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救急車“たらい回し”に拍車も

厚労省が進める医療版“事故調”に潜むワナ

  • 永井 央紀

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2008年5月8日(木)

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 国土交通省の失政の二の舞いか――。今、厚生労働省が進めているある政策に対して、こんな疑念が渦巻いている。建設業を所管する国交省と、医療を担当する厚労省。一見、関係が薄そうな2つの官庁だが、社会問題の解決を目的にうたった政策の副作用に、共に頭を悩ましている。

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「医療現場の危機打開と再建をめざす国会議員連盟」が4月12日に開いた第1回シンポジウム。超党派の150人近い議員で構成するため、医療政策のけん引役になるかもしれない。

 国交省の失政とは、言うまでもなく2007年に施行した改正建築基準法だ。耐震偽装事件を受けて建築基準法を改正したものの、手続きを厳しくしすぎて現場が混乱。住宅着工件数の急減を引き起こし、昨年10~12月だけでGDP(国内総生産)を0.3%引き下げるなど、6年間続いていた景気拡大に冷や水を浴びせた。耐震偽装の再発を防ぐという目的に異論はなかった。だが、その内容は現場の声を無視した形で作られ、重い副作用を起こした。同じようなことが、医療行政でも起きるのではと危惧されているのだ。

 厚労省が進めているのは、医療版事故調査委員会と呼ばれる新組織の設立構想。鉄道・航空事故が起きた時に原因究明や再発防止のために出動する事故調査委員会のような機能を、医療事故にも備えようというものだ。医療を巡る訴訟が急増する中で、患者や遺族から、そうした組織の設置を求める声が高まっていた。

ミスの説明をしない病院

 「患者や遺族が一番知りたいのは、どうして事故が起きたのかということ。しかし、病院側はなかなか明らかにしてくれない」

 1999年に妻を医療事故でなくした永井裕之さんは、遺族が抱える悔しい思いをこう語る。妻は左手中指の手術中に消毒液を点滴される医療ミスで亡くなった。しかし、永井さんに病院からの詳しい説明はないまま。死亡原因や病院側の隠蔽が判明したのは、その後の裁判によってだった。

 「遺族はほかに方法がなくて、仕方なく裁判を起こしている。原因究明してくれる第三者による調査機関があれば裁判に頼らずにすむ」と考える。事故調はこうした第三者による専門的な調査機関になるとの期待が高まっており、その設立自体に反対する意見はほとんど聞かれない。

 だが、昨年、厚生労働省が公表した試案には、現場の医師から強い批判の声が上がった。そこに、事故調が出す調査結果が医師の刑事訴追にも使われるとの内容が盛り込まれたため、「原因究明や再発防止よりも、医師の責任追及に重心が置かれている」と受け止められたのだ。

 関東地方の基幹病院に勤める外科医は胸中を次のように打ち明ける。

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