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ドル安容認と“埋蔵金”の関係

2008年5月2日(金)

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 4月30日に相次いで発表された日本銀行の「展望レポート」と、FRB(米連邦準備理事会)のFOMC(米連邦公開市場委員会)声明文には類似点があった。どちらも先行きの経済の不確実性を強く意識していたという点である。4月後半に金融市場では、米国の金融システム危機はボトムアウトしたという楽観論が広がった。

 主要国の株価は上昇し、外為市場ではドルが買い戻された。しかし、日米の金融当局は今後の展開を市場ほど楽観視していなかった。米国民のインフレ予想が高騰したため、FRBは今回の利下げで当面の金融緩和フェーズをいったん停止する見込みだ。しかし、FRBは米国経済の回復に自信を持っていない。

 4月11日のG7(7カ国財務相・中央銀行総裁会議)では声明に、主要通貨の急激な変動を懸念する表現が盛り込まれていた。欧州勢のドル急落に対する強い不満が反映されたものだが、ドル安懸念に関するG7間の合意はガラス細工のように脆い。米国経済にとってここ数カ月の為替相場は悪くなかった。

他国は今のところドルを見放していないが

 ドル安は製造業の収益を支え、国内観光業を賑わせた。4月に発表されたFRBの地区連銀経済報告にもそれが表れている。多くの地区で海外からの観光客が増加したことが報告され、彼らの支出が増えていると記述されていた。これは、米金融当局がドル安のメリットを率直に評価していることが分かる。

 ボルカー元FRB議長は4月の講演で、金融機関救済のためにFRBのバランスシートの品位を落とし、ドルの下落を許容したバーナンキ議長を激しく非難した。しかし、バーナンキ議長やポールソン財務長官はその批判をあまり気にしていないかもしれない。米国以外の国の中央銀行や政府による米国証券投資は、ここ数カ月、非常に活発である。

 FRBが彼らから預かっている米国債と米政府機関債の残高(カストディ残高)を見るとそれが分かる。同残高は、ここ最近、過去最大の増加ペースを見せている。表面的には、海外通貨当局の外貨準備は、ドルを今のところ見放していない。こういった状況であるため、先行きドル安が再び生じても、よほど急激でなければ、米通貨当局は協調介入に魅力を感じないだろう。

封印されている市場介入

 では日本の通貨当局は、為替介入にどのようなスタンスで臨んでいるだろうか。ご承知のように、2004年4月以降、日本政府は市場介入を一切行っていない。円安局面時に円買いドル売り介入を実施していないことや、中国に人民元レートの柔軟化を要求し続けてきたこともあり、自国通貨が高くなった時だけ単独で円売り介入を実施することは、国際理解を得られにくい。

 欧州勢の“堪忍袋の緒”が切れて、彼らがユーロ高阻止の介入に踏み切るような時でなければ、日本は円売り介入を行い難いだろう。当面その実施可能性は低いと思われる。さらに、外国為替特別会計が異様に膨張し、その負債サイドが不安定な問題も日本政府は抱えている。以下、外為特会のメカニズムを整理してみよう。

 日本の外貨準備は3月末時点で1兆156億ドルと巨大だ。その大半は財務省が管理する外為特会の資産サイドに計上されている。3月時点の外貨準備の主な運用先は、外貨証券が85%、邦銀・外銀への預金が11%だ。外貨証券の大半は米国債と思われる。

極めて分かりやすいポートフォリオ

 5年前、2003年3月の外貨準備は4962億ドルと、現在の5割程度の規模だった。当時の運用比率は、外貨証券83%、邦銀・外銀への預金12%である。現在とほとんど同じだ。2004年1月に外貨証券の運用比率が75%まで落ちたことがある。しかし、これは一時的な現象だった。当時の日本政府は空前の規模で円売りドル買い介入を実施中だった。

 介入によって手にした巨大なドル資金を、すべてすぐに米国債に投資することは難しいため、いったん、短期の預金として邦銀・外銀へ預け、その後、米国債の発行入札が行われるたびに米国債を購入して、外貨証券の保有額を増加させていったもようだ。2004年8月には外貨準備における外貨証券の比率は83%へ上昇している。

 最近、中東などのSWF(政府系ファンド)に対して、情報開示を要求する声がG7などで高まっているが、米国にとっては、日本の外貨準備の運用方針は極めて分かりやすく、透明性が高い従順な“巨大ファンド”である。

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「ドル安容認と“埋蔵金”の関係」の著者

加藤 出

加藤 出(かとう・いずる)

東短リサーチ社長

1965年生まれ。88年4月東京短資入社。2013年より現職。国内外の短期金融市場の現場の視線から金融政策を分析している。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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