「時事深層」

ガソリン、「乱売」のツケ

暫定税率で露呈した“2つの過剰”構造

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2008年4月15日(火)

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ガソリンの暫定税率が期限切れとなり、全国で値下げ競争が過熱する。
春の乱売合戦は、歴史的に抱える「2つの過剰」構造を浮き彫りにした。
石油業界は「失政」を批判するだけでなく、経営改革の好機とすべきだ。

 4月1日にガソリン1リットル当たり約25円、軽油1リットル当たり約17円かかっていた暫定税率が失効し、給油所が値下げ合戦を繰り広げている。最初の週末となった5日。全国の自動車ユーザーは早速、給油所を選別してガソリンを購入した。

130円でも閑古鳥が鳴く

 “給油所銀座”──。全国有数の販売激戦区である千葉市稲毛区の国道16号線沿い。レギュラーガソリンの価格を121〜123円にしたコスモ石油系や、ホームセンター「ジョイフル本田」のセルフ式給油所には、給油客の車が途切れることなく往来していた。

 一方、129〜130円に設定したエクソンモービル系や出光興産系の給油所では、閑古鳥が鳴いていた。出光系の店長は「通常の週末に比べ、売り上げは30〜40%減った。平日はまだしも、販売量が多い週末の販売減はこたえる」と浮かぬ顔で話した。

 石油情報センターによると、暫定税率期限切れ直前である3月31日のレギュラーガソリンの全国平均価格は152.9円。期限切れ初日の4月1日に142.2円、4月3日に134.3円と、わずか3日間で18.6円も急落した。

わずか3日間で18円も値下がりした

 もともと競争が激しい地域では、全国平均以下の価格になっている。実際、4月2日に滋賀県、4月5日に千葉県の給油所を各20店以上回ってみると、120円台前半のところが多かった。店頭販売価格を表示する口コミサイトでは、4月1日に116円をつけた愛知県の給油所が紹介されていた。

 今回の値下げ競争が、販売会社の経営にどんな影響を及ぼすのか。通常の給油所では7〜9日間分の在庫があるため、大半は4月1日以降も暫定税率が課されたガソリンを販売せざるを得なかった。粗利益は10円程度が一般的であるため、多くの給油所が原価割れで販売していたことになる。

 東京都や埼玉県で13の給油所を展開するヤジマ石油(東京都足立区)。3月31日に150円で販売していたレギュラーガソリンを、4月2日から127円に値下げした結果、暫定税率分の負担額は230万円になった。矢島幹也社長は「吸収できる範囲だが、1店舗のみで家族経営をしている販社は死活問題。今回の値下げ競争を契機に店を畳む販社もある」と語る。

 販社の業界団体である全国石油商業組合連合会が3月末に試算したところによると、暫定税率の期限切れ前に仕入れたガソリン在庫の税負担分は、全国で360億円に達するという。

 一方の元売り各社は、4月1日以降、製油所から暫定税率分を除いた価格でガソリンを卸売りしていたため、直接的な損失は少ないと見られる。

 とはいえ、元売り各社と販売会社は一蓮托生でもある。みずほ証券の塩田英俊シニアアナリストは、「販売会社の経営が悪化すれば、元売り会社が卸売価格の交渉で譲歩せざるを得ない場面が増えるかもしれない」と指摘する。原油高を受け、元売りは販売各社に卸売価格の引き上げを要請してきたが、これが十分に受け入れられないと業績が悪化する可能性がある。

 UBS証券の伊藤敏憲シニアアナリストは、「暫定税率の期限切れは、ずっと前から分かっていたこと。対策を打たなかった国の失政だ」と話す。

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著者プロフィール

大西 孝弘(おおにし たかひろ)

日本経済新聞証券部。



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