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なぜ授業料は返還不可だったのか

「業界の慣行」が通用しなくなる消費者契約法

  • 大豆生田 崇志

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2008年3月27日(木)

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 かつて大学に一度納めた授業料などは「理由のいかんを問わず返還しない」とされてきた。しかし2001年4月に施行された消費者契約法によって、現在では多くの大学で入学前の3月中に入学を辞退すれば、原則として返還されるようになった。

 消費者契約法は、単なる消費者保護を目的とした規制ではない。むしろ規制緩和とともに消費者が自らの責任で契約を選べるようにして、その結果、自由競争を通じて優れた事業者が選択されるようにするというのが目的だ。なぜ大学の授業料などの返還で、消費者契約法が論拠となったのか。

 桜が咲く3月は、大学受験の合格発表シーズン。本命の志望校以外に複数の大学を受験して合格した受験生や親にとって、第1志望の合格発表前に、滑り止めで合格した大学から入学金や授業料を求められれば、浪人にならないように早く納めようとするだろう。

 かつて私立大学の多くは「いったん納付された入学金や授業料などの学生納付金は理由のいかんを問わず返還しない」という趣旨の注意書きを入試要項に記載していた。しかし今では、一部を除き、3月中に入学辞退をすれば、大学は原則として授業料などを返還している。入学金については戻らないが、それ以外の費用が返還されるようになったのは、2006年11月に出た最高裁判所の学納金返還訴訟への判決が基点になった。

 この判決で最高裁は、新年度が始まる前に入学辞退を表明した場合は、大学は授業料などを返還する義務を負うとした。それまで下級審で分かれていた判断基準を統一した。

2001年施行の消費者契約法が後押し

 この判断の論拠の1つになったのは、2001年4月に施行された消費者契約法だ。それまで授業料などを返還しないという判断は、民法の公序良俗の規定に反するかが争点となり、ほとんど返還は認められなかった。

 受験生の親は、子供のためならとお金を払う。しかし一度納めた授業料などが返還されなければ、経済的に大学選択の余地が狭められる恐れもある。こうした受験生の親たちが抱える疑問から、大学の入学金・授業料などの学生納付金の返還を求める「ぼったくり入学金・授業料返還弁護団」が立ち上げられた。この弁護団が活動を始めたのは、消費者契約法が成立した翌年の2002年4月のことだった。

 入学手続きの際に納めなければならない学納金には、入学金のほかに、初年度の最初の学期分か、初年度分の授業料、実験実習費や施設設備費、教育充実費などの名目の費用がある。さらには学生自治会費や同窓会費、父母会費、傷害保険料などの諸会費も含まれている場合がある。

 最高裁は、入学金は学生が大学に入学できる地位を取得するための対価として、大学が学生を受け入れるための事務手続きなどの費用に充てられるものとした。その一方で、学納金のうち、入学金以外は返還しなければならないと判断した。消費者契約法によって、契約解除に伴う違約金について請求できる範囲が限定されたからだ。

「平均的損害」を超える部分の徴収は無効

 消費者契約法では、事業者が消費者契約の解除に伴う損害賠償の金額や違約金を定めている場合、解除の理由や時期などの区分に応じて、事業者に生じる「平均的損害」を超える部分は無効と定めている。

 最高裁は、この規定を学納金返還訴訟に当てはめて、契約の解除に伴って大学に生じる平均的損害とは「1人の学生と大学との在学契約が解除されることによって、当該大学に一般的、客観的に生ずると認められる損害」と定義した。学納金のうちこの定義を超える部分については、入学辞退者に対して返還しなければならなくなる。

 判決では「1人の学生の在学契約の解除に伴い、大学においては、当該学生の受入れのために要した費用が無駄になったり、事務手続をやり直すための費用を要したりすることもあるが、これらは入学金によって賄われている」とした。こうして、大学側の請求できる損害は入学金で賄われているため、それ以外の納付金は、平均的な損害を超えるとして、入学辞退者に返還しなければならないとした。

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