米国発の信用不安が現実となり、世界の金融資本市場を激震が襲った。
我が国でも円相場が12年7カ月ぶりとなる1ドル=95円台に急騰。
日経平均株価は1万2000円を割り込み、負の連鎖に警戒感が強まる。
だが、実はドル離れを進めてきた日本企業には、業績への影響は限定的だ。
逆に、この円高をバネに産業構造の転換を進め、日本再生につながる好機として生かすべきだ。
米国発の金融市場パニックは世界を震撼させた。
発端は3月16日、日曜日夜の米国。経営危機に直面していた米大手証券ベアー・スターンズを米JPモルガン・チェースが救済買収し、併せて米連邦準備理事会(FRB)が公定歩合を緊急に引き下げると発表した。

翌17日、週明けの東京外国為替市場では、朝一番からドルが売られる展開に。一時は1ドル=95円台と先週末から4円以上の円高ドル安が進み、12年7カ月ぶりの円高水準に達した。
「円高→企業業績悪化」の懸念から株式相場も大幅安に。日経平均株価は終値では前週末比で454円安の1万1787円と、2005年8月以来、2年7カ月ぶりに1万2000円台を割り込んだ。
この株安はアジアの各市場に波及。
全国人民代表大会の会期中だった中国では、上海市場の総合指数が終値で前週末から3.6%下落。温家宝首相は「世界経済と米国経済の行方を大変心配している」と危機感をあらわにした。
そのままインド・ムンバイ、フランクフルト、ロンドンと、その影響はアジアから欧州を吹き荒れた。次に、大西洋を越え米ニューヨーク市場のダウ平均を一時3%押し下げてやっと底を打ち、何とか市場は平静を取り戻した。
円高・株安の連鎖に日本企業も警戒感を強める。トヨタ自動車の渡辺捷昭社長は「円高の影響は少なくない。一層のコスト削減で臨む」と言う。同社は1ドル当たり1円の円高が1年間続けば営業利益で350億円の影響を受ける。実際には為替予約でリスクを回避しているが、今回の円高が本格化した2007年10〜12月期(第3四半期)には円高が200億円の減益要因となった。
日本経済に渦巻く円高恐怖症。その背景には、1995年に最高値で1ドル=79円75銭という猛烈な円高に襲われ輸出企業が競争力を失い、株価が暴落したという苦い思い出がある。80年代の「円高不況」に続き、またも円高はその負の連鎖を招くのだろうか。
ドル安でも差益出すスズキ
実は、既にこの単純な図式は成り立たなくなりつつある。例えば、同じ自動車業界でトヨタとは対照的に為替差益を計上した会社もある。4輪車だけでも7割をアジアや欧州を中心とする海外で販売する輸出企業のスズキだ。

トヨタが200億円の差損を出した同じ10〜12月の3カ月で、スズキは47億円の為替差益を得た。内訳はドルで16億円の差損を被ったものの、ユーロで24億円、ルピーで20億円などドル以外の通貨で差益を稼いだ。
スズキは、競争の激しい北米市場よりも、他社が進出していないインド、ハンガリーなどに進出してきた。その結果、北米での販売は4輪車で、海外売り上げの13%にとどまる。為替ヘッジの効果もあり、今回の円高ドル安にもかかわらず、今年1〜3月期でも為替差益を出すと見られる。
今回スズキが恩恵を受けているのは、円は対ドルでは円高だが、ユーロなどの他通貨に対しては円安になっている点がある。3月に入っての急激な動きは、円高というよりも不安定な米経済による「ドル安」の側面が色濃い。
ほかの通貨に目を向ければ、17日現在で1ユーロ=152円台、1ポンド=194円台という水準だ。主要15通貨に対する総合的な円の価値を示す実質実効為替レートでは、95年以降円安傾向が続いており、今年2月末では当時と比べると32%の円安となっている。
つまり、全体では依然として円安で、それを米国依存度を下げてきた日本企業は享受している。欧州事業が好調で、ユーロ建てでの取引額がドル建てを超えている電動工具最大手のマキタや、消費地であるアジアや欧州へ生産を移管している味の素などでは、今回のドル安による影響は緩和されるという。
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