「ニュースを斬る」

買収防衛策や株式持ち合いに異議あり

永守重信・日本電産社長が直言

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2008年3月26日(水)

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 米投資ファンドのスティール・パートナーズと経営改革を巡って対立するサッポロ・ホールディングスとノーリツがそれぞれ3月末に株主総会を開く。6月の総会シーズンに向けて、敵対的な姿勢の株主と経営陣が激しく対立する場面が増えそうだ。NECや電源開発にも外資ファンドによる経営改善への追及が予想される。こうした株主主権の高まりを受けて、日本の上場企業に買収防衛策を入れたり、株式の持ち合いを再び高めたりする動きが強まっている。経営拡大の手法としてM&A(合併・買収)が当たり前の時代に、防衛策と持ち合いでひたすら“内向き”になる日本企業。

 攻めに逆行する動きを、“M&Aの達人”として知られる日本電産の永守重信社長は一喝する。
単独インタビューに応じた同社長が持論を語った。

(聞き手は日経ビジネス記者 中野目 純一)

日本電産社長 永守重信氏

日本電産社長 永守重信氏
写真:山田 哲也

 上場企業で買収防衛策の導入が相次ぎ、株式の持ち合いも復活しているようですが、こうした動きには全く反対やなぁ。時代逆行も甚だしい。ですから、日本電産では何もしてへんよ。

 そんなことをするのは、経営者が自分の会社の経営に自信がないことの表れですよ。多くはPBR(株価純資産倍率)が1以下の会社でしょう。解散価値より低い株価がつく経営の方がおかしいのであって、そんな会社は買収されて当たり前なんです。

 買収を防ぐには、単に時価総額を上げるだけではなく、やはり経営者に対する信頼性を高めないかんね。信頼が高ければ、「あの人が辞めたら、あの会社は二束三文やな」ということになるでしょう。その経営者がいなくなれば株価が下がるんだから、そういう会社には投資ファンドも手を出さない。

 敵対的な買収が日本では受け入れられない。この風潮は基本的にこれからも変わらないでしょうね。

 一部の経営者だけが反対しているようなケースでは、敵対的な買収が成立する事例もいずれは出てくると思います。しかし、社員や取引先、既存の株主といった様々な利害関係者から支持を得られない敵対的買収は、今後も失敗する。日本の場合、こうした利害関係者が重視するのはマネーだけではない。心が通じることがマネーの先に来ますからね。

“永守流”敵対的買収を成功させたい

 ただ私は、「これこそが日本の敵対的買収の成功例」と言える案件をぜひ自分で手がけてみたいと思っていますね。

 これまで買収先の企業を再建してきた経験を通して、社員や株主が何を望んでいるのかを把握してきた。その集大成として、相手先の企業の経営者は反対しても社員や株主が賛成してくれて成立する私なりの敵対的買収をいずれはぜひやりたい。分析が十分でないこともあって今すぐにはできないですけれども。

 「永守さんが買収するのなら、社長をはじめとする経営陣が反対しても自分は支持する」。こう言って社員や株主、取引先が賛成に回ってくれるような成功例を作りたいですね。

 これまで買収した企業で人員削減を行わずに再建に取り組んできた理由の1つも、実はここにある。「日本電産の傘下に入ったら、会社が本当に良くなった」。そういう認識を社内外に広めることを狙っていたわけや。

事業再編が進まないのは大企業の怠慢

 一方で、日本企業はM&Aをテコにして業界を再編し、それぞれ強みのある事業を強化していくことが求められています。ところが、こんなことを言ったら怒られるだろうけれど、それを日本の大企業が怠っていて、「選択と集中」どころか、依然として多くの事業を抱え込んでいる。そういうことを続けていたら、グローバル競争で負けるわけですね。

 日本の大企業を見ていると、シェアがトップの事業がある一方で、4番や5番の事業もあるわけですよ。相変わらずね。私だったら、例えばAという事業はよそから売ってもらう代わりに、Bという事業は向こうに売る。差し引きしたら、雇用も売り上げも変わらない。それで世界規模でもダントツに強い事業にできる。

 ところが、現実には3番、4番、5番目の事業を赤字のまま抱えた企業がいっぱいあって、これが結果的にすべての企業を弱くしています。そうした状態になぜ終止符を打たないのか。オーバーサプライ(供給過剰)になっているんだから、業界再編で競争相手の数をもっと減らさなあかんのに。

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著者プロフィール

中野目 純一(なかのめ・じゅんいち)

日経ビジネス記者。日経アーキテクチュア、日経コンストラクション、日経ビズテックの記者を経て、2005年12月日経ビジネス記者。2010年4月から現職。



このコラムについて

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