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シリーズ:日米関係は大丈夫か?(8)

「権力対反権力」の対立軸が日本の変化を阻む

  • 冷泉 彰彦

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2008年4月15日(火)

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 米国の大統領選挙は、本選の投票日まで半年以上を残していながら、既に全開モードの盛り上がりを見せている。共和党のマケイン候補もユニークな政治家であるが、何と言っても今回の選挙戦に活気をもたらしているのはヒラリー・クリントンという「女性初」、バラク・オバマという「黒人初」という民主党の本格候補2人の存在だろう。

 では、この2人はどうして全米でブームを起こすほどの存在になっていったのだろうか。野党の民主党としては、ブッシュ政権を批判するために「パフォーマンス」の上手な候補を選んだ、そうした作戦面でのチョイスなのだろうか。それ以前に、女性や黒人といったマイノリティーの人権を重視していることの反映なのだろうか。

 もちろん、そうした要素はゼロではない。だが、最終的に「合衆国大統領」を目指す「本格候補」へと2人が上り詰めたのには、2大政党制の持つ“対立軸”が機能したという要素が大きい。

「大きな政府」か「小さな政府」か、米国の対立軸は明確

 対立軸が機能したといっても、選挙のたびに話題になる「社会価値観論争」や「人種問題」ではない。米国の2大政党制を特徴づける「大きな政府論」対「小さな政府論」という軸のことだ。この対立軸があることで、与野党の対立にしても、大統領候補の指名獲得レースにしても、個々の問題が実行可能な選択肢として議論の対象になるのだ。

 この対立軸を大ざっぱに言えば、「民主党は大きな政府論、共和党は小さな政府論」という分け方になるのだが、実際の政策論争となるとさらに具体的になって様々なバリエーションを生んでいる。

 例えば、今回米国経済を大きく揺るがせている「サブプライムローン(信用力の低い個人向け住宅融資)」問題への対処がいい例だ。ヒラリーは個人の債務を公的資金で救済することで住居の差し押さえを回避させようという、いわば「大きな政府論」だが、オバマは公的資金の投入は景気浮揚策が中心という「中くらいの政府」の立場を取っている。

 共和党に目を転ずると、ジョン・マケインは公的資金投入には慎重で「小さな政府論」だが、一方、現職のブッシュ大統領は景気低迷を恐れて金融機関への資金注入を大胆に進めている。というわけで、この「大きな政府か小さな政府か」という軸に沿って、それぞれに具体的な選択肢が提示できていると言えるだろう。

 この対立軸は、単に政策を決定して歳出をコントロールするためだけではない。その裏では歳入面、つまり税制をどうするかという議論でも同じように軸となっている。必要な税収の確保というのが民主党、できる限りの減税をというのが共和党という形で、伝統的な対立がここにもある。

 ブッシュ減税を継続するというマケインと、財政再建には何らかの増税が必要だという民主党の2候補には大きな違いがあるのだが、それも伝統的な対立軸に沿ったものだ。この税制面での対立軸があることは、単に政策論争として機能するだけでなく、有権者に対して納税者として「どのような負担ならば支持するか?」という問いかけを常に行うことで、政治への当事者意識を維持するという効果もある。

ヒラリーとオバマの論戦も2大政党制の対立軸あってこそ

 こうした対立軸は、国政レベルだけでなく地方自治にも生かされている。例えば、私の住んでいるニュージャージー州では、州政府の財政危機を解決するために、州の消費税を6%から7%にアップさせる議論があった。だが、増税にあくまで反対する共和党が民主党のコーザイン知事の予算案に抵抗した結果、2006年には補正予算もないまま新年度を迎え、緊急対応の部署を除いて州政府が閉鎖(シャットダウン)するという事態となった。

 だが、激しい政争の結果、歳出削減と抱き合わせで消費税率アップという法案が可決され、危機は回避された。また、こうした激しい政策論議の経過を知ることで、州民は最終的に税率アップを受け入れることができたのだった。

 ヒラリーやオバマという才能が見いだされていった背景には、それぞれの候補がこうした対立軸の中で、自分のポジションを明確にすることで、候補としての政策を訴えてゆく、そうしたシステムが機能しているからなのだ。

コメント1件コメント/レビュー

冷泉さんの冷静な議論に共感します。アメリカもイギリスも、政治の対立軸は既に「大きな政府」対「小さな政府」。冷戦が終了して自由民主主義か社会主義かというイデオロギー対立が無くなっているのですから、ある意味当然です。そう考えると、日本の政界はいまだポスト冷戦時代の政党制を模索している過渡期と捉えるのが適切なのではないかと感じます。政党がうまく整理されていけば、日本も政府の大きさを巡る政策論争に発展していくことでしょう。ただその場合、日本のように巨額の財政赤字を抱えた国では、「大きな政府」というあり方は基本的に目指すことができないのではないかと感じています。(2008/04/15)

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冷泉さんの冷静な議論に共感します。アメリカもイギリスも、政治の対立軸は既に「大きな政府」対「小さな政府」。冷戦が終了して自由民主主義か社会主義かというイデオロギー対立が無くなっているのですから、ある意味当然です。そう考えると、日本の政界はいまだポスト冷戦時代の政党制を模索している過渡期と捉えるのが適切なのではないかと感じます。政党がうまく整理されていけば、日本も政府の大きさを巡る政策論争に発展していくことでしょう。ただその場合、日本のように巨額の財政赤字を抱えた国では、「大きな政府」というあり方は基本的に目指すことができないのではないかと感じています。(2008/04/15)

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