• BPnet
  • ビジネス
  • IT
  • テクノロジー
  • 医療
  • 建設・不動産
  • TRENDY
  • WOMAN
  • ショッピング
  • 転職
  • ナショジオ
  • 日経電子版

日銀、総裁騒動の不毛

円高・株安連鎖の危機を直視せよ

  • 杉山 俊幸,大竹 剛,永井 央紀

バックナンバー

2008年3月17日(月)

  • TalknoteTalknote
  • チャットワークチャットワーク
  • Facebook messengerFacebook messenger
  • PocketPocket
  • YammerYammer

※ 灰色文字になっているものは会員限定機能となります

無料会員登録

close

米国発、世界同時不況の懸念が現実味を増す。
日本経済を円高・株安連鎖の危機が容赦なく襲う。
なのに日銀総裁人事の駆け引きに明け暮れる不毛。
「誰が」ではなく「何を」すべきか――。
最も大切な議論が置き去りになっている。

 日本銀行の次期総裁は誰になるのか。衆参ねじれ国会という微妙なパワーバランスの中で、永田町は大きく揺れた。

 政府は7日、財務次官OBで日銀副総裁の武藤敏郎氏を総裁に昇格させる人事案を国会に提出。民主党がこの人事案に異を唱え自民党と激しい論戦を繰り広げた。

 ただ、この議論どうもおかしい。小泉政権を経済政策面で支えた竹中平蔵・慶応義塾大学教授は言う。

 「まず、5年間の金融政策を担う日銀のトップに何を求めるのかを決め、次にその要件を満たす資質を持った人物は誰なのかという議論であるべき。実際の議論は順番が逆だ」

 確かに向こう5年の金融政策の舵取りは、かつてないほど難しい。米国発のサブプライムローン(信用力の低い個人向け住宅融資)問題は、世界経済に大きな打撃を与えている。円相場は対ドルで急騰、100円を突破する勢いだ。株価も3月10日の終値は2年半ぶりの安値をつけた。不安定な経済環境は、デフレ脱却の必要性と原油高によるインフレ懸念が交錯する度合いを増幅させる。

幻の「福井日銀」総括ペーパー

 竹中氏が指摘する議論が、自民党内に全くなかったわけではない。「緊急アピール・次期日銀総裁に期待する(案)」と題されたA4判のペーパーが存在する。まとめたのは自民党の金融政策に関する小委員会だ。委員長の山本幸三衆院議員は言う。

 「福井総裁の5年間を総括して、それを踏まえて次期総裁に何を望むかという要請につなげようと思った」

 2月初め、山本氏は谷垣禎一・政調会長にこの内容の公表を打診したが、「総裁人事に介入するようなことになってはよくない」と返された。次期総裁に何を望むかの議論は封印された。

 総裁選びの不透明さは、日銀に物価安定というミッションはあるが、それを遂行する目標設定が曖昧という問題と無縁ではなさそうだ。日経ビジネスは様々な組織がマネジメント手法として活用するPDCAサイクルになぞらえて分析してみた。

 日銀に当てはめると、物価安定の計画(plan)を作り金融政策を実行(do)、実績が検証(check)され、内閣から総裁任命権を通じ是正(act)措置が講じられるという流れになるはずだ。

 問題は「計画」に不可欠な目標設定が明確でない点だ。「物価目標を定めて、それを実行するのは当然のこと。なのにそれができていない」と、深尾光洋・日本経済研究センター理事長は古巣の日銀に厳しい目を向ける。インフレ目標と言われるものの導入だ。サイクルの出発点が曖昧だから、「実行」の成果はきちんと「検証」されず、その反省が新総裁の選出という政府の「行動」に生かされない。そこに問題が凝縮されている。

「PDCA」サイクル導入のススメ

 金融政策に詳しい早稲田大学の若田部昌澄教授は日銀ほど曖昧な存在はないと見る。

 「世界の中央銀行の在り方にはグリーンスパン型と、インフレ目標型の2つしか存在しない。ただ日本はそのいずれにも属さない」

 アラン・グリーンスパン氏が米連邦準備理事会(FRB)議長の時代、米国は巨額の経常赤字を抱えながら世界の投資家からそっぽを向かれることはなかった。彼への信任の厚さゆえとされるが、それは、「グリーンスパンという“天才”だからできたこと。日本が真似るのはリスクが高い」(若田部氏)。

 一方のインフレ目標という金融政策は先進各国が導入。例えば英国は、政府がCPI(消費者物価指数)の目標値を定める。政策金利の調整などで前年同月比で2%プラスマイナス1%で安定させるのが中央銀行のイングランド銀行の役割だ。

数値目標に抵抗

 日本も物価目標の導入に向け無策だったわけではない。ただその足跡は日銀を“その気”にさせようとする暗闘の歴史とも言える。

 小泉政権時代の経済財政諮問会議。日銀の速水優総裁(当時)は会議の議員として参加していた。ここを舞台に、政府と日銀が協調して物価目標を設けることが検討された。「しかしそこには改正日本銀行法の厚い壁があった」と、当時の諮問会議運営に携わった高橋洋一氏は言う。

 戦時中にできた旧日銀法は1998年に全面改正され、日銀に独立性が与えられた。ただ高橋氏によれば、「独立性は政策目標の設定と、それを実現する手段とに分けて考えるべきものなのに、新法はそうなっていなかった」。

 インフレ目標を導入する国では、目標値は政府あるいは政府と中央銀行が協力して決める。どんなタイミングで政策金利の上げ下げをするかといった手段は中央銀行が独自に決める。目標と手段の線引きがはっきりしているため、むしろ独立性は担保されやすい。

 物価目標について政府と日銀が共同歩調を取るきっかけになるかと思われたのが2003年3月の福井総裁誕生の時だった。しかし福井氏は公の場ではコミットしようとしない。

コメント1

「時事深層」のバックナンバー

一覧

日経ビジネスオンラインのトップページへ

記事のレビュー・コメント投稿機能は会員の方のみご利用いただけます

レビューを投稿する

この記事は参考になりましたか?
この記事をお薦めしますか?
読者レビューを見る

コメントを書く

ビジネストレンド

ビジネストレンド一覧

閉じる

いいねして最新記事をチェック