「閉ざされた日本の空」

第1回 “骨抜き自由化”の羽田国際線

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2008年4月25日(金)

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 今年のゴールデンウィークは飛び石や燃料高騰などの影響もあって、4月25日〜5月5日の海外旅行者数は前年同期比14.6%減の45万8000人となる見込みという(JTB調べ)。それでもこの時期に海外に飛び立つ日本人は多い。ゴールデンウィークに海外に殺到するのは、いつもと変わらぬ日本の姿だ。しかし、飛び立つ先にある世界の空港、そして航空会社は今、大きな変化のうねりの中にある。

 英国のヒースロー空港は3月27日、5つ目のターミナルをオープンし、ショッピングモールには、ティファニーやブルガリといった高級ブランド店が軒を連ね、観光客が殺到した。4月には米国では3位のデルタ航空と5位ノースウエスト航空が合併を発表した。米国では、両社以外の合併観測も飛び出ている。こうした動きの背景には、 昨今、メディアなどにしばしば取り上げられるようになったオープンスカイが関連している。

2008年3月27日、英ヒースロー空港(Heathrow Airport)で新しく開業した第5ターミナル。(c)AFP/EDMOND TERAKOPIAN

2008年3月27日、英ヒースロー空港で新しく開業した第5ターミナル。
(c)AFP/EDMOND TERAKOPIAN

 オープンスカイは簡単に言えば空の自由化。これまで国際路線の開設には、両国の政府が、乗り入れ空港や航空会社、便数などを取り決めていた。だが、オープンスカイが実現すれば、航空会社や空港が当局に届けるだけで、路線を開設できる。画期的な自由化協定だ。

 折しも、この3月末、EU(欧州連合)と米国とのオープンスカイ協定が施行された。これが従来のオープンスカイ協定よりさらに一歩進んだ革新的な政策だと話題を呼んでいる。過去のオープンスカイは米蘭、米仏といった具合に、国同士の2国間だけで結ばれていた。だが、これからは米国とEU各国の間で原則としてどこにでも路線の開設が可能になった。

 この米国とEUのオープンスカイを睨み、空港や航空会社が新しいサービスを展開し始めている。 英国最大手の航空会社であるブリティッシュ・エアウェイズ(BA)は、新たに「パリ・ニューヨーク」「ブリュッセル・ニューヨーク」便を開設。英国の航空会社が英国発ではなく、フランスやベルギーと米国を結ぶ路線を開設したのだ。

 こうして世界の空が大きく開かれ始めた中で、日本の航空行政の現状は何一つ変わろうとしていない。一瞬、変わる兆しは見えた。2006年9月29日、安倍晋三政権発足と同時に「アジア・ゲートウェイ戦略会議」がスタートし、その中でオープンスカイの議論がなされてきた。

 しかし、目下のところ米国とEUのようなレベルの自由化にはほとんど進んでいない。「閉ざされた日本の空」連載1回目は、日本の空港政策における最大の懸案である羽田問題を検証する。

頓挫したアジア・ゲートウェイ戦略会議

 羽田空港の国際化については、来る世界のオープンスカイ時代に備え、早くからその必要性を唱えてきた航空専門家が少なくない。首都圏の国際空港としては既に飽和状態にある成田に代わり、羽田の国際化を望む声は根強い。

 2006年にスタートしたアジア・ゲートウェイ戦略会議は、東京大学院経済学研究科教授の伊藤元重など民間の有識者を加えた10人のメンバーで構成され、羽田の国際化が俎上に上がった。

 そこでは、日本政府も航空の自由化へ政策の舵を切ったかに見えた。航空関係者が注目したのは、羽田空港の4本目の滑走路であるD滑走路が新たにオープンする2010年の羽田空港拡張を睨んだ政策変更だ。

 戦略会議は国土交通省と交渉を続け、2007年5月、経済財政諮問会議へ答申が提出される。そこには「アジア・オープンスカイによる戦略的な国際航空ネットワークの構築」と「羽田の国際化、大都市圏国際空港の24時間化」という謳い文句こそ踊った。

 が、実はほとんど目を引く具体的な中身がない。とりわけ焦点の羽田空港の国際化については、「骨抜き自由化」「タマムシ決着」などと揶揄される始末なのである。以下、答申にある羽田の国際化に関する「具体策」を列挙する。

1. 深夜早朝の国際チャーター便の積極的推進
2. 特定時間帯の国際チャーター便の協議開始
3. 昼間発着枠の拡大と国際チャーター便の拡大
4. 再拡張時の国際線枠の戦略的・一体的活用
5. 供用開始時に国際線3万回就航
6. 首都圏空港の容量拡大に向けて、可能な限りの施策を検討

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著者プロフィール

森 功(もり・いさお)

ノンフィクション作家。岡山大学文学部卒業後、新潮社勤務を経て独立後、政治経済事件と幅広い取材・執筆活動を展開。代表作に『古賀誠研究』『日本道路公団の闇』『官邸のラスプーチン「飯島勲」研究』(いずれも「週刊新潮」)。『JAL大激震』(週刊文春)、近著『ヤメ検――司法に巣喰う生態系の研究』(「月刊現代」)が2008年第14回「雑誌ジャーナリズム賞」作品賞を受賞した。主な著書は、『黒い看護婦』(新潮社)、『殺人者はそこにいる』(新潮社共著)『サラリーマン政商 宮内義彦の光と影』(講談社)。



このコラムについて

閉ざされた日本の空

 世界の航空ビジネスが、大きく変わろうとしている。米国やEU(欧州連合)は、「オープンスカイ協定」の下、原則として空港や航空会社が自由に路線を設定できるようになった。アジアのハブを目指すシンガポールも米国や英国などとオープンスカイ協定を締結している。その一方、アジアの玄関口を自認する日本を見ると、成田、羽田のキャパシティ不足が続き、他国とオープンスカイ協定を結んでいない。日本の空港、そして航空会社は、ボーダレス化する航空ビジネスの中ではたして競争力を持てるのか。

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