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公共事業をやめて強くなったゼネコン

矢作建設工業の“耐震”経営

2008年5月16日(金)

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矢作建設工業の業績推移

 業界として衰退の一途をたどる建設業界。だが、目を凝らせば、ビジネスモデルの転換を模索し、生き残ろうとしている企業も存在する。名古屋市に本拠を置く矢作建設工業もそうした企業の1つである。

 売上高だけを見れば約780億円と地方の中堅ゼネコンの域を出ない。ただ、利益に目を転じれば、見える風景は大きく変わる。鹿島建設や清水建設といった業界大手の営業利益率が3%前後なのに対して矢作建設は5.2%。業界他社を大きく上回っているのだ。

営業利益率比較

営業利益率の高さは他を圧倒している。

 「公共事業からは一線を画す」。山田文男社長が社内にこう宣言したのは2003年11月。それ以降、矢作建設は公共事業の受注を原則、やめた。現実に、2008年3月期では官庁工事の受注高は6%まで減少している。

 それでは、矢作建設は公共事業を減らして何を始めたのか。そのキーワードは「川上」と「川下」。具体的に言えば、既存物件の耐震補強という川下のメンテナンス事業に加えて、不動産開発や設計段階からの関与などより川上の事業にシフトした。利益率の向上は、一連の取り組みの結果である。

耐震補強に強み、地震災害を防ぐ

斜めの柱で補強している。

 「ピタコラム」。これは、矢作建設が持つ耐震補強工法のことだ。簡単に言うと、外壁に鋼板や鉄筋を取り付け、コンクリートで覆う。多くの耐震補強工事は建物内部での作業が必要になるが、ピタコラムは完全な外付け工法のため、オフィスや学校をそのまま利用しながら耐震補強できる。

 ピタコラムの売上高は104億円(2008年3月期)。2005年3月期に20億円だったことを考えれば、かなりの伸びを見せている。しかも、収益性に関しても「以前の公共工事よりも高い」(藤本和久副社長)。2ケタの利益率はあるのだろう。

 日本建築防災協会の技術評価を取得しており、耐震性能の評価は高い。実際に、2007年に起きた新潟県中越沖地震。ピタコラムで補強していた柏崎市の中学校は地震の被害を免れた。学校や病院、警察署など、これまでに補強を手がけた物件は700棟。耐震補強が終わっていない物件が数多くあることを考えれば、さらなる伸びが期待できる。

コメント5件コメント/レビュー

マクロ環境の変化(社会・政治・経済・技術変化)が、事業のドメインの変化・経済レントのリソースの変化をもたらし、同社の戦略を大きく転換させたものだ。新たな事業領域も決して安穏と出来るものではないだろう。しかし恐らく同社は、自らのコアの能力(強味)が何処にあり、また市場におけるニーズを分析し、その能力を何処に生かせるかを十分に考えたのであろう。またコアの能力(設計部門)を強化することにより、戦略優位性を高めている。トップによるリーダーシップも興味深い。経営戦略を考える上で非常に有効なケースだ。(2008/05/19)

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「公共事業をやめて強くなったゼネコン」の著者

篠原 匡

篠原 匡(しのはら・ただし)

ニューヨーク支局長

日経ビジネス記者、日経ビジネスクロスメディア編集長を経て2015年1月からニューヨーク支局長。建設・不動産、地域モノ、人物ルポなどが得意分野。趣味は家庭菜園と競艇、出張。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

マクロ環境の変化(社会・政治・経済・技術変化)が、事業のドメインの変化・経済レントのリソースの変化をもたらし、同社の戦略を大きく転換させたものだ。新たな事業領域も決して安穏と出来るものではないだろう。しかし恐らく同社は、自らのコアの能力(強味)が何処にあり、また市場におけるニーズを分析し、その能力を何処に生かせるかを十分に考えたのであろう。またコアの能力(設計部門)を強化することにより、戦略優位性を高めている。トップによるリーダーシップも興味深い。経営戦略を考える上で非常に有効なケースだ。(2008/05/19)

部外者の目からは(単なる想像に留まるのですが)、環境・静脈関連の産業として土木建設業には膨大な市場が開かれているように思われるのですが。また、これからは「街(町)、施設」を景観を含め造り替える時代ではないでしょうか。産業におけるクリティカルなポイント、それを見通して大胆にこれまでのあり方を潮流に合わせて転換する、その一例を矢野建設の指向にみる思いがします。(2008/05/17)

特命になるべく、いかに発注先を囲い込むかはまともなゼネコンならどこも考えている話です。そこを少なくとも今現在、矢作さんは上手く回していると言う事でしょう。そのやり口を構築するのに同業他社は苦労してダンピングから抜け出せないのです。(2008/05/16)

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