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深層
丸紅偽造保証書問題で意外な波紋

被害の上場企業、大株主に“加害企業”

2008年4月14日(月)

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 “欲深”の代償は少なくなかったようだ。

 ジャスダックに上場する介護事業大手のメデカジャパン。3月31日、同社は「社債償還の疑義に関するお知らせ」というリリースを出した。「医療コンサルティング会社、アスクレピオス(破産手続き中)と関係の深い投資会社が発行した社債を保有していたが、35億円の社債が償還されない恐れがある」という内容のリリースである。

 大手商社、丸紅8002の偽造保証書で集められた巨額の資金が回収不能になっている偽造保証書問題。約320億円が回収不能になった米大手証券、リーマン・ブラザーズをはじめ、複数の投資家の資金が闇に消えた。この疑惑の中心にいるのはアスクの前社長(46歳)。彼が、集めた資金を管理したと見られている。

 “詐欺”のスキームは以下のようになっていた。

 アスクが事実上、支配する投資事業組合が投資家から資金を集め、同社と親密な関係にある東京・千代田区の建設コンサルティング会社を通じて経営不振の病院に貸し付ける。病院はその資金を元に、医療機器の購入や経営指導を受けた後、金利分を上乗せした金額を支払うという仕組みだった。

 投資家の資金を集める際、アスクの前社長は、病院が返済できない場合には丸紅が元本や分配金を肩代わりするという内容の保証書を投資家に提示し、投資家を信用させていた。ところが、ここにきて、この保証書の偽造が明らかになった。

 資金を集めていたのはアスクの前社長のほか、アスクの親会社で東証マザーズに上場するバイオベンチャー、LTTバイオファーマの元社長。保証書の偽造にかかわったのは丸紅ライフケアビジネス部の2人の嘱託社員である。既に、丸紅はこの2人を懲戒解雇。有印私文書偽造で警視庁に被害届を提出した。リーマンも丸紅に対して、約350億円の賠償を求めて東京地裁に提訴している。
 
 冒頭のメデカの場合は、投資事業組合を通した投資ではなく、社債引き受けという形を取っている。ただ、社債を発行したファイティング・ブル・インベストメントは実質的にアスクの関連会社。しかも、社債の償還を保証していた関係文書に丸紅の記名捺印があり、リーマンのケースに“酷似”している。それで、メデカは「回収不能の可能性が高い」と判断したわけだ。

 メデカがこの事件の被害者であることは疑いようがない。だが、事の経緯を仔細に見ると、不自然な点がいくつかある。
 時計の針を少し戻そう。

明るみに出るメデカとアスクの深い取引

 公開情報を見る限り、アスクの前社長とメデカの関係ができたのは、遅くとも2007年1月頃と見られる。

 病院に対する融資を手がけていたメデカ。その融資先の1つである草津温泉病院の登記簿謄本を見ると、「裕功」という会社が土地と建物を所有していることが分かる。実は、この裕功はアスクの関連会社である。

 メデカの社長、神成裕氏の悲願は病院経営にあった。ただ、営利企業が医療法人を目的を所有することは原則、認められていない。そこで経営不振に陥った病院に融資し、債権者として経営に関与する一方、不動産の所有を進めるという戦略を取っていた。  草津温泉病院の場合、神成社長の個人企業が1996年に病院の不動産を所有。2005年8月以降は、神成社長と関係の深い医療法人が不動産を所有していた。不動産をアスクに売却したのは、草津温泉病院の経営内容が悪化し、資金回収の必要性が生じたからだろう。

 メデカとアスクの関係は徐々に深みを増していく。

 その翌月、2007年2月に、メデカは病院向けの債権の一部をアスクに売却している。100億円を超える病院向けの債権を抱えていたメデカ。その多くは、回収に時間のかかる不良債権と化しており、早急な処理が求められていた。

 そして、2007年5月31日の取締役会で、157億円の病院向け債権のすべてを、53億円でアスクに売却することを決議した(実際の譲渡は7月20日)。その一方で、5月7日に件のファイティングの社債を購入している。社債を購入したのは債権売却のわずか3週間前のことだ。

 詐欺の被害に遭った別の投資家のケースでは、アスクが投資家に提示したリターンは5~6%ほどだった。丸紅の保証書付の高利回りの商品に惹かれたということなのだろうか。結果的には、社債の購入によって、53億円の売却代金と35億円の社債購入代金が“行って来い”になっている。

 さらに話は続く。

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深層
丸紅偽造保証書問題で意外な波紋」の著者

篠原 匡

篠原 匡(しのはら・ただし)

ニューヨーク支局長

日経ビジネス記者、日経ビジネスクロスメディア編集長を経て2015年1月からニューヨーク支局長。建設・不動産、地域モノ、人物ルポなどが得意分野。趣味は家庭菜園と競艇、出張。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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