2006年の貸金業法改正では、日弁連の上限金利引き下げ実現本部長代行として、金融庁や自由民主党などに強く働きかけ、貸金業法改正を実現した。

 宇都宮弁護士は、利息制限法の上限金利を超えたグレーゾーン金利を原則無効とした2006年1月の最高裁判所の判決が政治の流れを変えたきっかけだと語る。最高裁判決から貸金業法改正に至るまで、司法と政治の双方に起きた変化の背景を聞いた。

(本誌による要約、日経ビジネス オンライン 大豆生田 崇志)


 宇都宮 かつての自民党はどちらかというと、業界の意向を受けて業者寄りの法律案を出す傾向があった。しかし行政のあり方を転換する必要があるという声が生まれ、これまでとは変わってきている。消費者行政を一元化する「消費者庁」なんていう発想も、全くなかった。

 政治の流れがかなり変わってきたと思ったのは、貸金業規制法などの改正だ。司法や政治が動いたのは、貸金業者による取り立て被害の実態や、経済生活や借金苦の自殺が急増しているという事実を突きつけてきたからだ。

 2003年頃から、既に多重債務者になった人たちが利息制限法を超える金利で貸し出すヤミ金融に狙われるようになり、自己破産件数が右肩上がりで増加。1990年まで1万件程度だったのが2003年には24万件に達した。全国各地で借金など経済生活苦の自殺者も多発するようになり、1991年まで1000人台だった自殺者が2003年には約9000人に迫る異常な増え方を示した。その実態が司法判断や世論にも影響を与えた。

個人の自己破産申し立て件数・原因・動機別自殺者数の推移

 それでも、政治の世界では貸金業界に近い議員や、規制のない米国の企業が金利規制にこぞって反対した。しかし、多重債務被害を根絶して消費者を守るためには、規制緩和ではなく規制強化が必要だとして、かなり厳しい改正案が作られた。その中心にいたのは後藤田正純議員らや、小泉チルドレンと呼ばれるような若手グループだった。

 ―― 過剰貸し付けや過酷な取り立てがたびたび問題となってきた日本では、1983年に議員立法で施行された貸金業規制法があり、上限金利は経過措置を含め出資法改正で段階的に引き下げられてきた。しかし政治が貸金業法改正などに動いたのは、最高裁判所の判決のためだ。それまでの金利引き下げと異なり、一気に消費者保護に動いた。

グレーゾーン金利

 もともと貸金業規制法には、利息制限法と出資法の上限金利の間にあるグレーゾーン金利を債務者が任意に支払った場合、その支払いを有効とする「みなし弁済」という規定があった。しかし契約約款には、貸金業者と約束した利息の支払いが遅れると、残金を全額一括で支払わなければならないという条項がある。

 2004年2月に、最高裁の裁判官の1人が判決の補足意見で、債務者はこの条項による不利益を避けるため利息を支払っているので、任意とはいえないという見解を示した。さらに最高裁は2006年1月、この条項がある場合には原則として任意性を否定。貸金業者が、みなし弁済を主張するのは困難となった。

 宇都宮 貸金業規制法のみなし弁済の規定は、業界側に立つ議員と被害者の間を取って、議員立法で作られた妥協の産物だった。しかも、あまり厳しくすると規制を守らない業者が出てくるという主張に対する、いわばアメ玉として作られた。当初から日弁連は、この規定に問題があると反対してきた。

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