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「老人いじめ」で自民自爆、民主圧勝

山口2区補選密着ルポ、政策論争吹き飛ぶ“風頼み”選挙

2008年4月30日(水)

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 午後8時過ぎ、投票締め切り直後にテレビ画面に走った「当確」の文字。4月27日に実施された衆院山口2区補欠選挙で、民主党候補の平岡秀夫氏は予想外に早く届いた吉報に喜びを噛み締めるまもなく、緊張した面持ちで選挙戦をこう総括した。

 「税金の無駄遣いが最大の争点となった。保守層の地盤が強い山口2区で勝ったことで、政権交代へ大きな流れを作れただろう」

噛み合わない政策論争

 山口2区補選は、福田康夫政権の誕生後で初の国政選挙。全国で唯一の補選で、自民党候補の山本繁太郎氏(公明党推薦)と民主候補の平岡氏(社民党推薦)の一騎打ちとなった。そのため、30日に再可決が予定されているガソリン税の暫定税率を復活させる租税特別措置法改正案の是否を、有権者に直接問う選挙として注目を集めていた(国土交通省の道路特定財源についての説明はこちら)。

 開票が終わってみれば、平岡氏が11万6348票を獲得し、山本氏と約2万票もの大差をつけて圧勝した。平岡氏は興奮を抑えきれない様子で、「暫定税率復活に有権者が『NO』を突きつけた」と強調。来るべき衆院解散総選挙に向け自民党への攻勢を強めることを宣言した。

 だが、今回の選挙で、政権選択に繋がるような国政レベルの政策論争が展開されたかと言うと、必ずしもそうではない。「今後の国会運営を左右する選挙と言われながらも、両陣営ともにマニフェストの『マ』の字も言わない。勝因は政策論争というより、むしろ、自民党の失策による部分が大きいだろう」(連合山口の中野威事務局長)。

 実際、両陣営の主張は最後まで噛み合うことはなかった。平岡氏がガソリン税の暫定税率の撤廃と後期高齢者医療制度(厚生労働省による解説はこちら)の廃止を訴える一方で、山本氏の主張は地域活性化の一本槍。民主が個人の生活に直結する問題を提起し、有権者の感情を揺さぶる戦略に出たのに対して、自民は地元への国からの利益誘導という昔ながらの選挙戦を展開していた。戦う土俵が異なるのだから、十分な政策論争が巻き起こるはずもなかった。

「老人いじめ」で自爆した自民党

「後期高齢者医療制度は現代の姥捨て山」と声を張り上げた民主党・平岡陣営

「後期高齢者医療制度は現代の姥捨て山」と声を張り上げた民主党・平岡陣営

 政策論争を吹き飛ばしたのが、後期高齢者医療制度だった。気がつけば、有権者の最大の関心事になっていたのである。「後期高齢者医療制度は現代の姥捨て山」と声を張り上げる平岡陣営と、防戦一方の山本陣営。そんな構図は、山口2区の有権者4割を抱える岩国市内各所で繰り広げられた両陣営の街頭演説からも、鮮明に浮かび上がっていた。

 選挙戦最終日の4月26日、午前10時半。「お年寄りをいじめるな」と書かれたのぼりが、岩国市の臥竜橋付近に相次いで掲げられ、平岡氏の歩行街宣が始まった。有権者と握手し支持を訴える平岡氏の姿を一目見ようと駆けつけた80代の男性は、「今回ばかりは納得がいかないんだ」と怒りをあらわに語り始めた。

「わしはこれまでずっと公明党を支持し、公明党が推薦する候補に常に投票してきた。今回も、公明党の幹部が山本さんの支持をお願いしに来たよ。でも、今回だけは絶対に平岡さんに投票する。誰に頼まれようが、その気持ちは変わらない」

自民・公明の組織力も「怒り」に勝てず

 小泉純一郎政権時代に与党が強行採決した、75歳以上を対象にした後期高齢者医療制度。年金から保険料の天引きが始まったのが4月15日。奇しくもそれは、選挙の告示日であった。

民主党は後期高齢者医療制度を「老人いじめ」と位置づけ、自民党や公明党の支持層である高齢者の感情を揺さぶった

民主党は後期高齢者医療制度を「老人いじめ」と位置づけ、自民党や公明党の支持層である高齢者の感情を揺さぶった

 「新たな保険証が届いていない」「保険料の天引き額が間違っている」…。新制度の運用ミスが噴出するたびに、同制度に対する高齢者の不満は高まっていった。民主党は、この「風」を逃さなかった。暫定税率廃止を訴えるよりも、まずは後期高齢者医療制度を「老人いじめ」と位置づけることで、自民党や公明党の支持層である高齢者の感情を揺さぶり、保守層の切り崩しにかかったのである。

 危機感を覚えた自民・公明両党は、総力戦で巻き返しを試みる。福田首相や安倍晋三前首相、公明党の太田昭宏代表や北側一雄幹事長らが相次いで現地入り。自民党は後期高齢者医療制度の中身を説明するビラを急遽配布したほか、投票日には地元新聞に、制度の説明不足を謝罪する広告を掲載した。

 公明党も、山本氏の支援体制を「ギアチェンジした」(公明党山口県本部の先城憲尚幹事長)。近隣の県から県会議員などを動員し、「推薦候補で公認候補と同レベルの党員の動員をかけた。ここまで力を注いだのは過去に例がない」(公明党の先城氏)。

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「「老人いじめ」で自民自爆、民主圧勝」の著者

大竹 剛

大竹 剛(おおたけ・つよし)

日経ビジネス記者

2008年9月から2014年3月までロンドン支局特派員。2014年4月から東京に戻り、流通・サービス業を中心に取材中

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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