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談合消滅後の建設業界で何が起きているか

工事単価の“ダンピング”や発注者の権限強化で職人は青息吐息

2008年3月28日(金)

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 名古屋市営地下鉄工事を巡る談合事件から1年が経過した。ゼネコンが独占禁止法違反(不当な取引制限)の罪で初めて起訴されたこの事件。名古屋地方裁判所は、談合で主導的役割を果たした大林組元顧問やゼネコン5社に有罪判決を出した。

 この3月、政府は談合やカルテルの主犯企業への制裁強化を柱とした独占禁止法改正案を閣議決定。談合撲滅に向けてさらにアクセルを踏む。

 地下鉄談合を最後に、姿を消したとされる大手ゼネコンによる受注調整。談合なき建設業界では何が起きているのか。とび土工や鉄筋工など建設職人の団体、大阪府建団連の会長であり、建設職人の待遇改善を訴える北浦年一氏に話を聞いた。

北浦年一氏

大阪府建団連会長 北浦年一氏

問 地下鉄談合を最後に、談合組織は消滅したと聞きます。談合はもう完全になくなったと考えていいのでしょうか。

答 ないない。(大手ゼネコンが仕切る)談合組織はほとんど潰れたから、もうほとんどないわ。これは、とてもいいことと考えているよ。ただな、談合がなくなって何が起きたかと言うたら、自由競争という大義の下にダンピング競争が始まった。

問 最初に談合組織が解体した民間建築では1990年代後半以降、工事単価は低下し続けています。公共工事でも、受注のために予定価格を大幅に下回る金額で落札する業者の存在が問題になりました。過当競争にある建設業界ではダンピングが起きやすい。

答 単価の下落もそうだが、私らにとってきついのは工期。液晶工場などは典型だが、グローバル競争に勝つために、一日でも早う造れと。発注者から見れば、工事単価と工期がすべて。ゼネコンにしてみたら売り上げのために受注がほしい。2つの要素が絡み合うたわけや。そのしわ寄せが下請けに来とる。

問 談合組織が消滅したことで、ダンピングが激しくなったと。

答 違う、勘違いせんといて。談合がなくなったからダンピングが起きたわけではないよ。ただ、発注者の力が強くなりすぎているのは確か。ゼネコンがお施主さんに何も言わへんねん。言うと嫌われるから。仕事欲しさに安値で受注して、そのしわ寄せは現場の職人や。

 こんなこと社長をやってたらとても言えないで(※北浦氏は2004年まで、とび土工の専門工事会社、北梅組の代表取締役会長を務めていた)。物は言いたい。だけど、言ったら(ゼネコンや発注者に嫌われて)先に自分が死ぬ。言うたら明日倒産。そんなアホなことあるか。

 かつては突貫工事といったら割り増しが出たもんや。無理して早う造るんだから当たり前の話や。工期が短くなって得するのは発注者。ところが、今では突貫がかかっても、割り増しも何もない。単価ばかりが下がりよる。技術の進歩はあるけど、私に言わしたら、工期は3~4割は短縮してるよ。

「談合はカネやけど、ダンピングは人の命を奪う」

問 職人の賃金も下がる一方のようです。

答 下がりっぱなしや。私らの時代は、会社員の月収が3万円のところ5万円くらい出たんや。職人の仕事はハードだから、賃金でカバーしていてくれたんや。ホワイトカラーとブルーカラーという言葉があるやろ。ブルーカラーは確かに、地位は低いけど賃金はあった。

 それがどうや。いい時は700万円あった年収も、今は一級の国家資格を持っている腕利きの職人でも350万円程度。普通の会社員から見ても決して高くない。だから職人のなり手がいない。こんな職業に夢が持てるか。あんたの子供さんをこんな仕事に就かせるか。就かせるわけないやん。

 この間、四国の親方が首をつって死んだ。私らの仲間や。経営に失敗したと言えばその通り。ただ、(こういった現状で)犠牲になる人はものすごく多いんやで。言葉は悪いが、ダンピングは談合よりもっと質が悪い。談合は金(の問題)やけど、ダンピングは人の命を奪う。

問 価格だけでなく技術点も評価点にする総合評価方式の導入や低入札価格調査の厳格化など、国土交通省は低価格入札に対する施策を打ち出しています。

答 公共工事の話やろ。民間はひどいもんや。一流の国家資格を持つ職人の年収が何で350万円やねん。せめて500万円くらいはやってもいいんと違うか。職人の多くは労働保険も入ってない。私らは「払え」と言っているが、職人を抱える親方に保険料を払う金がない。年金問題だって職人には関係ない。資格がないんやから。

 一般の人は勘違いしているかもしれないが、建物を造っているのはゼネコンちゃうで。ゼネコンは現場を管理しているだけ。実際に造っているのは職人や。その職人も、ゼネコンが雇用しているわけやない。抱えているのは、下請けの専門工事会社や。

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「談合消滅後の建設業界で何が起きているか」の著者

篠原 匡

篠原 匡(しのはら・ただし)

ニューヨーク支局長

日経ビジネス記者、日経ビジネスクロスメディア編集長を経て2015年1月からニューヨーク支局長。建設・不動産、地域モノ、人物ルポなどが得意分野。趣味は家庭菜園と競艇、出張。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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